第13話 最終日

 テスト週間最終日。

 いよいよ明日はテスト本番だ。


「明日がテスト本番ということで今日は二人にはこちらを解いてもらいます」

「これは?」

「私が作った模擬テストです」

「待ってました!」

「もはや恒例よね」

「二人にはいつも作ってますからね」

「そうなんだな」

 どうやら二人にとってこれは恒例行事らしい。


「有紀の作る模擬テスト凄いんだよ! いつも九割くらいは同じ問題が出るんだもん!」

「マジか。それは凄いな」

「言い過ぎですよ。そんなに的中はしません。よくて八割です」

「それでも十分に凄いと思うけどな。このテストを丸暗記すれば八十点以上は取れるってことだろ」

「今日一日で丸暗記できればね」

 たしかに今日一日で五教科すべての模擬テストを暗記するのは無理かもしれない。 


「さすがにそれは無理か」

「丸暗記しなくても大丈夫だと思いますよ。丸暗記しなくてもいいようにこの五日間、私とアリスちゃんでみっちりと勉強をお教えしてきたのですから」

「そういうことよ。ま、やってみたら分かるんじゃない?」

「そうだな」

「はい。ということでまずは国語からやりましょう。アリスちゃんもやりますよね?」

「そうね。やろうかしら」

 左からアリス、俺、彩海の順番でサイドテーブルの前に座った。


「もちろん本番と同様カンニングはダメですからね?」

「分かってるよ~」

「もちろん」

「それでは本番と同じ五十分を計りますね。みなさん用意はいいですか?」

「いつでもいいよ〜!」

「あぁ」

「OKよ」


 有紀がスマホのタイマーを五十分にセットしてスタートボタンを押した。

 タイマーが動き出したスマホを置いた有紀はキッチンへと向かって行った。

 俺は問一を見た。

 問一は漢字の問題だった。

 読みと書き取りが十問ずつある。

 一応全部埋めることができたが書き取りの問題はあまり自信がなかった。

 問二、三は文章問題だった。

 文章問題の解き方は散々有紀に教えてもらった。

 有紀から教えてもらった解き方で俺は問題を解いていった。

 問題を解いていると有紀と一緒に勉強をした時間が蘇ってきた。

 あの時間はちゃんと俺の中に蓄積されている。

 明らかに昔の俺よりも問題を解くことが出来て、それを実感していた。

 集中して問題を解いていたら五十分はあっという間に過ぎた。


☆☆☆


 国語、数学、理科の模擬テストが終わり、時刻はおやつ時になろうとしていた。

「皆さん。一度休憩にしましょうか」


 有紀が出来立てのアップルパイを持ってキッチンの方からやって来た。

 テスト中、美味しそうな匂いがしていると思ったらアップルパイを焼いていたらしい。


「わ~い! アップルパイだ~!」

 有紀がアップルパイとコーヒーをそれぞれの前に置いた。


「いい匂い~! 食べてもいい!?」

「どうぞ」

「やった! いただきます~!」

 彩海はアップルパイを口に入れると幸せそうに頬を綻ばせた。


「ん~! 美味しい!」

「それはよかったです」

「疲れた頭に染みる~」

「お二人も食べてくださいね」

「あぁ」


 俺もアップルパイを食べた。 

 外はサクサク、中はしっとりの美味しいアップルパイだった。

 本当は昨日がお菓子作りの日だったが、昨日は彩海のゲーム大会があったので、お菓子作りは今日となった。

 彩海の言う通りテストで疲れた頭に糖分が染み渡る。

 これのおかげで残り二教科も頑張れそうだ。


「それで、お二人とも模擬テストの調子はどうですか?」

「ぼちぼちかなぁ~」

「俺は結構手応えあるかな」

「勉強の成果がしっかりと出ているようですね」

「そうだな。出てる気がする」


 もしかしたら過去最高得点を取れるかもしれない。

 というかおそらく取れる。

 今までこんなにたくさんの時間テスト勉強なんてしたことはないのだから。


「それはよかったです。でも、油断してはいけませんよ。どんな問題が出題されるかは明日にならないと分からないですからね」

「そうだな」


 アリスとの約束もあるし、油断をするつもりも、手を抜くつもりもなかった。

 アップルパイをペロッと平らげた俺たちは続いて社会と英語の模擬テストを行った。


☆☆☆


「模擬テスト全部終わり〜。疲れた〜」

「疲れたな」

「お二人ともお疲れ様です。早速採点をしますので少し待っていてください」

「は〜い」


 有紀とアリスは俺たちの模擬テストを持ってテーブルの方に向かった。

 俺と彩海はソファーにもたれかかってぐったりとしている。


「私たち頑張ったよね」

「そうだな」

「てことは少しくらいゲームしてもいいよね?」

「いいんじゃないか?」

「だよね! だよね!」


 彩海はソファからー立ち上がるとテレビ台の上に置いてあるス〇ッチを手に取った。

「てことで今日も櫂をボコボコにしていい?」

「かかって来いよ。今日こそ一勝する」 


 模擬テストの採点が終わるまで俺と彩海は戦った。

 結局、今日も彩海から一勝を取ることはできなかった。

 でも、惜しい試合もあったからもう少しで彩海から一勝出来る気がする。


☆☆☆


「二人とも採点終わったわよ~」

「どうだった~?」

「はい。これが彩海の分ね。で、こっちが櫂の分」


 アリスから英語と社会の模擬テストを受け取った。

 続けて有紀から国語、数学、理科のテストを受け取った。

 俺は緊張しながら自分の点数を見た。

 そして、驚いた。


「マジか……」

「彩海はいつも通りね。櫂は凄いじゃない。まさかそんなに高い点数を取るとは思ってなかったわ」 

「私も驚きました。櫂君。凄いです」


 アリスと有紀に褒められて俺は思わずにやけた。

 それだけで勉強を頑張った甲斐があるというものだ。


「この模擬テストでこれだけ取れるなら明日のテストはまず赤点はないわね」

「そうですね。彩海ちゃんもいつも通り点数を取ることが出来ているので大丈夫だと思います」

「よかった~」

「ですが、油断は禁物ですからね? もしかしたら問題の傾向が変わっているかもしれないですからね」

「は~い」

「分かった」


 それから俺と彩海は模擬テストで間違えた問題を有紀とアリスに分かりやすく解説してもらいながら直していった。

 たとえこの模擬テストですべての教科八十点台を取れていたとしても最後まで油断せずに俺は寝るまで真剣に勉強に取り組んだ。


☆☆☆


 

 テストを受けてから数日。

 今日、すべてのテストが返却された。

 結果は過去最高得点だった。 

 テストを受けて改めて、今回も学年一位を取った有紀(ちなみにアリスは二位だった)の凄さを実感した。

 テストはあの模擬テストとほとんど同じ問題だった。

 だから過去最高得点を取ることができた。

 そして、アリスと約束していた数学で八十点以上を取るという約束も守ることができた。

 有紀とアリスには改めてお礼をするつもりだ。 

 というわけで赤点を回避することができたので、これで心置きなく一週間後から始まる夏休みを満喫することが出来る(もちろん彩海も赤点を回避していた)。

 三人と一緒に過ごす夏休みはこれまでで一番熱い夏になる予感がしていた。

 

 

☆☆☆


 これにてテスト週間編は終わりです!

 次回からは夏休み編!

 と言いたいところですが、その前に櫂が彩海、アリス、有紀と特別な関係になった日のことを投稿します!

 お楽しみに~

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