第12話 6日目 ストリーマー大会~その1~
テスト週間六日目。
俺と有紀とアリスは朝からリビングのテレビの前で待機をしていた。
彩海の応援をする準備はバッチリ。
サイドテーブルの上には大量のお菓子と飲み物が置いてある。
「そろそろ始まりますね」
「そうね」
テレビには彩海が現在、生放送中の配信が映っている。
ちなみに彩海は二階のゲーム部屋で配信をしている。
この家は両親が残してくれたものだ。
二階建ての一軒家。
二階はすべてゲーム部屋になっている。
一階は生活スペース。
俺の家に居座るようになる前は自分の家で配信をしていた彩海は最近は俺のゲーム部屋で配信をするようになっていた。
『それではまずはルール説明を行います』
彩海は本配信を視聴者と一緒に見ていて、その本配信でMCを行っている人が言った。
形式はバトルロワイヤル。
マッチスコア形式。
四試合の順位とキルポイントの合計で順位が決まるらしい。
「なるほどね~」
ルールを聞いた彩海が呟いた。
「一、 二試合目はキルポ上限があるから、勝負は上限がなくなる三、四試合目ってことね」
「へぇ~。世界大会もこのルールなんだ」
「出る機会はないかもだけど覚えとくね。ありがとう。みんな」
俺たちの画面(テレビ)には視聴者のコメントが映らないようにしているが、彩海の方にはコメントが映っているのだろう。
彩海はコメントと会話をしていた。
ルール説明が終わり、次は選手ドラフトの番になった。
テレビに出場選手が映し出された。
出場選手は全部で六十人。
その中で彩海のようなリーダー枠が二十人。
メンバー選択はドラフト制なので、リーダー枠が欲しい出場者を選んで三人一組のチームを作るらしい。
『それでは第一希望選択選手を発表していきます!』
MCがそう言って各リーダーが選んだ第一希望選択選手を発表していった。
彩海が選んだ人物は他の複数人のリーダーと被っていた。
他のリーダーと被ったら抽選になるらしい。
抽選の結果、彩海が第一希望に選んだ選手は他のリーダーのメンバーとなった。
「あ~。残念。外れちゃった」
その後、抽選に外れたリーダーたちの第二希望選択選手が発表され、彩海の一人目のメンバーは第二希望選択選手になった。
ドラフトは次々と進んでいき、彩海はその後、第三希望選択選手を二人目のメンバーに加えていた。
それぞれのチームが結成され、顔合わせが始まった。
普段、Xチューブをあまり見ない俺は彩海のチームメンバーのことを知らなかった。
ちなみに二人とも女性だ。
「彩海のチームはどんな感じなんだ? 優勝できそうか?」
「二人とも配信でこのゲームをやってるのを見たことがあるけど、結構上手かったから可能性はあるんじゃない? まぁ、他のメンバーも強い人たくさんいるから分からないけどね」
「アリス的にはどこのチームが優勝しそう?」
「そうね~。もちろん彩海に優勝してもらいたいけど、
「なるほどな」
このゲームのプロがいるとなると優勝するのはかなり難易度が高そうだ。
「応援頑張るしかねぇな」
「そうね。私たちにできるのは応援くらいだものね」
「そうですね。彩海ちゃんが優勝できるようにたくさん応援しましょう」
各チームの顔合わせが終わり、一戦目が始まろうとしていた。
彩海のチームは彩海がムードメーカ的役割をしていて和気藹々と会話が弾んでいた。
その辺はさすが彩海といったところか。
学年のアイドルはすぐに誰とでも仲良くなっていた。
「それじゃあ、二人とも頑張ろうね!」
「はい!」
「頑張ります!」
第一試合が始まり、キャラ選択画面になった。
彩海が選んだのは二人をサポートできるキャラだった。
☆☆☆
一試合目と二試合目が終わった。
三試合目が始まるまで少しの間、休憩があるようだ。
結果から言うと、彩海のチームはあまりいい成績とは言えなかった。
なかなかチームメンバーとの連携が嚙み合わず順位は十位。
三試合目と四試合目はキルポ上限がなくなるとはいえ、一回でもチャンピオンを取らないと優勝は難しそうだ。
「ちょっと飲み物取って来るね~」
「いってらっしゃい~」
「了解です」
彩海はマイクをミュートにすると画面から消えた。
飲み物を取りに行くと言っていたら下りてくるはずだ。
有紀が立ち上がり冷蔵庫に向かった。
バタバタと足音を立てて一階に下りてきた彩海は今にも泣きだしそうな顔で俺に抱き着いてきた。
「うわぁ~ん。全然ダメだ。悔しい」
彩海がこん感じになるのは別に珍しいことではない。
普段は明るく弱音一つは吐かない彩海だが、ことゲームになると違う。
誰よりも真剣にゲームに取り組んでいる彩海は結果が振るわなかったり、自分の思い通りにプレイが出来なかったりするとこうやって弱音を吐く。
その度に俺たちは彩海のことを慰めている。
「まだまだこれからだろ。あと二戦残ってるんだし、この二戦はキルポ上限なくなるだろ。たくさん倒せばまだ逆転のチャンスはあるって」
「そうかな?」
「勝てる勝てる。だから、もっと自分に自信を持ちなさい。彩海が全員倒すくらいであの二人を引っ張ってあげたらいいのよ」
「でも、相手強いよ~」
「大丈夫だ。いつも通りやれば絶対に勝てるって。実際プロ相手にも対面で打ち勝ってたろ?」
二試合目で妃メイというこのゲームのプロ選手と彩海は撃ち合いになったが見事に勝利を収めていた。
その勝負は本配信でも映し出されていて、MCの人や解説の人たちが大いに盛り上がっていた。
俺たちもそれを見て盛り上がった。
「だから、大丈夫だって。彩海はプロに負けず劣らずのフィジカルをしてるんだから、アリスの言う通り自信を持ってプレイすればいいと思うぞ。チームメンバーの二人も強いから、きっとチャンピオン取れるって」
そう言って俺は彩海の頭を優しく撫でた。
「そうですよ。彩海ちゃんは強いのですから自信を持ってください」
冷蔵庫に飲み物を取りに行っていた有紀が、彩海に飲み物を渡しながらそう言った。
「ありがとう。有紀」
少しはモチベーションが戻ったようで彩海の顔には笑顔が戻った。
「私頑張ってくるね!」
「あぁ、全力で応援してるから。最後まで楽しんでこい」
「楽しんで」
「最後まで楽しんでくださいね」
「うん! 楽しんでくる!」
飲み物を持った彩海は階段を軽快に駆け上がってゲーム部屋に戻って行った。
「お待たせ~」
「おかえりなさい」
「おかえりです」
「二人とも残り二戦全力で楽しもうね!」
その言葉の通り彩海たちの残り二戦を楽しそうにプレイしていた。
結果としては四位だったが、彩海たちのチームはどのチームよりも楽しそうにゲームをしていたと思う。
配信を終えて二階から下りてきた彩海は満足そうな顔を浮かべていた。
その日の夜、俺は大会を頑張ったご褒美に彩海とイチャイチャした。
☆☆☆
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