第4話(全7話)
「ゆらちゃんは天才だからね~。すごいよね~」
と、にやつきながら、ゆらは自分で自分を褒めている。
始業まであと五分。弓良ゆら、堂々の登校である。
彼女の自信過剰な発言に誰も否を唱えないこの状況に虚しさを覚えつつ、ゆらは上履きを手に取った。
くん、と臭いを嗅ぐ。……まだセーフだ。でも、今週末にはお父さんに洗ってもらおう。
そんな無駄な――強者の余裕を誰にともなく見せつけながら、上履きに履き替えると、少女はいよいよ教室へと向かう。
――とそこで、ゆらは体に異変を感じた。
……鼻がむずむずする。
ちょっと嘘でしょ!? このタイミングで!? せっかく遅刻を回避したのに!? ここまでの私の頑張りは!?
不満が彼女の心から次々と溢れ出す。
弓良ゆらが今から本能的にしようとしている行動。
それは、くしゃみだ。
べつに、くしゃみくらい、好きにすればいいだろう。
誰もがそう思うに違いない。
実際に、ゆらの父親も、友人も、担任もそう思った。そう言った。
だが、皆は知らない。
「ううう……ああ……!」
ゆらのくしゃみは――。
「くっ……!」
世界を越えるということを。
「くしゅん!!」
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