第2話 好きが止まりません。

「まことー!おきてー!」

下の階から母に大きな声で呼ばれて起きた。

会社を辞めて1ヶ月。

辞めた直後は「ゆっくり休むといいよ」や「好きなだけダラダラしてな」など甘い言葉を両親からかけられていたが、今は「早く次の仕事見つけて」や「しっかりして」とあたりが強くなってきた。

なので朝は共働きの両親が家を出るギリギリまで寝てることにしている。

もちろん、両親が出発した後もずっと寝ていたいが、起きなかったら夜にちくちく言われるので、両親が靴をはいて出発する瞬間に朝の挨拶をすることにしている。

「おはよー」

「もー、早く起きてよ!ご飯用意してあるから、食べたら食洗機まわしといてね!いってきます!」

「いってらっしゃーい」


朝食後。

自室に戻って、ベッドにあるスマホを確認したら、佐藤からメッセージがきていた。

“今日の夜、ご飯いかん?”

退職してからも連絡を取り合っていて、たまにご飯を一緒に食べる仲になっていた。


その日の夜、ファミレスで佐藤とご飯を食べることにした。

「今日も付き合ってもらってありがとねー」

佐藤はドリンクバーからもってきたアイスコーヒーを飲んでいた。

「僕も暇だったから助かったわ」

「ならよかった!ちなみに最近どうよ?転職活動とかしてるの?」

「したり、してなかったり、やな」

「どうゆうことや」

佐藤は笑いながらツッコんだ。

「話し変わるんだけどさー、来月の20日ってひまだったりする?」

スマホのスケジュールで調べたら、5月20日の土曜日を指していた。

特に予定はなかった。

「暇だけど、どうした?」

「おっ、よかったらなんだけど、マリンのライブに観に行かない?」

一瞬、鼓動が早くなったのを感じた。

「え?もし行けるなら行きたいけど、彼氏とか大丈夫?」

「それは大丈夫!」

そ、そうなのか?

「じゃあ、先行応募が明日からのはずだから、一緒に応募する?」

普段なら彼氏がいる女性と2人でご飯行くことすらも抵抗があるのだが、佐藤は違った。

「やった!するー!」

だから、佐藤が喜んだ顔をしてくれて、ものすごく嬉しい。


無事、抽選に当たった。

「ほんっっっとにみんな可愛かったーー!」

ライブの帰り道、佐藤がはしゃいでいた。

「やばいくらい可愛かったな!やっぱり生でみると全然違うな!」

僕もはしゃいでいた。

「ねー!顔小さすぎっ」

「そういえば、まふゆちゃんからレスもらったわ!」

「いやいや、あれは私にでしょ」

「いやいやー」

そんな会話でずっと盛り上がりながら駅についた。

「ほんと楽しかった!ありがとうね!」

「こちらこそ、ありがとう。楽しかったわ!」

「じゃっ」

そう言って佐藤は駅へ向かった。僕は、違う駅から乗るのでここで見送った。

「おう」

背を向けた佐藤だったが、こちらを向いた。

「また、一緒にいこうな!」

その言葉と満面の笑みが僕を狂わせた。

もう、好きが止まらない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る