第27話 27

27


学校も夏休みになり学校へ行かなくても良くはなったが僕には仕事があった。

リョー様の仕事だ。

ただ、リョー様の仕事だけをしていればいいと言う訳ではない。

勉強も大事な仕事なのだ。

夏休み明けにはテストがあり、そこである程度の点数と順位を取らないとアルバイトの停止を言い渡されるからだ。

正直に言えばかなりタコポイントも溜まっていてアルバイトをしなくても良いと言えば良いのだが、アルバイト停止イコール僕が勉強の出来ないバカと言っているようなものだ。

それはあまりプライドのない僕でも許容される事はない。

なので勉強をするのだが、何故なのか今日も一応彼女のイブキと友達のヨウコが俺の部屋に居るのだ。


ヨウコは高校でも学年でトップの成績を収めていて僕がヨウコに勉強を頼んだ所でイブキが付いて来た訳だ。

正直に言えば本当はヨウコと勉強をしたかったが、頼んだ場所がリョー様のアルバイト先だったからと言うのもあるのだが、その時に偶然二人がバイトに入っていたのもある。

まあ、浮ついた気持ちは置いておいて僕は勉強を真剣にする。

分からない所は得意な方に聞くと言う形で進めて行くのだが、イブキの得意なのは数学だ。

数学以外はイブキも分かっているのかヨウコに場所を素直に譲っているのだ。

最近イブキの様子が少し変わったような気がする。


僕に対して激しい嫉妬やそんな感じがかなりなくなったのだ。イブキも16歳で大人になったからなのかは分からないが、女性は日々変わって行くとも父さんが言っていたのでそうなのかもしれない。

そしてその変化は服装にも現れていた。

いつもは可愛いとかそんな服だったのが、少しおとなしめの清楚な服装を選んで着て来るのだ。

僕はイブキがトイレに立った時にヨウコに少し聞いて見た。


「ヨウコ、最近イブキ変わったような気がするんだけど何か知っている?」


「変わった?私にはそんな風には見えないけど…まあ、言われてみれば少し静かになった感じかな」


「やっぱり静かになったよね」


僕が少し考えて居るとヨウコが僕にすり寄ってくる。

今回の勉強は僕の部屋なのだが、全員が座る椅子がないので足の低い長机を持って来て置いて床に座っているのだ。

当然座る配置は僕を真ん中に両サイドにイブキとヨウコだ。

そして僕の左ひじに胸が当たる様に寄って来る。

僕は動揺はしているがこんな様な事はリョー様のバイトをしている時に、お姉さん達に散々やられているのでそこまでは動揺しない。ドキドキはするけどね。


「そんなにイブキが気になるの?」


「そうだね。人の変化はやっぱり気になるかな」


「私の変化には気づかないの?」


僕はチラリとヨウコを見ると僕を誘惑しようとしているのか、胸元が開いた服を着ているのだ。


「もしかして胸が大きくなったとか?」


僕が平然と答えるとヨウコはチョット目つきを鋭くして答える。


「なんか良太りょうた女慣れしてない?」


「そう?って言うか散々リョー様のバイトでお姉さんに遊ばれているから慣れたかな」


「あ~もう!あんな年上のお姉さん達に調教されたら、私がすり寄っても駄目じゃない」


「調教はないでしょ」


僕は思わず笑ってしまう。


「でも、ヨウコは美人だしスタイルも良いから少し変わっても分からないよ」


「嬉しい、ありがとう」


するとヨウコが膝立ちになり僕の耳元に口を近づけて囁く。


「私の裸が見たくなったら言ってね」


僕は動揺を隠しきれずに顔を赤くしてしまった。

ヨウコはしてやったりとニヤニヤしながら元の位置に戻った。

すると丁度そのタイミングでイブキが部屋に帰って来て僕の顔を見て口を開く。


「なんで良太りょうたの顔真っ赤なの?ヨウコに何かされたの?」


ヨウコは立ち上がりながら口を開く。


「特には何もしていないわ。私もトイレ借りるわね」


ヨウコはそれだけ言うと部屋を後にした。

イブキはそんなヨウコを見ながら自分の席へ座った。

そして座ると同時に僕に抱き着いてきた。


「どっどうしたんだよイブキ」


僕がビックリしながら問う。


良太りょうたはやっぱりヨウコ見たいな美人でスタイルが良い女性がいいの?やっぱり私じゃダメなの?」


僕は突然のイブキの言葉に動揺しながらも答えた。


「イブキはイブキだろ?見た目は関係ないだろ?それに元気なイブキの方が僕は良いかなと思うよ」


イブキは僕の返答に少しだけ目に涙を浮かべながら頷いた。

それから勉強はなんとか二人のお蔭で進んだ。

夕方になったので僕は二人を近くまで送ると言ったが二人いるから大丈夫と言う事で僕は玄関で見送った。

だけど、二人が家を出て1分後に家のチャイムがなりイブキが戻って来た。


「どうしたの?忘れ物?」


「ええ、忘れ物しちゃった」


「部屋を見てこようか?」


僕が部屋へ行こうとした時にイブキに手を引っ張られた。


「私が忘れたのはこれ」


イブキは強引に僕の唇に唇を重ねて来たのだ。


「ごちそうさま」


イブキはそれだけ言うと急ぎ外へ出て行った。

一瞬見えたのだがその顔は真っ赤になっていたような気がした。

僕は右手で自分の唇を触りながら、あ~イブキに初キッス奪われちゃったと思ったのだった。


*


私は瀬戸せとイブキ。

良太りょうたがヨウコに勉強を教わろうと頼んでいた所へ偶然居合わせて一緒に行く事が出来た。

もし、私が居なければ良太りょうたとヨウコ二人だけになっていた。

私はますます自分の居る立場が危うくなってきたと思った。

あれから態度は多少変えたが中々思う様に行動が出来ない。


今日は良太りょうたの家で勉強をしているのだけど、なんとなく良太りょうたの目線はスタイルと顔の良いヨウコに行っている様な気がする。

今日はおとなしめの服装を選んで家へ来た。いつもは可愛い服を選んでいたがヨウコに対抗する為に変えたけど結果は言わなくても良い有様だ。

私はなんとか打開しようとしていたけどいい案が浮かばずお茶ばかり飲んでいたらトイレに行きたくなり、戻ってきたら良太りょうたの顔が赤くなっていた。恐らくヨウコがちょっかいを掛けたのは間違いないと思った。

なので、私なりに頑張って良太りょうたに聞いて見たら『元気なイブキが良い』との返事を貰えた。


私は考えた。

そして私は私らしくしようと言う結論に達した。

だから、良太りょうたの家を出た後ヨウコに忘れ物をしたから待っててと嘘を言って、私の新たな出発点として思い切って良太りょうたとキスをした。

物凄く恥ずかしかったけど後悔はない。

後ろを振り向かずに前を向いて行こうと思った。


*


私は一生笑顔スマイリー教の教祖、笑顔えがお万歳まんさい

今回のリョー様の件、私達はショックを受けていた。

長い間シグナルスキャンの家族を見て来たのに、息子の良太りょうたの能力にまったく気づかなかったのだ。

よりにもよって宗教団体オクトパスに見つかるなんて大失態だ。

しかし、シグナルスキャンのはからいによってなんとか良太りょうたじゃなく、リョー様の護衛を依頼されたのはお情けとしか言いようがないが首の皮一枚繋がった事には変わりはない。

今日もいつも通りにリョー様の護衛をしていたが、後ろから怪しいバイクが追跡しているのが分かった。

私達は宗教団体オクトパスに連絡を取り人気のない所バイクを地面に倒す事にし作戦は見事に成功した。

あとはあいつらに任せればなんとかするだろう。

私達は急いでリョー様の車を追い通常運行に戻った。

私はあのバイクの人はどうなるのかと少しだけ考えたが、宗教団体オクトパスのやる事はかなりえげつないので考える事を辞めた。

今日の帰りは少しイベントがあったがあとは平和だなと空を見上げるのだった。

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