第26話 26
26
俺の名前は
現在俺は目隠しと手を縛られて車に乗せられている。
何故こうなったかは明らかだ。
リョー様を追いかけて車をバイクで追跡したが見事にバレていてバイクごと転がされて拘束されたのだ。
俺は借りていたレンタルバイクの事を思い出して、返さないとなんてバカな事を考えていたが、そもそも俺が無事に戻れたらの話になるのでどうでもいい事だ。
拘束される時俺は抵抗をしなかった。
何故かと言うと周りに3人そして外側にも人影が見えたので逃げる事を諦めたからだ。
下手に暴れると自分が痛い目に会うのは常識だ。
そもそも俺は拘束されるのは今回が初めてではない。
過去に何度か痛い目に会っていて今回も又かと言う感じなのだが、いつもと少し様子が違うのは確かだ。
まず第一に拘束した奴らは一言もしゃべらないのだ。
何故しゃべらないのかは疑問だが、俺も同様に余計な事はしゃべらないようにしている。
そして車に乗せられて40分?位か俺はこの仕事を始めてから時間の流れがなんとなく分かるよになっていたので、その位だと思うが車が停車し引っ張られるように車から降ろされた。
目隠しをしているので場所は分からないが下はアスファルトではなくコンクリートのような感触だ。
そして顔に陽が当たっている事から屋根のある所ではないようだ。
風は少し吹いているので外のような感じだ。
俺は歩かされてその後室内へとたぶん入らされた。それから階段を下に下らされてここで初めて声を掛けられた。
「座って命令があるまで目を閉じていろ」
それは男性の声だった。年齢は30~40位だと思う。俺は返事をする。
「わかった」
俺は指示に従い床へと座ると男性は俺の手の縄をほどいて続いて目隠しを外した。
そして男性が俺から立ち去る足音が聞こえた後『ガシャン』と言う鉄の扉が閉まる音が聞こえた後声がした。
「目を開けて楽にしていいぞ。少し経てば食事を持って来るから大人しくしていろ。トイレは部屋の角にあるので自由に使え。紙は大切にしろよ。それから着替えが置いてあるのでこの部屋ではそれに着替えておけ」
男はそれだけ言うといなくなったと思う。
俺はゆっくりと目を開けると目の前には鉄格子があった。
ある程度は予想してはいたが、それでも俺の予想をはるかに超えてヤバイと思った。
俺は部屋?の中を見ると角には低い仕切りで仕切られてあトイレがあり、その反対の角には布団が引いてあり枕と掛け布団が畳んで置いてあり、その上には服が置いてあった。そして壁際には簡易の洗面台があり鏡も設置してあった。用意がいいのか歯ブラシと歯磨き粉まで置いてあったのだ。
俺はこの現状を見て『これは長い長い戦いになるな』と予感したのだ。
ちなみに携帯電話等の所持品は車に乗る時にボディーチェックを受けて全部没収されている。
俺はとりあえず着替えから行う事にした。
俺が来ているのはジーパンと物がたくさん入る上着だ。
俺は素早く自分の着ている服を脱いで置いてある服を着ようとしたが、その服を見て少し眉間にしわを寄せた。
なぜなら、上下共に見た感じ白いパジャマなのだが所々にタコの文字がいろいろな角度で入っているのだ。
俺は諦めてズボンを履き、上着を着て前閉じのボタンを留めた。
その後男の言う通りに食事が運ばれてきて、鉄格子の下からトレイが入れられた。
食事は夕食だが微妙な量だったが、俺はまず料理に毒が無いかを調べる事にした。
長年ヤバイ業界をうろついているとその手の事に段々と詳しくなるのが寂しいのだが、俺はまず野菜がたっぷり入ったスープから試す事にした。
毒と言っても全部わかる訳ないのだが、舌先に少量を乗せれば大体わかる程度だ。
俺はスプーンで汁をすくい舌先に乗せる。
痺れはない。匂いも変でもない。野菜の美味しそうな匂いだ。
俺は次にグザイをすくい口に入れる。
『うまい』
野菜を噛んで見たがとても旨かった。ついつい毒味をしているのを忘れてしまったのだが。
次にごはん、豆腐、野菜とかの和え物なども同様に調べるが問題なかった。
後は時間が経った後に下痢が起こらなければ問題ない事になる。
俺は出された食事を全部食べて、最後に2リットルのペットボトルに入ったお茶を飲んで一服した。
当然トレイは鉄格子の下らか外側へ出して置いた。
理由は言われるもの嫌だし、次に食事が運ばれない可能性もある。一番の理由は人が入って来てトレイを理由に暴行の可能性もあったからだ。
結局その日は何も起こらず夜になった。
夜と分かるは牢屋の外にデジタル時計が置いてあるのだ。
日付も分かるやつだ。
俺は時計の意味を考えた時にゾッとした。
時を分からせると言う事は、もう何日経ったと言う事を知らせる為だ。
普通昼夜分からない状態なら何日経ったか分からずにいるのだが、あえて知らせる事によって精神的ダメージをあたえるのだ。
俺は時計を見た瞬間に尋問があれば素直に話そうと誓った。
翌日の朝俺はデジタル時計のアラームにて目を覚ました。
時刻は朝の7時だ。
デジタル時計のアラームは一度だけ鳴る仕組みらしく、止めなければならないと言う事はなさそうだ。
アラームから数分後に食事のトレイを持って男性が現れた。
そして口を開いた。
「食事をして顔を洗って待機しなさい。今日は取り調べを行うので」
「ああ、わかった」
俺は素直に返事をした。
とうとう来たかと。
俺は出された食事、パン、牛乳、ミニサラダを食べてから顔を洗い準備をした。
しばらくすると二人の覆面をした男性らしき人が現れた。
彼らは俺の両手に手錠を掛けて一言「ついて来い」と言われたので俺は指示に従った。
牢屋から1分も掛からずに部屋へと入らされた。
そこは警察ドラマでよく見るような取り調べ室となっているのだが、部屋の隅には牢屋と同様に簡易に仕切られたトイレがあり、さらに俺を硬直させたのがトイレの反対の角には鉄のようなベッドが置いてあり壁にはハンマーやドリルのような物騒な物が立てかけてあった。
「早く入って椅子に座れ」
俺は言わてハッと思い中央にある机の椅子へと座る。
すると男が俺の手から手錠を外して壁から伸びている太い鎖を俺の腰へと巻き付けロックした。
『なるほどこれでこの部屋からは逃げれないのか』と思った。
それから取り調べが始まった。
聞かれる事は所属や何故リョー様を追ったかなどだ。
俺は嘘偽りなく答えた。拷問は嫌だからな。
いろいろ聞かれたが所詮俺は一匹狼で後ろ盾もなくフラフラしてる男だ。
当然身寄りなんてなく妻も子もいないので失う物はない。
取り調べは特に厳しくなく、一人が質問し一人が俺の返答を記入していく感じだ。
ここにも時計があり、8時から始まった取り調べは9時には終了した。
俺は対した事ないなと思い牢屋へと返されたのだが、本当の地獄はここから始まったのだ。
俺が牢屋に入った所で牢屋の外で男が何やら操作をしていると、牢屋のスピーカーからかなりの音量で声がしてくるのだ。
『宗教団体オクトパス教祖
俺はなんの嫌がらせかと思ったが、それは嫌がらせではなく俺に対する洗脳だと気づいたのは数日後だ。
この説法は24時間止まる事なく流れているのだ。但し、俺が取り調べに行く時には一時停止がされて戻れば再開されると言うものだ。
俺は思うこれは拷問よりも苦痛な事だと。
もしこれが365日続けば俺の脳はどうなるのだろうと考えた時に心底怖くなった。
そして俺は名案を思い付く。
信者になりたいと言えばこの地獄から脱出できるのではないかと。
しかし信者になればなった事での苦痛が待っているような気がする。
俺はあの日スキンヘッドの陣野から辞めておけと言われた言葉を思い出す。
人の忠告は素直に聞くべきだったと。
俺は信者になる振りをするべく牢屋の中で座禅を組んで、ひたすらに信者になりたいと牢屋に来る男性に声を掛けるしかなかったのであった。
*
私は宗教団体オクトパス教祖
リョー様を付け狙う怪しい男を捕まえた。
尋問してみればやはりジャーナリストと言う事が分かった。
いつもの通りに洗脳部屋に入れて見たがあっという間に信者になりたいと言っているとの報告が来た。
私はこの手の男の出まかせには乗るなと信者には言い聞かせてあるので、男が信者になるには少し先になるだろうと想定した。
出来れば信者にして大根処理をしたくないのは事実だ。
現在リョー様を迎えている中で大根問題でも起こせばどんな事になるか想像もしたくないからだ。
これからも、この様なジャーナリストや探偵と言った風情が現れれば同じ対処をするつもりだ。
ただ、話の通じる日本人ならまだしも話が通じない外国人の場合は大根を視野に入れるしかなくなるのが懸念されるが、そう簡単にはそんな事にはならないと思う。
発信は全て日本語にしてあり、翻訳設定はOFFにしてあるからだ。
私は今日も晴れ渡る空を見ながらリョー様の今後を考えるのだった。
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