第24話 24

24


俺はシグナルスキャン。

今日は以前城島じょうじまさんと約束した通りに良太りょうたじゃなくてリョー様を紹介する日だ。

城島じょうじまさんがご飯をご馳走してくれるとの事で、俺とゆうこそして良太りょうたの3人で行く事にした。

久しぶりの家族3人での外食に俺は少しだけだが楽しみにしていた。

まず、城島じょうじまさんオススメの店でステーキが食べれるからだ。

俺もある程度稼いではいるが残念ながらその金を使う場所と言うか暇がないので。


俺達は街角にある城島じょうじまさんから指定された場所へ来た。

洋食屋の様な構えなのだが一元様お断りと言った感じの店だ。

俺はドアを開けてまずはゆうこをエスコートする。

ゆうこは紺をベースとした上品なワンピースを着て俺の前を通り過ぎる。

そして良太りょうただが頑張って大人の服装だと言った感じの服を着て、俺の前を通り過ぎて店の中へ入り俺も続いて中へ入った。


店の中に入ると燕尾服を着た男性が立っていて俺が城島じょうじまの名前を出すと案内してくれた。

奥のテーブル席に行くと城島じょうじまさんと一人の女性が椅子に座っていた。


「お待たせしました」


俺は城島じょうじまさんに声を掛ける。


「やあ、シグナルスキャン君。とりあえず座ってから話そう」


俺達は言葉のままに案内してくれた男性に椅子を引いてもらい腰を下ろした。

最初に口を開いたのは城島じょうじまさんだ。


「先に紹介させてもらうと、僕が城島じょうじま真司しんじだ。いつもシグナルスキャン君とは楽しく仕事をさせてもらっている者だ。そして隣に居るのが妻で紗子さえこと言う。紗子さえこ挨拶を」


「初めまして、城島じょうじま紗子さえこです。主人がいつもお世話になっております」


紗子さえこさんは頭を下げた。

紗子さえこさんは年齢はゆうこより上だと思うが、上品さがオーラのように出ていていかにもお嬢様と言った感じに見える。

続いて俺も挨拶にうつる。


「俺が鈴木健一でシグナルスキャンです。そして妻のゆうこと息子の良太りょうたです」


「ゆうこです。いつもお世話になっております」


良太りょうたです。お願いします」


挨拶が終わった所で城島じょうじまさんが声を上げた。


「今日は両家族の親睦として食事を用意したので楽しんで欲しい。最初に大人はワインを用意したけど良いかな?」


「ええ、構いません」


俺は返事をする。

城島じょうじまさんは案内して来た男性へと目線で合図すると、男性は一礼して席を離れた。

そして再び城島じょうじまさんが声を掛けた。


「君が良太りょうた君。今はリョー様と呼ばれている子だね」


良太りょうたが俺に目線で答えて良いのか?と言って来たので俺は頷いた。


「はい、リョー様と言う名でアルバイトをしています」


「ははは、アルバイトかね」


「ええ、アルバイトです」


「面白い、実に面白い答えだ。流石シグナルスキャン君の息子さんだね」


城島じょうじまさんは笑いながら答える。

ひとしきり笑い終えると又口を開く。


「いや、笑ってすまない。それで凄い力を持っていると聞いたんだけどどうかな?」


「凄いと言われればそうかもしれませんが、僕にはどれだけ凄いかは分かりませんね」


「ふむ…なら、一つ妻の足を治してもらえないか?数年前だが左太ももの骨を骨折して歩くのに支障があるんだけどどうかな?」


良太りょうたが俺にどうしたら良いか聞いてきたので俺は答える。


良太りょうた、奥さんの足を見てあげなさい」


「分かりました」


良太りょうたは返事をすると席を立ち城島じょうじま夫人の前へ行くと片膝を着いて語り掛けた。


良太りょうたです。奥様の太股が治るか分かりませんが治癒しても良いですか?」


「ええ、よろしくお願いします。どうすればよろしいですか?」


「僕の力は傷の治癒になりますので直接触らないと治癒出来ませんが…」


城島じょうじま夫人は上着はブラウスにジャケットを羽織っていて、下は紺のジャバラのすね当たりまであるスカートを履いていた。

城島じょうじま夫人は座ったまま自らスカッとを膝の所まで捲くり上げた。

ほんの少し恥ずかしいのか頬を赤らめていた。同様に良太りょうたも見てはいけないのかと顔を赤くしていた。


「これで手を入れれるかしら?」


城島じょうじま夫人が良太りょうたに問うとコクリと頷いた。

良太りょうたは右手をそっとスカートの隙間から手を入れてふとももへと手を置く。

そして恥ずかしいのか直ぐに声を上げる。


「行きます。ヒーリングタッチ!」


そして良太りょうたが右手をスカートから引き抜いて声を上げる。


「たぶん治りました」


俺は良太りょうたの声を聞いて口を開く。


「奥様、一度立ち上がって歩いてみてはいかがですか?」


「ええ、そうさせて頂きます」


城島じょうじま夫人は一度城島じょうじまさんの顔を見て頷いてから席を立ちあがる。

そしてゆっくりと右足から前へ出して歩き出す。

一歩、二歩、三歩と…。

少し歩くとこちらへ振り返り目に涙を浮かべながら声を上げた。


「いっ痛くないです。こっこれで又歩く事が出来ます。これで又主人と散歩が出来ます」


そして城島じょうじま夫人は歩いて良太りょうたの所へ来て良太りょうたの両手を掴んで声を掛けた。


「ありがとう。ありがとう。あなたのお陰で又歩く事が出来ます。私の残りの人生を取り戻してくれてありがとう」


「よっ良かったですね」


良太りょうたはどう答えて良いか分からないのかそんな言葉を返した。

そして城島じょうじまさんが声を掛ける。


紗子さえこ良かったな。さあ良太りょうた君が困っているぞ席に戻りなさい」


「あら、ごめんなさいね」


城島じょうじま夫人は良太りょうたに謝罪し席に戻った。

それと同時にワインと良太りょうた用のジュースが運ばれて来た。

それぞれにワインが注がれると城島じょうじまさんが声を上げる。


「それでは両家の親睦会を始めたいと思う。始めにこれだけは言わせてくれ良太りょうた君ありがとう。そしてシグナルスキャン…いや、鈴木健一君、君の家族は僕が全力を投じて守ると約束させてくれ。乾杯!」


「乾杯!」


全員がグラスを持って声を上げ口に含む。

それは両家がさらなる強い絆で繋がれた証拠であり、又新たな物語の始まりの予感がした。


*


良太りょうたが美味しいステーキをたべている頃、昼間一緒に遊んだヨウコは自宅にて日々のストレッチを行っていた。

ヨウコは頭脳は当然だがスポーツも万能でその裏にはスポーツで使う筋肉を柔軟に使えるように、日々ストレッチ等を行い体を柔らかくするように心がけていた。


「1、2、3、4、5、6、7、8っと。よしこれで今日のストレッチは終了と」


ヨウコは汗を拭きながら扇風機を自分に当てベッドを背もたれにして床に座りながら考えていた。

考える事は一つ。

どうやってイブキから良太りょうたを奪うかを考えて居た。

自分でも思うが顔もスタイルもイブキより確実に上だと思う。

だけど今一歩自分でも何か足りないとも思うが、それが何なのかは不明だ。

そして思う。良太りょうたを思い切って押し倒そうかと…。

しばし考えボツとする。


既成事実を作ったとしてもそれはあくまでも体だけの関係で、心の結びつきはないからだ。

ただ、海海かいかい先生からはこうも言われている。


『結婚相手つまり夫人には一人しかなれないが、愛人のような形でもリョー様を繋ぎ留めれるならそう言う形でも教団は応援する』との事だ。


釈に触るが婦人の座はイブキに渡して愛人に留まろうかと思うが、まだ諦めるのは早い。

もう少しリョー様との間を詰める必要があると思い思考の海へと沈むのだった。


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