第23話 23

23


私は宗教団体オクトパス教祖 たこ海海かいかい

シグナルスキャンから指摘を受けてリョー様の能力で教団への勧誘を取りやめた。

そしてリョー様ファンクラブとして『FCリョー様会』を設立した。

その手始めに女性をターゲットとした美容動画を作成し拡散させた。

結果はと言うと正しく笑いが止まらないと言う感じで会員が集まって来た。

しかし笑ってばかりはいられない。

この人数をどうやってリョー様に対応してもらおうかと思考し出た結論が、リョー様の自宅付近に専用の治癒ハウスを設置して、そこで客の対応をしてもらおうと考えた。

利点はリョー様が移動する時間が省けるのと時間が空いた時に治癒が出来るのが利点だ。


幸いに物流の空き倉庫があったのでそこを改造して治癒ハウスを作った。

一番何よりもこだわったのが警備だ。

リョー様あってこその治癒ハウスなので空港のゲートを通る時に使用する金属探知機や、カメラによる自動顔認証装置を設置した。これにはかなり高額な費用が出て行ったがリョー様が治癒するだけで直ぐに基が取れる金額だ。

そして当然、一生笑顔スマイリー教にも場所を教えて警備を依頼した。シグナルスキャンとの約束なので仕方なしにだが。


『FCリョー様会』のファンクラブのグレードはブロンズ、シルバー、ゴールド、ダイヤモンド、ミスリルとした。

金額によって大きく内容を分ける事にした。

一番下のブロンズは会費が年1万円だがリョー様の治癒が受けれないとかそんな事はない。グレードで変わって来るのが時間だ。

一番下は突然に連絡が入り場所を指定されるのだ。そして受けても受けなくても順番が一番下に回されると言う内容だ。

年がら年中暇な人はこれでもいいと思うが、それでもリョー様の名古屋に住みいつでも動ける事が出来る人に限るのだ。

シルバー、ゴールド、ダイヤモンドとその時間制限が段々と緩和されて行き、ミスリルについては開催日を伝えるのでいつでもどうぞと言うのが特権になってくる。

ただ、どのグレードでもリョー様への能力に対する献金は必須だ。

それは治す箇所により高額になるのはホームページ上でも通知はしてある。

それでも女性の美へのこだわりは限度を知らないと見えるから怖い。


今日も高校から帰って来たリョー様を迎えに信者達が護衛の一生笑顔スマイリー教を連れてシグナルスキャンの家へ通う光景は日常となっていた。


*


「リョー様お迎えに上がりました」


「うん、今行くから待っていて」


僕は玄関の鍵を掛けて迎えに来た大きなワンボックスカーへと乗り込む。

後ろからは一生笑顔スマイリー教の車が僕の護衛として付いて来ている。

僕はどうもいろんな人から狙われているとの事らしいけど、今までそんな場面を見た事がない。

まあ、合ったら大変なんだけどね。


僕が車に乗り込むと直ぐにオクトパス教のお姉さん達が僕をリョー様の衣装へと着替えさせてくれる。

汗をかいていれば綺麗なタオルで拭いてくれて、まさに至れり尽くせりと言った感じだ。

しかし、僕が行う治癒の力はとても疲れる。

なにせ僕の体力を使っての治癒になるからだ。

僕は現場に着く前に栄養ドリンクを貰い一気に喉に流し込む。

この栄養ドリンクは効能が高いのだけど少し味が濃すぎるのが難点だ。

そして現場と言うか大きな倉庫へと到着する。

家からこの倉庫までは車で10分強と行った感じでとても近いのだ。


オクトパス教が僕の移動時間が大変なのと、少しでも客をさばきたいので作ったとの事だ。

もの凄い気合の入れようだなと思ったけど、僕の力を考えれば当然?なのかなと思う。

僕は倉庫の奥にある高そうな椅子に座ると直ぐに治癒の一人目が通される。


この人は頬のニキビらしいが既に前処理がされていて、少し血がにじんでいるのが分かるが僕はそんな事を考えずに頬に手を当てて、心の中で唱える。


「ヒーリングタッチ」と。


最初は声に出していたけど、段々と疲れて来るので心の中で唱える様に頑張ったら出来た。

しかし、声に出すか出さないかだけで結局言わなくてはいけないので大変だ。

それからは流れ作業だ。

ほとんどが女性でニキビやシミと言った感じだが、たまに本当と言っていいのか分からないが腰や腕と言った治癒が入って来る。

その場合僕は椅子から立ち上がって行うようにしている。

恐らくだが相当な金額をこの人達は払っていると思うので、僕なりの誠意だと思って頑張るのだ。

そんな事をやっていると今日のアルバイトは終了となる。


帰りも同様に車で着替えと汗を拭いてもらいながら自宅へと送ってもらうのだ。

そう平日の学校帰りの時間はいつもこんな感じで時間が流れて行くのだ。

アルバイトに行けば当然タコショッピングモールのアプリのポイントに加算されるのだが、最近は忙しくて何も購入をしていない。

ポイントは既に百万の値は越しているが、どうもお金と違いポイントなのでピンと来ないのが難点だ。

このポイントで一番高い買い物は自転車だったりする。

高校に通うのに高性能なら楽だと思い購入したのだ。

最初オクトパス教が毎日車で送ると言い出したが僕は断った。

理由は恥ずかしいのと体力を付けないと駄目だと思ったからだ。

こんな感じで平日は過ぎて行く。


今週末は久しぶりに家族3人でステーキを食べに行くとの事だ。

だけど、父さんの知り合いも混ざるとの事なので少しは綺麗な服を用意するように母から言われた。

僕がリョー様のバイト中に学校の友達のヨウコに話た所土曜日の昼間に一緒に買いに行く事になった。

ちなみにヨウコからは他の二人には話さないでと睨むように釘を刺された。

そんなに僕との買い物が行きたいのか、それとも他の女子と行きたくないのかわからないが、女子の考える事を深く考えないようにした。

ちなみにリョー様のバイトの時交代でイブキ、ヨウコ、ミチコがアシスタントとして手伝ってくれている。

彼女達も良いお金稼ぎになっているみたいで、休憩中に教団のお姉さん達とどこの服屋がいいなどの話で盛り上がっている。


-


そして土曜日の午前10時に駅前のショッピングモール前でヨウコと待ち合わせをした。

この日の僕の服装はいつもだが、ジーパンにTシャツだ。

ダサイかもしれないが僕が持っている服はそんな程度だ。

なので今日は教団から降ろしてきてもらった5万円を全部使うつもりで服を購入する予定だ。

僕がショッピングモールの入り口に行くと既にヨウコは待っていた。

ヨウコの服装は夏なのにロングスカートと思ったら、短いスカートの上にシースルーのスカートを履いて、上はフリルがついた白いブラウスだった。それに肩掛けの可愛い鞄を持っているのだ。

ヨウコは前から思っていた事だが、スタイルが物凄く良くてイブキとは大違いなのだ。

僕はそんあヨウコに笑顔で挨拶をした。


「おはよう、服とても可愛いね」


「おはよう、ありがとう。良太りょうたの服はう~んイマイチね。今日は私のコーディネイトに任せて」


「ははは、期待しているよ」


僕は予想通りの返答に苦笑いをしながらショッピングモールの中へ入って行った。

まずは最優先に今日の夜に着て行く服の購入を目指した。

ヨウコの中では既に案が決まっている様で僕は紳士物の売り場へと来て着せ替え人形と化していた。

ズボンはベージュっぽい?スラックスと言うかチノパンと言うか綺麗なズボンだ。

上着は襟のついたポロシャツで胸にワンポイントがついて少しカッコ良いやつだ。

この服が決まったのはショッピングモールに入って90分が経過した後だったのだ。


「ねえヨウコ疲れたしもうすぐお昼だからご飯にしない?」


「そうねぇ~」


ヨウコは腕時計で時間を確認してから頷いた。


僕とヨウコはファーストフードではなく、1階にあるファミレスみたいな所へやってきた。


「今日は服を選んでくれるお礼として奢るよ」


「ほんとに?ありがとう」


僕とヨウコは食事をしながら他愛ない話をしている時にヨウコが聞いてきた。


「イブキは何か言っていた?」


「土曜日に遊びに行こうって誘われたけど、用事があるから断ったよ」


「ふふふ、それはイブキは残念そうにしてたんじゃない?」


「どこ行くのよって感じで少し不満そうな顔をしていたよ」


「たまには一人で過ごす休日もいいじゃないかしらね」


それから僕達は食事が終わると僕の普段着を買いに一般の服売り場へとやってきた。

ここでも僕は着せ替え人形となりヨウコが運ぶ服をひたすら着て見せる作業を行った。

2時間も…。

僕はヨウコのオススメの通りに合計で4万近い服を大量に購入したのだ。

僕は大量に服を購入すると思い背負いの大きなリュックを持参していたが、当然中身が満タンになりさらに大きな紙袋にも大量に服を入れたのだ。

僕は右手で服を持っていると体が右に傾くのだが、その時にヨウコが左手を繋いで来たのだ。


「これで体が右に傾かなくていいじゃない?」


ヨウコは少し頬を赤くしながらそんな事を言って来た。

僕もつられて頬を赤くしてしまった。何故ならイブキ以外に女子と手を繋いで歩いた記憶がないからだ。

僕はこれが青春だよなと思いながらショッピングモールを歩いていると、何故かこう言う時に会ってはあまりいけない人に会うのだ。


「こんな所で何をしているの?手なんかつないで」


ほんの少し茶色い髪を揺らして睨むように見て来たのはミチコだ。

僕は苦笑いをしながら言い訳をひたすらして、イブキに言わない様に口留めとして美味しいパフェをご馳走するのであった。


なんで僕がイブキを恐れないと行けないのかなとぼやくのだった。

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