第22話 22

22


スマトーフォンで動画配信アプリを起動すると拡散されている動画が流れる。


動画の長さは30秒だがその内容は驚く物になっていた。

白い部屋に椅子が置いてありその椅子に若い25歳くらいの女性が座っている。

女性の左頬、画面右側にはニキビと吹き出物が出来ている。

そして右頬、画面左側には染みのようなくすんだ色合いの肌になっている。


そこへ一人の女性が登場し小さなニキビを潰す用の針を手に持ち次々とニキビや吹き出物を潰していく。

頬からは血とか汁のような物が垂れるがお構いなしに潰していく。

つぶした数は5つになり、白い布で頬を軽く拭くが拭いた先から又血や汁が出て来る。


次に女性は小さな潮干狩りに使う熊手のような先の尖った物を手に持ち、椅子に座っている女性の右頬の染みの部分を傷をつける。

頬は薄っすらと赤い血が浮き出て来たので白にタオルで拭く。

女性が椅子に座る女性の前から退くとリョー様が登場する。


そしてニキビを潰した方の頬に手を当て数秒後に手をどけると綺麗な頬へと変わっている。

さらに染みの部分を傷つけた部分へと手を当て数秒後に手をどけると又も綺麗な頬へと変わっている。


最後に女性の頬のアップがうつり、ビフォーアフターの写真が出て来て動画は終了するのだ。

この動画の音声は水が流れる音がしているだけで、人の声は一切入っていないのが特徴だ。

そして動画の下には概要欄があり専用のホームページへと飛ぶ仕様になっていて最初に文字が記されている。


『以前リョー様の能力に頼りオクトパス教団への入信を行った事をお詫び申し上げます。リョー様については新たにファンクラブを作りました。名前は『FCリョー様会』です。既に入信された方はファンクラブへの移行が行えますのでお申し付け下さい。又、ファンクラブにはブロンズ、シルバー、ゴールド、ダイヤモンド、ミスリルのグレードがございます。どの会員様もリョー様の力を受ける事が出来ますが、会員のランクによって内容が異なりますのでご注意ください』


*


インターネット掲示板スレッド


『怪我を治す神の奇跡を信じる?スレ★14』


101 名もなき神の奇跡


リョー様のとんでもない能力判明。

女性達が群がりそうw


ttp://www.リョー様.nikibi_simi_nandemo_naosu_cheat_dayo


102 名もなき神の奇跡


俺男だけど入会しようかな


103 名もなき神の奇跡


何処治すつもり?


104 名もなき神の奇跡


顔w


105 名もなき神の奇跡


傷つけて復元されるだけじゃねww


106 名もなき神の奇跡


疑問だが整形してあった場合どうなるのかな?


107 名もなき神の奇跡


たぶんだが関係ないのでは?傷を治すだけだろ


108 名もなき神の奇跡


治すだけと簡単に言うがヤバイ能力だぞ。その内病気を治す能力者も出て来るかな


109 名もなき神の奇跡


居ても出てこないだろ。俺なら裏で稼ぐね


110 名もなき神の奇跡


>>109

確かになw


111 名もなき神の奇跡


シグナルスキャンと言いリョー様といい、この世の中はどうなっているんだ?


112 名もなき神の奇跡


不思議な事がいっぱいで楽しいじゃないか。何も起こらないより平和的なインパクトは最高だぞw


*


健一は良太りょうたからオクトパス教団での内容を聞き、これは大事になると思いある人物へアポイントを取った。

そして動画が出る同時刻にその男と対面していた。


出会ってから22年の月日が流れ、男は出世し部長の座まで登り詰めた。


「やあ、久しぶりだねシグナルスキャン君」


「久しぶりです。城島じょうじま部長。そろそろシグナルスキャン君じゃなくて健一と読んで下さいよ」


「ははは、前からそんな事を言っているけど僕の中では君は健一よりシグナルスキャン君の方が名前的に合っているよ」


「はぁ~仕方いですね。それで今日はお時間を頂きありがとうございます。笑顔えがお万歳まんさいさんからは概要は既に聞いていると思いますが改めて説明しますね」


城島じょうじまは頷いてコーヒーを口に含んだ。


「先日発覚したのですが噂のリョー様は内の息子の良太りょうたと言う事が分かりました。宗教団体オクトパスがいち早く良太りょうたの力に気づいて誘惑したのが始まりです。それから話合いの結果18歳までは続けさせる事にしました」


「シグナルスキャン君の決断はどうしてかな?」


ここで城島じょうじまが口を挟む。


「俺も20歳の時に親に黙って病気占いを始めたので同じかと。後、治すのに体力を消耗するらしいので無茶は出来ないでしょう」


「なるほどね。それで僕には報告だけじゃないんだろ?」


「ええ、取引といいたい所ですけど、恐らく俺の方が歩が悪いと思いますけど言いますね」


「なんでも言ってくれ」


「お願いしたいのは海外からの圧力及び危害からリョー様つまり良太りょうたを守ってもらいたいです」


「なるほど、見返りは?」


「当然、リョー様の力を優先的に格安で使用できます」


俺はリョー様メニュー表を城島じょうじま部長に手渡した。

城島じょうじま部長はメニュー表を見ると眉間にしわを寄せて口を開いた。


「おいおい、シグナルスキャン君。この価格は暴利じゃないのかね?」


「いえいえ、これは宗教団体オクトパスの金額に比べれば格安ですよ」


「それにしても…ニキビ一つ3万~とはねぇ~美容整形でもここまでするかね?」


「美容整形だと跡が残ったり時間が掛かりますが、リョー様の力は数秒で終わりです。しかも跡もなにも完璧に治りますよ。世界中のセレブなら3万なんて金額は俺達の30円位ですからね。桁が二つは違うんですよ」


「そんなものなのかね」


「ええ、当然ですが部長には10%バックします」


「俺の病気占いと違って儲かりますよ」


健一はにこやかに笑うが城島じょうじま部長は渋い顔を崩さない。

そしてメニュー表を机の上に置いてから話し出した。


「それより問題なのが海外からの危害はともかくとして圧力だな。まず間違いなくアメリカから内に来いと言われるだろうね」


「まあ、それは想定範囲内でしょうね。一応高校2年生位になれば俺達家族同伴で渡米してもいいですけどね。向こうのシークレットサービスの護衛付きで。あっ当然費用が払えるだけのスーパーセレブを大量に紹介する条件ですけどね」


またも無茶苦茶な要望を健一は城島じょうじま部長に伝える。


「はぁ~シグナルスキャン君…君って男は…だいたい君と会ってからの22年ぐらいか?私がどれだけ苦労して尻ぬぐいをして来たか知っているんだろうね」


「いやぁ~大変!お世話になりました。城島じょうじま部長が居なかった俺達どうなっていたか分かりませんからね。でも、ちゃーんと五反田ごはんだ晋三しんぞうさんは総理大臣になれたじゃないですか。もう引退されましたけれど」


「うっ!それを言われると強気に出れない所が痛いが…」


城島じょうじまは苦虫を噛むように唇を噛む。


「でも、今でも裏から政界を睨んでいるんでしょ?五反田ごはんださんは」


「それを知ってどうするんだ?」


「決まっていますよ。城島じょうじま部長が五反田ごはんださんにお願いをすれば外交なんて何とでもならないですか?」


「シグナルスキャン君。口で言うのは簡単だけどね実際難しいんだよ。駆け引きもあるし、いろいろあるんだよ」


「そうなんですか。俺からの独り言なんですけどね、日本に居る大使もしくは奥さん等の家族をリョー様が治せば解決できるんじゃないですか?」


「シグナルスキャン君。以前から思っていたけど君の独り言はやけに具体的なんだね」


「あれ?俺の独り言聞こえてました?」


「あっ又胃痛がして来たぞ!」


俺は右手を出して力強い言葉を発っする。


「シグナルスキャン!病気鑑定!…気のせいですね健康ですよ…あっ精神疾患かもしれませんね」


「あ~君が病気占い出来る事をリョー様の事で忘れていたぞ!ほんとに、鈴木家には優しい人間はいないのか?」


「ゆうこは優しいですよ」


「どこがだ!以前も俺にどれだけの請求書を寄こして来たか知っているのかね!」


「さっさあ?俺関与してませんので」


知っているがここは知らない振りをしよう。


「私が文句を言ったら…マシンガンのようにやり込められて…胃痛がして来た」


「大丈夫ですよ。リョー様なら傷となれば治せますので今度連れてきますね。美味しいご飯でも食べさせれば只で治してくれますよ」


「美味しいご飯にいくら出せばいいかゾッとするぞ」


「常識の範囲内で大丈夫ですよ」


「ふん、まあいい。今度連れてきなさい。望み通り美味しい…そうだな、ステーキでもご馳走しよう」


「ありがとうございます。それでは家族3人でお邪魔しますね。それでは」


「はっ!?いつ家族3人に変更したんだ?」


「えっ!?今ですよ」


俺は逃げる様に城島じょうじま部長から去って行ったのだった。

今度胃薬でも持って行ってあげようかなと思う健一だった。

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