第20話 20

20


俺は笑顔えがお万歳まんさいを見送って自宅に帰ってきた。

自宅に着くとゆうこが昼ごはんの準備をしていたので俺も手伝いをする事にした。


「今日は久しぶりの日曜休みなのにすまないな」


俺は料理をしているゆうこに声を掛けた。


「そんな事ないよ。最近とても気分が良くてね、お料理をがんばろうと言う気になるの」


ゆうこは笑顔で答える。恐らく俺達の仲が良いなのかと思う。

そしてチャーハンとスープに冷蔵庫にあった夕食のあまりもので昼食が出来たので良太りょうたを呼んで昼食にした。


「なんか父さんと母さんと日曜日のお昼を食べるなんて久しぶりだね」


良太りょうたが席に着くなり口を開く。


「忙しいからな、さあ食べよう」


俺は家族と昼食を食べながら、これが本来の姿かもしれないなと思った。

昼食後は来客に出すお菓子を買いに俺とゆうこはショッピングモールに出かけて行き、良太りょうたには昼食後の後片付けをお願いした。男でも皿洗いくらいは出来ないと今のご時世生きてはいけないからな。

俺とゆうこはショッピングモールから帰るとリビングルームの机は椅子を端に寄せて、全員が座れるように用意した。流石に椅子を準備する時間もないから、全員座布団を引いて床に座るスタイルにした。

そして15時前になると最初に一生笑顔スマイリー教の教祖、笑顔えがお万歳まんさいが部下を2名連れてやって来た。

続いて宗教団体オクトパス教祖 たこ海海かいかいも部下2名と良太りょうたの同級生と思われる女子が来た。


「お久しぶりですね、たこ海海かいかいさん」


俺は落ち武者風貌の男性に声を掛ける。


「20年ぶりかな?シグナルスキャン君。今日はお邪魔させてもらうよ」


「ええ、どうぞ上がってください」


たこ海海かいかいも部下2名が家に上がると女子が俺の前に立ち挨拶して来た。


「初めまして。私、良太りょうた君と同じ高校に通うイブキです。よろしくお願いします」


肩までの黒髪をふわりとさせた少し小柄な女性で、顔は可愛い部類に入るだろうと思った。


「よろしくね。俺が良太りょうたの父親の健一だ。シグナルスキャンの方が通り名として有名かな」


「ええ存じています。とても有名な病気占い師さんですよね」


「ありがとう。さあ、立ち話もなんだから上がってくれ」


俺はこれで役者が全員揃ったと思ったが、正直良太りょうたの同級生と言うか彼女は余分だなと思った。

恐らくはたこ海海かいかいが有利になるように連れて来たと思うが、俺の前にそんな些細な事は関係ないと思うが用心に越した事はないと思った。

リビングルームに俺、優子、良太りょうた、イブキ、タコ+2名、笑顔+2名の計10名が集まった。

最初に自己紹介の前にゆうこが皆の前にお茶とお菓子を並べた所で俺が口を開く。


「今日は良太りょうたの件で集まってくれてありがとう。話合いはスムーズに熱くらならず済む事を願っている。最初に一応自己紹介をしようと思う。俺が健一又はシグナルスキャンで妻のゆうこ、息子の良太りょうただ。つづいて笑顔えがおさんよろしく」


俺が声を掛けると笑顔えがお万歳まんさいは挨拶をした。部下2名の男女は無言で座っていた。ちなみに一生笑顔スマイリー教の衣装は全身白を基本とした男女関係ないズボンと頭から被るぶかぶかな感じの上着だ。

つづいてたこ海海かいかいが口を開いた。


「宗教団体オクトパス教祖 たこ海海かいかいだ。今日はリョー様について有意義な話をしたいと思う。最初に手土産を持って来た。シグナルスキャンよ受け取ってくれ」


部下の一人が紙袋を俺に渡してきた。

俺は無言でチラリと中身を確認すると想定通りに札束と何やら本が一冊入っていた。

俺は聞く事にした。


たこ海海かいかいさん手土産はありがたいが中の本は一体なんの本だ?」


「ふふふ、まあ読めばわかる」


「わかった。とりあえずこの手土産は預かっとくよ」


俺は紙袋をゆうこに渡した。ゆうこはチラリと中を見て声には出さないが驚いていた。

最後にイブキが挨拶をして話合いが始まった。


「まず最初に息子が今動画で拡散されているリョー様をやっている件について話させてもらう」


俺の言葉でたこの目が鋭くなる。


「俺は息子の意見を尊重してリョー様を続ける事を了承した」


たこ海海かいかいの目が大きく開かれて拳を握ったのが分かった。


「但し、俺は息子とあなた達に条件を出す事にした」


「条件とはなんだね」


たこが口を挟む。


「慌てないでくれ。最初に俺が息子の良太りょうたに出した条件は二つだ。一つ目は勉強だ。良太りょうたは現在高校一年生でこれから多くを学ばなければならいないので、一定の学力低下が見込まれた場合はリョー様活動を停止させる」


「一定とは?」


たこが口を開く。


「一定は一定だ。順位で何番と言ってしまえばこれなら大丈夫だと思うので敢えて何番とは言わない。俺が考える一定を超えた時点で終了だ」


「学年で1割に入れとかそんな無謀な条件では?」


たこ海海かいかいさん、俺は息子がどの程度の頭の良さかは知っている。頑張っても真ん中で良い所じゃないのか?」


俺の言葉でヒントとなった模様でたこ海海かいかいは頷くだけだったがイブキがここで口を開いた。


海海かいかい先生、良太りょうた良太りょうた君の勉強については私に一任してもらえませんか?同じ高校で同じクラスなので顔を合わせる機会も多いですし、それに…彼氏彼女の関係ですので出来ると思います」


たこがイブキを見て頷きながら答えた。


「イブキよそこまで言うならお前に任せよう。リョー様の事を頼むぞ」


イブキはたこの言葉を聞いて笑顔で頷いた。

俺は息子の顔を見て嫌そうな顔を必死に堪えている様子が伺えた。そうやって人は大人になるんだよと思った。


「次の条件がこれはたこ海海かいかいさんにも関わる事だが、良太りょうたがリョー様である事が絶対に表沙汰にならない事だ。これは条件と言うより良太りょうたの生活にも支障が出る事になる。表沙汰になった場合俺は良太りょうたと家族を連れてみなさんの知らない場所へ引っ越す事にすると思うので、そこら辺は肝に銘じてほしい」


俺は全員の顔を見た後に息子へ問いかける。


良太りょうた、これでいいんだな」


「ありがとう。とりあえず18歳高校が終わるまではその条件でいいよ」


「条件は高校卒業までなのか?」


たこ海海かいかいが聞いてくる。


「とりあえずな。高校を出たら大学か就職かは本人が決める事だ。それで話を続けるが次にたこ海海かいかいさん、あなた達にも俺の条件を飲んでもらう」


「答えれるものは全て答えよう」


「良い返事だ。だが先に言っておくが俺の条件は息子の為を思っての条件だと言う事は忘れないでほしい」


たこ海海かいかいは頷いた。

各々の部下達は俺の言葉を聞き逃さないように紙に記入していた。もしかしたらボイスレコーダーを忍ばしてあるかもしれないが、そんな事は俺は気にもしないで話を続ける。


「最初に良太りょうたの安全確保についての条件だ。リョー様の力は俺も体験したがとてつもない能力だ。正直言えば世界の国々が良太りょうたを欲してもおかしくない力だと俺は思う。そうなると危険が伴ってくるのは当然だ。たこ海海かいかいさんがガードしていると思うが俺は不十分だと思う。そこで追加でここにいる一生笑顔スマイリー教に良太りょうたのガードを依頼した」


「ちょっと待ってくれ。私共のガードは強い。一生笑顔スマイリー教に頼らず共にリョー様を守れる」


「果たしてそうだろうか。俺が言っているのは良太りょうたを狙うのは国内の人間だけではないと言う事だ。海外のマフィア等が入って来てもガードは問題ないと言い切れるのか?」


俺の言葉に流石のたこも口をつむる。

俺は言っている意味が分かったのだろうと思い話を続ける。


一生笑顔スマイリー教に良太りょうたのガードは了承してもらえるかな?」


たこは渋々と言う感じで頷いた。


「ガードをするに当たって良太りょうたのスケジュールを送ってもらいたい。ちなみにガード費用は良太りょうたが稼ぐ金がら捻出するからそこら辺はよろしくなたこさん」


「シグナルスキャンあんたが出すんじゃないのか?」


「そんな訳ないだろ?リョー様ならどれだけでも稼げるんじゃないのか?今ははした金しかリョー様に渡していないようだが」


「はした金とは侵害だが16歳の男性に多額の金を渡すのが良いとは思わないからそうしているだけだ」


「なら、良太りょうたに渡す分とは別に通帳を作ってそれに振り込んでくれ。俺がそこから一生笑顔スマイリー教に支払おう」


「息子の稼ぐ金を当てにするのかシグナルスキャンが?」


「バカ言え、余った金は全て息子良太りょうたの物に決まっているだろ?」


「すまん失礼な言葉だったな。噂に聞いたんだがシグナルスキャンが外交特権の要人の病気占いをしているとの情報を掴んだんだがそこでも大金を稼いでいるのか?」


「ノーコメントだ。俺の行動と内容を知るとあんたの身に危険が及ぶかもしれないぞ?」


「すまなかった。今の言葉は聞かなかった事にしてくれ。この通りだ」


たこ海海かいかいが深々と頭を下げた。

俺は気を取り直して話をする。


「条件と言うのは以上だがここからは俺からの懸念を伝える」


俺はたこを一睨みしてから口を開く。


「リョー様を担ぐのは構わないがリョー様…いや、良太りょうたを使っての信者集めは俺は納得がいかない。確かにあの力を使える者が教団に居ると言うのは強みなのは分かる。しかし、自分の息子を使っての信者集めは辞めてもらいたい。もし人を集めたいなら歌手等芸能人がやっているようなファンクラブなどの会としてを希望するとかどうだろう」


俺がたこを見ると視線を下にずらして何かを考えてから口を開く。


「それについては考慮しよう。オクトパスとは切り離した形での運営を考えるのでしばし時間が欲しい」


「わかった。期待して待つとする」


「以上がリョー様に関する事だが…と、一応言っておくが俺の方でも良太りょうたの力を借りる事があると思うがその辺は了承しておいてくれ。オクトパスとは完全に無関係で動くからな」


俺は皆を見回してある程度納得してるようだったので、誰も手を付けていないお茶と菓子を薦めた。

俺の言葉でようやく皆がお茶と甘いお菓子に手を出したので一息を着いたのだった。

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