第19話 19

19


リビングの食卓を俺とゆうこと良太りょうたの3人で囲みながら話を続ける。


「ケンちゃん、たこ海海かいかいに参加してもらう話ってなんなの?」


ゆうこが聞いてきたので答える。


「別に難しい話じゃない。身バレや金の話だよ。それより良太りょうたへの条件を先に言おうと思う」


俺が良太りょうたへ視線を向けると良太りょうたは背筋を伸ばした。


「まず一つ目が勉強だ。アルバイトが主になり勉強がおろそかになり順位が下の方に下がった時はアウト。二つ目は身分だ。顔が世間にバレたらアウト。これはアウトと言うより大変な事になるので肝に銘じてほしい」


良太りょうたが頷く。


「あとは細々した事があるが、そこら辺は二度手間になるのでたことの話合いの中で決めようと思うが、ゆうこは俺の決定に賛成か?」


「ケンちゃんがそれでいいならいいわよ。だけどたこ海海かいかいはあまり好きには慣れない感じなのよね…」


「母さん達、会った事あるの?」


「あるぞ。20年近く前だがな、仕事の依頼で東京の方で会った事あるな」


良太りょうたの質問には俺が答えた。


「それで良太りょうたたこ海海かいかいに連絡を取る事は出来るか?」


「直接は無理だけどイブキに頼めば出来ると思うよ」


「それなら親にバレてシグナルスキャンが話がしたいと言っていたと伝えてくれ」


「わかった直ぐに連絡して見る」


良太りょうたがスマホでメッセージアプリを使ってイブキへと連絡をしていた。

そして数回のやり取りを経て日曜日の午後15時にこの家で話合う事に決定した。

話が熱くなると甘いものでも食べながらの方が落ち着くからとの俺の意見が通ったからだ。


「それで良太りょうたの力は傷を治す力で良いのか?」


俺は話合いを優位に進める為に情報を得る事にした。


「基本的にはそうだけど、外だけじゃなくて内面も傷も癒せるみたいだよ。少しだけど」


俺は早速頼む事にした。


良太りょうた、最近父さん腰が痛いんだけど治せるか?」


「出来ると思うよ」


「それじゃあどうすればいい?服の上からか?それとも地肌の方がいいのか?」


「たぶん地肌じゃないとダメな気がする。服の上からは試した事ないからね」


おっ新情報が出て来たので試す事にした。


「それじゃあ最初に服の上からで、ダメなら地肌で頼めるか?」


「うん、わかった」


俺はソファーの上にうつ伏せになった。


「それじゃあ、やってみるね」


良太りょうたは服の上から腰に手を当てて言葉を発した「ヒーリングタッチ」。


「…駄目みたいだね」


「そうか、それじゃあ直接頼む」


俺は服をめくった。


良太りょうたは俺の地肌の腰に手を当てて言葉を発した「ヒーリングタッチ」。

その瞬間に俺の腰が熱くなり何かが流れ込んで来ているようだった。


「おっなんか変化あったぞ」


「たぶん、成功したんじゃないかな。手ごたえあったし」


俺は起き上がってラジオ体操をして見ると驚いた。

見事にあれほど痛かった腰が治っているのだ。

その様子をゆうこが見ていたので俺はゆうこに声を掛けた。


「ゆうこ、これは凄いぞ。見事に俺の腰が治った。これで現役バリバリだぞ」


ゆうこは俺の言葉を聞いて少し頬を赤くしていた。

ゆうこは直ぐにそっち方面の事を考えるからな~。だが、たしかに最近は夫婦の営みはなかったし、そう考えるのも分からんではないな。


「ケンちゃんだけずるい!良太りょうた!私は足がむくんでいるんだけど治してよ」


ゆうこは何やらムキになって足を良太りょうたの前に差し出していた。

良太りょうたは若干困惑をしていたが、俺と同じように手を当てて言葉を発した「ヒーリングタッチ」。


「駄目だね。怪我じゃないから治せないよ」


「そんなぁ~残念。せっかく綺麗な足をケンちゃんに見せようと思ったのに」


ゆうこが愚痴を言い出したので俺はフォローする。


「ゆうこは今でも綺麗だよ。さあ、夕食の片づけをして今日はゆっくり休もうな」


俺はそう言いながらウインクをした。

現金なものでゆうこは笑顔を取り戻して夕食後の後片付けを始めた。

俺はゆうこと一緒に後片付けを手伝いながらどう言う形で話をもっていこうかと思考しるのだった。

ちなみに良太りょうたのおかげで治してもらった腰は絶好調で、久しぶりにゆうこと楽しい夜を過ごす事が出来た。


*


私は宗教団体オクトパス 教祖 たこ海海かいかい

イブキより連絡が入り、リョー様の事がシグナルスキャンにバレてシグナルスキャンより話がしたいと言って来たのだ。

私は想定より少し早いなと思ったが、どうせ通る道なので幹部達に直ぐに手土産を用意させた。

イブキ経由で私達がシグナルスキャンの家にお邪魔する事になり話合いが持たれる事になった。


*


私は一生笑顔スマイリー教の教祖 笑顔えがお万歳まんさい

私がリョー様の事をゆうこに伝えたてから短い時間で連絡が入った。

息子に問いただした所認めたとの事だった。

そしてリョー様やこの私も含めてたこ海海かいかいと話合いをするとの事だが、事前に私との話合いをしたいとの申し出があったので受ける事にした。


*


日曜日の午前10時に自宅のチャイムがなった。

俺がインターホンの映像を確認すると想定通りの人物が立っていた。

俺は玄関に出迎えドアを開けた。


「ようこそ笑顔えがお万歳まんさいさん、どうぞ中へ」


「うむ。これは茶菓子にいいと思って持って来た菓子じゃ受け取ってくれ」


「ありがとう」


俺は笑顔えがお万歳まんさいから紙袋を受け取り、リビングルームへと移動した。

現在俺達が住んでいるのは一軒家だ。

庭付き一戸建てでここら辺は買った当時何もなくかなり安価で購入出来たのだが、最近はいろんあ物が出来て地価が高騰して税金が高くなっているのが難点だ。

ちなみに場所は俺の実家とゆうこの実家の中間地点辺りにした。お互いの実家が近いのは何かと便利だからだ。

俺はリビングルームへ笑顔えがお万歳まんさいを案内し席に座って貰った。

すぐにゆうこが冷たいお茶を用意して机の上に並べて貰い話合いを始めた。

まず俺は昨日良太りょうたから聞いた内容と俺の考えを笑顔えがお万歳まんさいに隠さず伝えた。


「話はわかったが私に何をしてほしいんだ?」


「簡単な事ですよ。俺からの正式な依頼で良太りょうたの安全を守ってもらいたい」


俺が口にすると笑顔えがお万歳まんさいが腕を組んで考え出し、しばしの後に口を開いた。


たこが納得するかな?」


「納得もなにも条件を出して断れば終わりだ」


俺の言葉に笑顔えがお万歳まんさいは笑い出した。


「いや、すまんすまん。流石シグナルスキャンって所だな」


「何が流石なんですか?」


「強気で行ける所がだよ。普通の人間なら教祖と話そうなんて思わないからな」


「そうか?自分の子供を守るんだから当然じゃないか?」


「それで世知が無い話だが依頼の費用はどうするんだ?」


「簡単だよ。良太りょうたが稼いだ金をたこに出させてアンタに支払う流れだ」


「自分のふところは痛めずか…上手い事を思い付くな」


「そうでもないさ、実際に良太りょうたの方が稼ぐような気がするからだよ」


「確かにそれはあるな。わかったシグナルスキャンからの正式な依頼は受けよう。金銭の細かい事はたこと話合ってからでいいな」


「ああ、問題ない」


それからしばし話をして俺はゆうこに断って、笑顔えがお万歳まんさいを近くまで送る事にした。

俺は家から少し離れた所い来ると口を開いた。


「この前は助かったよ。危うく又週刊誌に乗る所だったよ」


「お前さんは女運がないのかあるのか分からん男だな。だけど寄って来る女は皆超一流だから隅におけんよ」


「俺もイベントで久しぶりに会った如月きさらぎれいがあんな綺麗になっているなんて思いもよらなかったから…思わずな…」


「まあ、せいぜい奥さんには気を付ける事だな」


「大丈夫だろ?その為の一生笑顔スマイリーとの契約だからな。それに変な事をすれば俺は確実に天国に行く自信はあるぞ」


「わっ私も気を付けるようにしよう」


「あと、ゆうこはイケメン大好きだからたまに俳優と食事に行ったりしているぞ。内緒だけどな」


「もしかして、それを取り持っているのは…」


「当然俺だ。たまの息抜きは必要だ。俳優の方は仕事と割り切っているみたいだからその辺は問題ない」


「シグナルスキャン恐るべしだな。さあ、この辺で良い。15時に又行くのでよろしくな」


「ああ、ちゃんと配下も連れて来いよ」


「言われなくても」


そうして笑顔えがお万歳まんさいは消えて行った。

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