第18話 18

18


俺とゆうこは病気占いの店を夕方に終了して自宅へと帰った。

今高校は夏休みと言う事もあり良太りょうたは部屋にいるようだったが直ぐに声を掛ける事はしなかった。

俺とゆうこでまだどのように話すかを決めていなかったからだ。

俺はゆうこと夕ご飯の準備をしながら話の流れを相談し、食事後半に話をしようと決めた。

そしていつもの鈴木家定番のハンバーグ夕食が完成したので、久しぶりに良太りょうたを呼んで食事をする事にした。

俺とゆうこは店をやっている事と出かける事が多いので、どうしても家族3人で食事をする機会は減るのは仕方ない。


良太りょうた~飯出来たぞ~」


俺が呼ぶと直ぐに部屋から出て来て食卓に着いた。


「珍しいね二人揃うなんて」


「今日はお客さんが偶然少なかったから早くに上がったんだ」


当然だが嘘だ。強制的に店を閉めて来た。

現在店はアルバイトも雇っているのでその子に戸締りをお願いして素早く帰宅したのだ。


「珍しい事もあるんだね。あれだけ盛況だったのに」


「ほら、喋っていないで食べるぞ」


「いただきます」


俺達は食事を始めた。

ゆうこは緊張なのか一言も口を開いてはいない。

そんな様子に気づいたのか良太りょうたがゆうこに声を掛けた。


「母さんどうしたの?元気ないの?」


「元気はあるけど少し疲れているだけよ」


「あんまり無理しないでね」


良太りょうたありがとう。優しいのね」


良太りょうたが不思議な顔をしている。いつものゆうこならそんな事は言わないからだ。

俺は話題を変える。


「そう言えばイブキって言う女の子と仲良くしているそうじゃないか」


「まあ仲はいいかな」


「なんだ嬉しそうじゃないみたいだな」


「ん~実はさイブキとは中学2年の頃から付き合っているんだけど、嫉妬深くて少し困っているんだよ」


「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ」


俺は盛大にむせた。

ゆうこは空いた口が塞がらないような感じだ。

俺はなんとか落ち着けて口を開いた。


「いきなりな告白だけど、もう3年も付き合っているのか?」


「一応ね。年月だけは経っているけど何も変わってはいないよ」


俺はその言葉を聞いて少し安心した。

もう、その歳で女子に手を出したかと心配したからだ。

チラリと横を向くとゆうこも安心した様子だ。

そして食事がある程度進んだ所で俺は本題に入る事にした。


「そう言えばゆうこから聞いたんだけどアルバイトのような事をしているんだって?」


「うん、言葉を発しない演劇みたいな事をやっているよ」


「ちなみにその演劇と言うのはどう言う感じのやつなんだ?」


僕は父から細かい事を聞かれて困ったが特に隠す必要性が無いので、教団の事だけを伏せて話す事にした。


「僕が主役の役をやっているんだけど、それにみんなが合わせてくれる感じかな…上手く言えないけど」


俺は良太りょうたが少し隠したい気持ちがあるように見えたので金について聞く事にした。


「まあ、内容はともかくとして報酬はどうしているんだ?アルバイトだと税金関係があると思うが」


「前にも母さんに話したけどお手伝いと言う形にしてもらっているんだ。それで一応行けば交通費の千円は貰って残りはネットショッピングのポイントとしてもらっているんだ」


「ネットショッピングのポイント?」


僕は携帯でタコショッピングモールのアプリを起動して父に携帯を渡した。


「これがネットショッピングのアプリだよ。それで右上の数字が僕のポイント」


健一がアプリを見た瞬間に絶句した。

名前がタコショッピングモールだからだ。宗教そのまんまだろ!と思ったが心を落ち着けて次にポイントを見たが又驚いた。

ポイントは13万ポンとを保有していたからだ。

やはりあのリョー様が良太りょうたならこのくらいは安いくらいかと思った。

ゆうこが隣から携帯を覗いて来たので俺はゆうこにも見せてやると口を開いた。


「これだけポイントがあればたくさん買い物出来るじゃない」


「欲しい物があったら言ってよ。僕注文しておくからさ」


良太りょうたも何でもないように答える。

俺はこの母にしてこの子ありだなとつくづく思った。

そして俺は良太りょうたへスマホを返して確信へ踏み込む。


良太りょうた、今ネットでリョー様と言う摩訶不思議な能力を使う動画が流行っているんだけど知っているか?」


俺が言った瞬間に良太りょうたの顔が引きつった。

良太りょうたはモゴモゴとしていたが観念したのか口を開いた。


「あっあのリョー様は僕なんだ…」


「凄いじゃないか良太りょうた!あんな凄い力が使えるのか?いつから、いつから使えるんだ?コツとかあるのか?」


「ケンちゃんバカなの?そう言う事を聞いているんじゃないでしょ!」


俺が勢い良く聞いた所で横からゆうこに怒られた。


「すっすまない、少し興奮してしまった」


俺は深呼吸をして口を開く。


良太りょうた、今までのいきさつを話してくれ。俺と母さんは怒っているのではなく、ただお前を心配しているだけと言う事だけはわかってくれ」


すると良太りょうたは頷いて経緯いきさつを話出した。


「最初に力に気づいたのは小学校2年くらいかな…それで小5の春休みにイブキと会った時にイブキが怪我をして、イブキを治したのが最初。それから少し前にイブキから僕の力を使ったバイトをしないかと誘われて、イブキに連れられて行った先が宗教団体オクトパスだった。僕は宗教はマズイと思ったけどイブキから僕を入信させたりお金を取ったりしない、これはあくまでもアルバイトだよと…それで流れるままに今の状況かな」


俺は良太りょうたの話を聞きながら、流石宗教団体だな話が旨いと思った。


「それでイブキさんは宗教の人なのか?」


「イブキからは親戚のおじさんが宗教団体オクトパス 教祖 たこ海海かいかいだって聞いてる」


そうなるとイブキは2世って事になるのかな。

体のいい言い訳として親戚のおじさんにしたのだろうと予測が付いた。

さてどうしようか俺は悩んだ。

良太りょうたを辞めさせる事は難しくないと思うが、高校一年生の男が簡単に親の言う事を聞く訳がない。かと言って隙にしなさいなんて言った日には俺はゆうこから八つ裂きの刑に会う事はあきらかだ。もう少し良太りょうたの意見を聞く事にした。


「それで良太りょうたはリョー様を演じていて楽しいのか?」


俺が聞いた瞬間に良太りょうたは目を輝かせながら口を開いた。


「それが面白いんだよ!みんな僕をあがめるようにしてさ、それにみんな優しくしてくれてご飯やお金までくれるんだ。僕の学校はバイト禁止だからおこずかいとしてお金をくれるのはありがたいよ。あと学校の友達も一緒にバイトしているんだ」


俺はあんな凄い力を使えば崇めたくもなるだろうと思った。それに学校の友達もバイトをしていると言っていたが、恐らくはその子達も宗教団体の息が掛かった子だろうと予測した。

俺が考えて居るとここで初めてゆうこが良太りょうたを睨みながら口を開いた。


良太りょうた!宗教がどんな怖い所か分からないの!」


「ごっごめんなさい」


「あなたは…」


「待てゆうこ!」


俺はゆうこの発言を遮り止めさせた。


「落ち着けゆうこ。小言を言う話ではないぞ。今後どうするかを考える為の話だろ?」


「ごっごめんなさい。少し熱くなったわね。それでどうするつもり?」


「俺としては条件付きで高校生の間だけは許可しようと考えている」


「ケンちゃんそれは!?」


ゆうこが焦ったように声を上げる。


「話を最後まで聞いてくれ。当然だが条件の話はたこ海海かいかいにも参加してもらっての話になる」


俺の言葉にゆうこと良太りょうた二人の視線が釘付けになるのだった。

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