第17話 17

17


少し時は遡り、リョー様が午後のイベントに出ている時、宗教団体オクトパス 教祖 たこ海海かいかいは報告を受けていた。

予想通りにネット配信は大盛り上がりで視聴者が倍増しているとの事。

オクトパスとしてはこれに手を入れれば水を指す事になるので放置する事にした。

そして肝心のリョー様への治癒依頼だが予想以上の反響となっていて、当初決めていた値段を大幅に上げる事にした。

人は目に見えない現象より、リアルに起こる現象の方が人は引き寄せられる物だ。


「今どれくらいの人数が話をしに来ているのか?」


海海かいかいは幹部に問う。


「現在は8名の方が恐らくは入信と言う形でリョー様を求めています」


幹部は答える。


「分かった。ネットからの問い合わせにも対応を頼む」


「かしこまりました」


これで大きい一歩を踏み出したと同時に、リョー様の存在を世間に示してしまった。

この決断が吉と出るか凶と出るかは神のみぞ知ると言った所だが、私は私の信念をもってリョー様を守ろうと思う。

そして次の段階へと足を踏み出す必要が出て来るのでその準備を進めよう。


*


インターネット掲示板スレッド


『怪我を治す神の奇跡を信じる?スレ★1』


001 名もなき神の奇跡


宗教団体オクトパスのイベントでイムホテプが降臨し『リョー様』と言う男性が出て来た。

リョー様は女性のナイフの傷を治し、男性の腕の古傷を治した。


ttp://www.リョー様.ryousama_kega_naosu_cheat_dayo


生配信を見ていたが信じられない事が起こった。本当の神の奇跡かも!?


002 名もなき神の奇跡


生配信見たが本当の神か?


003 名もなき神の奇跡


シグナルスキャンと言いなぜ名古屋なんだ?


004 名もなき神の奇跡


宗教絡みなのが怪しい


005 名もなき神の奇跡


宗教でも治るのなら金を払ってでもお願いしたい人たくさんいるぞ


006 名もなき神の奇跡


いくらで治してもらえるんだ?


007 名もなき神の奇跡


ネットに概要が出ていたぞ

1.入信とお布施

2.リョー様へのお布施

3.リョー様から奇跡を頂く


008 名もなき神の奇跡


入信は只だけどお布施は月収入の10%らしい


009 名もなき神の奇跡


うわっやっぱり高いな。それでリョー様はいくらなんだ?


010 名もなき神の奇跡


小さな火傷の跡は50万からって例題で書いてあった


011 名もなき神の奇跡


火傷なら普通に病院で治療しても50万はかからんだろ


012 名もなき神の奇跡


跡も何も残らないのが特徴って書いてあるぞ


013 名もなき神の奇跡


そこが医療との違いか。それで古傷は?会場の人が治してもらったような傷の値段


014 名もなき神の奇跡


例題にはないが数百から数千万じゃないか?

それでも払う人はたくさんいそうだな


015 名もなき神の奇跡


結局この世は金か


*


イベント翌日の動画サイトやショート動画サイトではある動画が複数拡散されていた。

その動画はたこ海海かいかいが動画担当の榊原さかきばらに依頼して作成したものだ。

一つ目の動画はイベントで行ったナイフで切れた場所を治癒する動画。

二つ目の動画はイベントで行った左腕の縦長の傷を治癒する動画。

三つ目の動画は教団で行った右腕に長さ20センチの刃物の傷を治癒する動画。


3本の動画は信者の力も借りてもの凄い速さで拡散され、その情報は同じ奇跡を行使するシグナルスキャン達にも伝わった。

最初に動画を見つけたのはゆうこだった。ゆうこはこれは凄いと言う事でシグナルスキャンこと健一にも動画を見せた。


「俺と言い力を使う奴は覆面とか仮面を付けるのは流行りなのか?」


健一がゆうこに問う。


「そんな訳ないでしょ。顔を隠したいのも分かるわよ。これだけの力の持ち主ならそこら中から人が集まるからね」


「俺達のライバルになるのか?」


「ならないわよ。あなたは病気でこの人は怪我でしょ。一生交わらないわよ」


「それなら安心だな。俺も怪我したら治してもらおうかな」


健一がにこやかに笑う。


「財産没収されて終わりよ」


「怖い事言うね。でも宗教団体らしいからそれもそうかもな」


そんな他愛ない話をしているとゆうこの携帯電話が鳴り響いた。

ゆうこは宛先を見て眉間にしわを寄せて思った『なにやら嫌な予感がすると』


「もしもしゆうこです」


「昼間にすまないね一生笑顔スマイリー笑顔えがお万歳まんさいだ。大至急伝えたい事があって電話をさせてもらった」


「なっなんですか?大至急って」


ゆうこは嫌な予感がどんどんと膨らむ。


「君達は今拡散されているリョー様の動画は知っているかな?」


「ええ、今さっき主人と見ていた所ですよ」


「そうか、なら話が早い。落ち着いて聞いてほしいのだが、そのリョー様はご子息の良太りょうた君だ」


ゆうこは一瞬思考が停止して聞き返した。


「はっ!?今なんて言いました?もう一度ゆっくり」


「リョー様は良太りょうた君だ」


ゆうこは放心状態になり携帯電話を座っていたソファーに落とした。

近くに居た健一はただ事ではないと思い携帯電話を拾い電話に出た。


「もしもし健一です」


「お~シグナルスキャンか。私は一生笑顔スマイリー笑顔えがお万歳まんさいだ。奥様は大丈夫かね?」


「なんか放心状態になっていますがどうしたのですか?」


「率直に言おう。リョー様は良太りょうた君だ」


「冗談では?…ないと言う事ですね」


「ただ、現在の所確率は90%だけれどね」


「と?言いますと?」


「実は良太りょうた君が女性友達のイブキ君と車に乗って降りて来たのだ。最初イブキ君は何処かのお嬢様かと思って警戒はしていなかったんだよ。それで3回目かな丁度昨日の事だ又車から降りて来たので私共は車を尾行したんだよ。そしたら宗教団体オクトパスの敷地内へその車が入って行ったと言う訳だ。そこで今日出された動画のリョー様の背格好とお宅の良太りょうた君を照合した所ほぼ一致した訳だ」


「それでは本人に聞いて見ないとわからないですね」


「確かにそうだが注意して聞いた方が良いぞ。相手は私達と同じ宗教団体だ。既に良太りょうた君が洗脳されている可能性もあるんだ。暴れて家ででもされたら難しくなるぞ。それにあの力の事もある慎重にな。もし力が必要ならなんでも言ってくれ、それでは失礼する」


電話が切れた。

ヤバイヤバイどうしよう。良太りょうたに聞くのは容易だが笑顔えがお万歳まんさいの言う事も一理あるな。

俺はゆうこが復活するのをまってから話をする事にしたのだが、店の経営もあるので俺は一言ゆうこに声を掛けて仕事に戻った。


「ゆうこ落ち着けよ。別に何かあった訳じゃない。今からが本番だぞ」と。

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