第15話 15

15


イベント当日僕とイブキは少し早い時間にオクトパス教団へと来ていた。

ここから送迎バスに乗って現地まで行くと言う形になるとの事だ。

僕は教団に着くと直ぐに着替えを始めた。

一応着ていた服はリュックサックに入れて持って行く。もしかしたら汗でもかいて着替えるかもしれないからだ。

僕は着替えを終えてリビングルームへ行くとそこには、イブキが居たがイブキもイベントに参加するみたいで着替えをしていた。

イブキの服は赤と白のまだらな浴衣に目立たない程度にタコの文字が入った服だった。

やはり、あまり教団とか宗教を出すのは控えているのかな?と思った。

僕はそんなイブキに声を掛けた。


「イブキもイベントに参加するんだね。それとその服似合っているよ」


「ありがとう。私はリョー様のサポートかな。あと今日実は応援と言うか追加のアルバイトも来てるんだ」


イブキが後ろのドアをノックするとそこから二人の女性がイブキと同じ服を着て出て来た。

僕はその二人を見てビックリした。何故って同じ高校に通う同級生だからだ。


「ヨウコに遠藤えんどうミチコ。二人共どうして?」


僕の問いにはヨウコが答えた。


「実はイブキからバイトに来ないかと誘われてね。それでミチコも呼んで参加する事にしたの」


「そっそうだったんだ。今日はなんか良くわからないイベントだけどよろしくね」


「よろしく」


ヨウコと遠藤えんどうミチコが答えた後に遠藤えんどうミチコが声を掛けて来た。


「リョー様の呼び方で良いのかな?」


「あはは、ここではそう呼んでもらえると身バレ防止になるかな」


「それじゃあリョー様って呼ぶね。後、私も同級性だからミチコって呼び捨てでいいよ」


「あっわかったよ。これからはミチコって呼ぶね」


「ありがとう、リョー様」


ミチコは少し頬を赤らめて居る様子だったが、何故かイブキの視線が気になったので話題を振った。


「それで今日二人は何をするの?」


「今日はね舞台で踊るのよ」


「踊るの?」


「そう、実はこのバイト少し前に話が合ってね、それから踊りの練習をして来たから今日が本番って訳」


「内の高校バイト禁止だから顔は隠すの?」


「大丈夫よ。この可愛らしいお面を付けて踊るからバレないわよ」


ヨウコがタコの姿を可愛くしたお面を付けてクルリと回って見せた。

ヨウコはイブキよりかなりスタイルが良い為、どうしても胸元に視線が行ってしまうが自重した。


「うん、とっても良いと思うよ」


そんな話をしていると出発の時間になったので僕達はバスへと乗り込んだ。

僕、イブキ、ヨウコ、ミチコそれに海海かいかい先生の5人はバスの一番後ろのスモークが張ってある場所に座る事になった。これなら外からは見えない為に問題ないとの配慮だ。バスの中は冷房が効いていてかなり涼しくなっており、僕達は他愛ない話をしたり今日の簡単な流れを再度説明してもらいながら現地へと向かった。

イベントは午前と午後の2回行う事らしく両方共に30分程度で、更にイベントは動画サイトでも生配信されるらしい。

僕が緊張しているのが分かったのかイブキが声を掛けて来た。


「リョー様大丈夫よ。私がマイクでしっかり指示してあげるからミスは起こらないわ」


「それは頼もしいね。イブキに全部丸投げするよ」


「ええ、それで構わないわ。任せて」


イブキは力こぶも出ないのに腕の筋肉を見せて来たので、僕はその柔らかい肉を掴んであげた。


「キャッ!ちょっと何するのよぉ!リョー様のエッチ」


「エッチって違うよ。筋肉もないのにそのポーズはダメでしょ。女の子なんだから可愛いポーズじゃないとね」


するとヨウコが隣から口を出してきた。


「それならこんなポーズはどうですか?」


ヨウコは両腕で胸を押し上げてさらに前かがみで僕に胸を見せて来た。

僕はそれを見て少し顔が赤くなるのが分かったが落ち着いて声を出した。


「ヨウコそれは可愛いポーズじゃなくて、誘惑のポーズに見えるんだけど気のせい?」


「えっ誘惑のポーズなんだけど問題あった?リョー様」


「からかったなヨウコ!」


「えへへ、ごめんごめん。これで緊張はなくなったでしょ?」


「あっありがとう。凄くリラックス出来たよ」


そんな会話の後に会場に着いたので僕達は覆面やお面を付けてバスから待機場所へと移動した。

移動する際には教団の護衛らしき人達が特に僕の周りを囲んでの移動となり、僕は要人にでもなったような錯覚を覚えた。

大きなテントの中で僕達は椅子に座ってイベントの開始を待つことになった。

イベントは教団お姉さんが司会を務めて、リョー様を紹介して奇跡と言う名の治療をする流れだ。

治療は教団の一人を最初に行い、残りは会場から選出する流れのようだ。

僕はテントからそっと会場を見ると舞台下にたくさんの椅子が置いてあり、既にそこにはたくさんの人が座っていた。200人程度は座れる椅子があり、その8割以上が埋まっていた。

僕は深呼吸をして出番を待っているとイベントが始まった。


-


赤い浴衣にタコの文字が入ったいつもの服を着た綺麗な女性がマイクを持って登壇した。


「皆さんこんにちは~今日はイムホテプ降臨イベントに集まりありがとうございます。今日は存分に楽しんでそして驚いてもらえれば幸いだと思っています。今日はよろしくお願いします」


司会が頭を下げると拍手がまばらだが起きる。


「それでは早速今日の趣旨であるイムホテプ降臨について説明をさせて頂きます。イムホテプなんて名前聞いた事ある人居ますか?居たら挙手をお願いします」


すると残念だが手が挙がらなかった。


「ありがとうございます。流石に知っている人は少ないと思います。イムホテプとは古代エジプトの高級神官の名前なんです。死後に医術と魔法の神なんて呼ばれています。そう最後の言葉、医術と魔法の神が今から登場するリョー様に宿った事に対するイベントとなっております。その医術の奇跡をみなさんと共に目の当たりにしたいと思います。それではリョー様登場ステージどうぞ!」


お姉さんの声で会場に大音量で音楽がなり、レーザー光線のような光が舞台と空へと踊る。

そして赤と白のまだらな浴衣に目立たない程度にタコの文字が入った服を着て、顔は可愛いお面を付けての登場だ。

教団の若い女性に交じり、ヨウコ、ミチコ、イブキも会場の舞台へと上がる。

そして歌と踊りが始まる。


「タコ、タコ、タコは言った♪

 15年後この世に奇跡が舞い降りると~♪

 タコ、タコ、タコは言った♪

 エジプトの神が降臨すると~♪

 タコ、タコ、タコは言った♪

 この世の奇跡を起こすと~♪


 信じられない~事が~起きる~♪

 もしかして、ウソ!?

 もしかして、サギ!?

 もしかして、トリック!?


 信じられない~事が~起きる~♪

 人智を超えたちから~それは~奇跡!

 人智を超えたちから~それは~修復!

 人智を超えたちから~それは~治癒!


 名を教えて~♪

 名を響かせて~♪

 名を轟かせて~♪


 その名はリョー様!

 名前はリョー様!


 絶対神、リョーーーー様!!!♪」


女性達の煽情的なダンスと歌で会場を盛り上げる。

ダンスは腰をくねらせ、尻を突き出すような男を誘惑するようなダンスだ。

浴衣から覗く白い素肌の足が色気を増大させる。

そして最後の歌詞が終わった所で光の中から僕ことリョー様が登場する。


全体の服装は以前と同じで白を基調とした服で、顔は三国志風の武将の仮面、手には白い手袋、靴は平安時代とかに出て来る様なつま先が尖って少し上を向いているような感じだ。

僕はゆっくりと歩き、中央に用意された豪華な椅子へと腰を下ろす。


すると踊っていた女性達が並び両膝を床に付け、両手が服に隠れる様に前で合わさるポーズにて演出が完了した。

会場からは何が起こったの?誰が出て来たの?と言った感じで興味深々だ。

そして司会がマイクで喋りだす。


「只今よりリョー様による奇跡を皆様の前で披露させて頂きます」


司会の女性の横に一人の仮面を付けて右腕の服を捲くった女性が登場する。


「リョー様の奇跡は治癒!あらゆる傷を修復してしまう力!神が宿り師その力を今ここに開放を願います!」


横の女性が懐から刃渡り10センチ程度のナイフを取り出す。

そして自らの腕を少しだけ傷つける自傷行動を起こす。

会場からは悲鳴のような女性の声が聞こえるが、女性は傷が付いた腕を会場に見せる様にする。

そして司会が話す。


「本来、自分で自ら自傷する事はこの世で恥じるべき事です。ですが、今回だけは目をつむって下さい!許して下さい!皆さまにリョー様の力を見せるにはこの方法しかないからです。リョー様お願いします」


腕が傷ついた女性が僕の方へ歩いて来て、腕を僕の方に出しながら膝まづく。

僕は椅子から立ち上がり右手の白い手袋をはずして、そっと女性の傷ついた腕へと当て力強い言葉を発する。


「ソウルタッチ!」


ネット上及び会場の大型モニターにカメラからの映像がアップされる。

僕がそっと腕から手を離すと、人体の逆再生が起こり見る見る内に傷が修復されて行き傷が消えるのだった。

その瞬間に会場からは「嘘だろ」「奇跡」「トリック」などのドヨメキが起こるのだった。

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