第14話 14

14


能力を使い体調不良になったが少し回復をしたので、海海かいかい先生の言葉で僕達は母屋のリビングルームへと戻り椅子へと座った。

直ぐに飲み物が出されたので僕は口にして心を落ち着けた。


「最初にリョー様の能力を使う言葉はいかがでしたか?」


海海かいかい先生が聞いてきたので答える。


「言葉は3つ共に発動しましたがやはり最初の『ソウルタッチ』を基本として使いたいと思います。それで他の言葉は用途に応じて使い分けしたら面白いと思います」


「使い訳ですか」


「ええ、簡単な傷はソウルタッチで火傷のような癒す場合はヒーリングハンドとかヒーリングタッチ、他はゴッドとかパワーでどうでしょう」


「それとてもいい案ですね海海かいかい先生」


イブキが話に入って来て先生に聞いた。


「そうだな、リョー様が使いやすいのが一番だからな」


こうして僕の能力の名前が決まった。

それから今日の報酬として交通費+現金で6千円を貰い、残りはポイントになった。

その後、僕とイブキは黒塗りの高そうな車に乗せてもらい僕は自宅近くのコンビニで降ろしてもらった。イブキが車内から手を振っていたので僕は笑顔で振り返してバイトは終了した。


ちなみに車の中でイブキに耳元のイヤホンの事を聞いたら、犯人はやはりイブキで伝えるのを忘れたらしい。

さらに指示していたのもイブキとの事だった。特に問題になるような事はなかったが、今後は丁寧に指示を貰いたいとそれだけは釘を刺してておいた。


僕は自宅へ歩きながらスマホのタコショッピングモールのアプリを開いて入金ポイントを確認すると、なんと今日だけで3万ポイントが入っていた。僕は心が躍る様な感じになり直ぐに何を購入しようかなと真剣にサイトを閲覧するのだった。


*


リョー様が帰った後に直ぐにたこ海海かいかいは命令を出した。

それは腕が疲労骨折をした男性の精密検査を病院で行う様にだ。

もし、リョー様の力が体の内面までも作用する力となれば、それはスポーツ界も揺るがすような力になるからだ。

大柄な男性は他の信者と共に翌月曜日に病院へ行き精密検査を行った。

当然この病院も宗教団体オクトパスの息の掛かった病院だ。

そして結果は…たこ海海かいかいが予想した通りに完璧に骨が修復されていたのだ。


これは相当ヤバイ力だとたこ海海かいかいは報告を聞いて考えた。

ただ問題がない訳ではない。


リョー様の体力を使用しての治癒の為、多人数を相手に出来ないのが難点だ。しかし、簡単な傷の治癒ではそれ程体力を消耗しない事も分かった。


たこ海海かいかいはリョー様の体力向上を視野に入れつつ次の行動予定と指示を出すのであった。


少し経つとたこ海海かいかいの元は治癒してもらった信者よりの寄付金額が報告された。

海海かいかいはその額を聞いて思わず口から笑みがこぼれる。

これは正しく金のる木だなと思う。正直に言えばリョー様にはもっと金を渡したいが、16歳の男性に対して余りにも高額に金銭を渡す事は望ましくないと考えての金額にしているが、これからは幹部や同級生の意見も少し取り入れての本格的な取り込みが必要になるかもしれないと思うのであった。


*


私は鈴木ゆうこ。シグナルスキャンの妻であり良太りょうたの母親だ。

息子は高校生になり女の子の友達も増えて充実した毎日を送っているように思える。

そして最近なにやら物が増えたと思い考えてみる。

お小遣いはあげているがそこまで物が買える程はあげてはいないつもりだ。

そこでこの前良太りょうたに聞いて見た所、たまにではあるが友達の家の手伝いをしてお小遣いを貰っている話を聞いた。

私は直ぐに内容を聞いたが覆面を被って演劇の手伝いと言う事だ。

私は良太りょうたに演劇なんて出来るの?と聞いたがセリフはなく身振り手振りだけとの話だった。

確かに音だけでセリフがないような舞台はあるのは事実だ。

私が考えて居ると良太りょうたからさらに話があった。

顔を隠しているから身分が明るみに出る事がないから手伝っているとの事だった。

良太りょうたは確かに恥ずかしがり屋の部分が大いにあるので、ある意味では良太りょうたにピッタリのアルバイトだと思った。

私が税金の事を聞いた所、バイトではなくお手伝いでお小遣いにしてもらっているとの事で、息子ながらにそこら辺はしっかりしているなと関心してしまった。

あまり息子に根掘り葉掘り聞いていると嫌われるので少し様子を見る事にした。


*


母から押し入れに入れておいた漫画等が見つかり、最初は高木君に借りた事にしようと思ったがバレて迷惑が掛かると思い、咄嗟に本当の事を交えた嘘の話を作った。

実際に覆面を被り演技をしているのは事実なので、まるまる嘘ではないが少し母に嘘をついた事で胸が痛かったが、流石に宗教団体で能力を使って人を治しているとは言えなかった。

無許可で人を治す治療行為をしている事は悪いとは思うが、あくまでも人助けと思いやっているのでそこまで罪悪感はない。

学校も夏休みに入り部活もやっていない僕なので、やる事と言えば漫画やアニメにゲームとオタク一直線の僕にとって、宗教団体のアルバイトは刺激になり楽しみの一つだ。

今日もイブキと共にオクトパス教団へと行くのだった。


-


オクトパス教団に着くと僕とイブキはリビングルームへと通された。

リビングルームには海海かいかい先生を初めとした幹部達が勢ぞろいしていた。


「こんにちは」


僕とイブキは揃って挨拶をする。僕達が挨拶をすると海海かいかい先生を初めとした幹部達が一斉に挨拶を返し頭を下げる。


「リョー様、こんにちは」


僕は思うのだが何処までも演技に抜かりがないなと思った。


「今回は7月の末日にイベントを開いて、そこでリョー様をお披露目をしようと言う計画を話そうと思います」


海海かいかい先生が話す。


「お披露目ですか?」


「ええ、前回この教団内で行った事と同じような事を外で行う予定ですので、リョー様は特に何かをしてもらうと言う事はありません。前回同様に力を使って頂ければ良いだけです」


僕は前回教団内で不満だった事を伝える。


「お披露目は問題ないですが、耳に仕込まれたイヤホンで指示を貰えるのは良いですが、僕の質問が届かないのが少し問題と思います」


「そっそれではリョー様にもヘッドセットを装着して頂き、交互通信でやり取りはどうでしょうか」


「それなら問題ないじゃないと思います。それから質問なんですが以前疲労骨折した男性が居たと思いますが、その後体調の方はどうなりましたか?」


海海かいかいは悩んだ。

ここで回復したと言ってしまえばこの先に不安の種をまく事になるのではないかと思い少し嘘を交える事にした。


「一応病院で検査を受けまして日常生活には問題程度には回復をしました。ただ、野球を全力で行うには少し不安が残るとの見解ですね」


「そっそうなんですか、調べてくれてありがとうございます」


僕は少しだけ残念に思った。もし治せるのならスポーツ選手の役に立つのではないかと思ったからだ。

まあ、そんな力が簡単に使えるなら神様もビックリなんだけどね


海海かいかいはリョー様の態度を見ながら、心より本当にすまないと思ったがこれも教団の為と目を瞑るのだった。

それからイベントの大まかな詳細を説明を受けその日は終了したのだった。

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