第12話 12

12


ショッピングモール20周年記念イベントはその後、バーコードとえんぴつの二人に少しだけジャックされそうになったが司会の高橋ゆいかさんがしのぎ切ってイベントは終了したのだった。

僕達は途中から何を見させられているのか分からなかったが、目が離せなかったのは事実だった。

その後僕達はショッピングモールでご飯を食べる事になり、フードコートへと移動した。

僕達は思い思いの食事を購入して席に集まり食事をする事になった。その時に誰が僕の前に座るかを女性陣3人が少し揉めていたがそれは些細な事だ。結局正面にイブキ、隣がヨウコで遠藤えんどうミチコの順になった。


他愛ない話をしながら食事をしているとイブキが僕に話しかけて来た。


良太りょうた私のミートスパとても美味しいから一口食べてみてよ」


イブキはそう言いながら食べていたフォークにスパゲッティを少し丸めて僕へ差し出してきたのだ。

僕は関節キスと思ったがそれ以上に、友達の前でそれはないんじゃないかと思い口を開く。


「イブキ友達の前なんだからそう言う事はよした方がいいんじゃないか?」


「えっ別にいいんじゃない?私達恋人どうしだし」


その瞬間にイブキが二人の女子を見下すような目線を送る。すると対抗心を燃やしたのかヨウコが口を開く。


「私が頼んだカレーピラフ美味しいわよ。一口どう?」


ヨウコは食べていたスプーンにピラフを少し乗せて差し出してきた。

さらに遠藤えんどうミチコまでもが、カルボナーラをフォークに巻き付けて出してきたのだ。

当然僕は困惑して高木君に助けを求めたら、高木君は僕に耳打ちをして来た。


「こういう時は逆に全部受け入れてあげた方が優位に立てるよと」


僕は友達の高木君を信用して言葉を発する。


「それじゃあ順番に頂くね」


僕は公言通りに順番に口へと入れて行った。

女子達は僕が食べたフォークやスプーンを見つめると、ニンマリと口を緩めたがイブキだけは何故か僕を睨んでいたのだ。

僕はイブキを見ないようにしてなんとか食事を終えた。

そして僕達はショッピングモールを堪能してから帰る事になったのだが、予想通りイブキが僕の方に寄って来たが僕は高木君と逃げる様に立ち去ったのだった。

その後高木君とは漫画やアニメについてジュースを片手に語り合うのだった。


イベントが合った夜、父は何故か夜遅くに帰って来て母と少し言い合いをしていたけど、僕は聞こえない振りをして布団に潜るのだった。


*


インターネット掲示板スレッド


『若手お笑い芸人を応援するスレ★1227』


010 名もなきお笑い芸人


バーコードとえんぴつがイベントに出て来たぞ

旧(七転ななころ六起ろくおき ころんだままやんけ)

相変わらずの意味不明なコントw


ttp://www.バーコードとえんぴつ.kusai_futari_nioi_no_kinjitoo


011 名もなきお笑い芸人


イベントにシグナルスキャンと如月きさらぎれいも出ていたのか行きたかった


012 名もなきお笑い芸人


>>11

芸人を応援するスレだぞ


013 名もなきお笑い芸人


>>12

少しぐらいはいいのでは?


014 名もなきお笑い芸人


コントは相変わらずの臭いがテーマかよw


015 名もなきお笑い芸人


いつもじゃね?それで本当に臭いの?


016 名もなきお笑い芸人


口はわからないが体臭はかなりツンと来る匂いだぞ。イベントに行って花道を通った時に鼻に来たww


017 名もなきお笑い芸人


歩くだけで匂いをまき散らすとか公害の域に達しているな


018 名もなきお笑い芸人


一番消えそうな二人が残るなんて人生は分からないな


019 名もなきお笑い芸人


>>18

本当にそう思う。昔シグナルスキャンにガンを告知された芸人とは思えない


020 名もなきお笑い芸人


次の登場が楽しみだな


*


夏休み目前の週末に僕はイブキと共に宗教団体オクトパスへ来ていた。


今回は服と覆面が仕上がったのでその試着と、僕の能力についての細かな実験となった。

正直にこの実験と言うのはありがたいと思う。僕自身この能力がどこまで有効なのかを知りたいと思っていたからだ。僕は怪我をどの程度まで治す事が出来るのか楽しみだ。

そんな事を考えて居ると挨拶もそこそこに僕は採寸室へと一人で案内された。


採寸室には相変わらず胸元が大きく開いた女子が二人いて、その横にはマネキンが置いてあり覆面と洋服が掛かっていた。

覆面はずっぽりと頭の上から被るタイプで、絵で見たと同様に三国志に出て来る武将に似たような少しカッコいい覆面となっていて、口元に丸い穴が開いていたので聞く事にした。


「覆面の丸い穴はなんの為ですか?」


「長時間の時にこの穴からストローで水分を補給出来るようになっています」


女性がゆっくりとした口調で答えてくれて、僕はなる程と思った。

服の方は上下分かれているタイプで上下共に白を基調として、赤いラインが入っている感じのこれまたカッコいい仕上がりとなっていた。ただ、光に当てて見ると薄っすらとタコの文字が見えるのはご愛敬だろうか。僕はマネキンの全体をみた所で前へ進んだ。


採寸した前回と違い今回は肌着もあるとの事でトランクス一枚になり順番に着せてもらう事になった。二度目と言う事もあり羞恥心は余りなく服を脱ぐ事が出来た。

最初は白い肌着なのだがとてもツルツルとした肌触りの繊維だと思い聞いて見た。


「このツルツルの感覚はなんですか?」


「これは絹つまりシルクで編みこまれています。上着とズボンも同様に同じ素材のシルクとなっています」


僕はそれを聞いて『うわっこれめちゃくちゃ高いのでは?』と思ったが、僕が指定した訳ではないのでそう言う物だと思う事にした。


「ありがとう。それじゃあ着替えお願いします」


「かしこまりました」


肌着、ズボン、上着、サンダルの様な靴、ちなみに靴下はなく裸足で履くタイプらしい。そして最後に覆面を被った。

覆面も見た目ほど重くはなく目の部分はクリアになっていて外が良く見える様になっていた。

僕の服が着終わると同時に全身の鏡が僕の前に用意された。

鏡を見て僕は『三国志の武将と言うより昔の邪馬台国やまたいこくに出て来る男性みたいだ』と思った。

僕が鏡を見ていると声を掛けられた。


「着た感じはどうですか?問題ありそうな所はありますか?」


「いえ、今のところ特に問題はありません」


「そうですか、それでは海海かいかい様達にお披露目と行きましょう」


僕は部屋から出て外で待機していた女性に連れられてリビングルームへと戻って来た。

リビングルームにはイブキを始め、海海かいかい先生や幹部らしき数名が待機していた。

そして僕の姿を見て最初に声を掛けて来たのはイブキだ。


良太りょうた凄く似合っていてカッコいいよ」


「うむ、見た目も素晴らしい出来じゃ」


続いて海海かいかい先生も声を掛けて来た。その後幹部らしき人達も「いいんじゃないか」などの声を上げていた。

ちなみに幹部らしき人達は男女3名ずついて、全員赤い浴衣にタコの文字が入った服を着ている。

皆は僕の周りをぐるりと見渡すように見てから海海かいかい先生が声を掛けて来た。


「それでは席に座ってもらい話をしよう」


海海かいかい先生の言葉で全員が席に座り、僕も席に座り覆面を取った。

髪の毛が少し乱れたが対した問題ではなかった。

机の上には冷たいアイスコーヒーが出されたので僕は喉が渇いていたので直ぐに口を付けた。

僕が一息ついた所で話が始まった。


「今日はイブキから聞いていると思うが能力の検証を行いたいと思うが、その前に良太りょうた君を人前で呼ぶ時の愛称を決めたいと思う」


「愛称ですか?」


「覆面で顔を隠したのに名前を呼んだら意味がないからな」


「確かに」


そこからみんなが話に加わり名前の話になった。最初は神様の名前や動物をもじった名前が出て来てはいたが、どれもしっくりと来るものがなかった。そんな時にイブキがボソリと呟いた。


良太りょうたなんだから、リョー様でいいんじゃない?」


僕はイブキの言葉がスッと胸の中に入って行き口に出した。


「あっそれいいね。聞き間違える事なさそうだし」


すると集まって居た人達が全員口ずさむように「リョー様」と言い出した。皆、違和感の確認や言いにくい事はないかの確認をしていた。その後静かになり海海かいかい先生が声をあげた。


「これより良太りょうた君の事を『リョー様』と呼ぶように」と。


「かしこまりました」


何故か僕以外が全員言葉を発すると同時に頭を下げたのだった。僕は唖然としていたが直ぐに元のけんそんへと戻った。

次に声を上げたのはイブキだった。


良太りょうたじゃなくてリョー様」


イブキが言い間違えた所で僕が声を掛けた。


「イブキならどちらでもいいんじゃない?」


「ダメよ。学校ならともかくここで本名を言っていたら決めた意味がないでしょ」


「まっまあ確かにね。それじゃあリョー様に僕も慣れるよ」


「うん。頑張ってね」


次は能力を使う時の話題となった。

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