第9話 9


僕は自分の前に礼を言いながら土下座をした女性を見てビックリしてしまったが、直ぐに横に居た女性が土下座女性を立たせて部屋を後にしたところで、たこ海海かいかいが口を開いた。


良太りょうた君!実に素晴らしい力だ!直してもらった女性は感極まってしまったのだろう、気にする事はないぞ」


そう言うとたこ海海かいかいが拍手をし出すと、赤い浴衣にタコの文字が入った服を着た女性二人とイブキまでもが拍手をしだしたのだ。そして30秒程で拍手が終わり何事もなかったように又席へと戻った。


良太りょうた君ありがとう。君の力を見て十分に働けると確信をしたよ」


「あっありがとうございます」


「それでは早速アルバイトの詳細について詰めて行こうと思うがよろしいかね?」


僕はチラリとイブキを見ると頷いていたので答えた。


「お願いします」


「うむ。それではまず最初に身分がバレないようにとの事だが、傷を治す以上人と対面しなくてはならない。なので提案なのだが覆面を被ってはどうかと思う」


「覆面ですか?」


「ああ、イメージとしては覆面レスラーのようなものだが、あれでは肌に密着して暑いと思うので一から製作をしたいと思うのだがデザインを選んではもらえないかな?」


すると赤い浴衣にタコの文字が入った服を着た女性が仮面の絵が描かれた紙を数枚机の上に並べた。

一枚目はタコをモチーフにしたような絵で、子供が描いたような感じだ。

二枚目は悪魔なのか少し怖い感じの様な絵で、とても傷を治すような風には見えない感じだ。

三枚目は女性をモチーフにしたような感じの絵で、男の僕が被るのはどうかと思えた。

四枚目は宇宙映画に出てくるような仮面の絵で、これもイマイチと言った感じだ。

五枚目で僕の目が止まった。モチーフは昔の三国志の武将を現代風にアレンジしたような感じで、正直とてもカッコよく僕の目に写った。


「この五枚目が良いと思うんですがどうですか?」


僕は指を指しながら話す。


良太りょうた君が良いなら私は問題ないよ」


たこ海海かいかいが笑顔で答え決まったらしい。


「次に金銭面の話をしよう。イブキから聞いたのだがバイト代は銀行振り込みとかではない様にしてほしいとの事だけどあっているかな?」


「ええ、あまり親に知られたくないお金になると思うので」


「私共としても実はあまり現金を使う習慣がなくてね、それに関しては好都合と言うのが正直な話なんだよ」


「そうなんですか?」


「うむ、まず私からの提案なんだけどここまで来るのに電車は必須となると思うので、交通費として現金で千円は手渡しをしようと考えている。そして残りを特別なサイトで使えるネットポイントでの支払いとしたいのだけど一度見て貰えるかな?イブキ頼むよ」


イブキはスマホを出すと僕に見せて来た。


良太りょうた、タコショッピングモールと言うアプリは知ってる?」


「いや知らない。僕ネットショッピングはやった事がないからわからないよ」


「そうなら、私のを見てよ」


イブキはスマホを操作してタコショッピングモールのアプリを起動した。すると食品や家電など項目ごとにズラリと商品が並んでいた。僕はイブキからスマホを貸してもらい書籍の漫画等を検索して見た。正直に書店で買うより一割程度高い金額になっていたのでイブキに聞いて見た。


「イブキ、少し定価より高めなんだけどどうして?」


「あっこれは送料込みの値段になっていて、良太りょうただと家に商品を送るのはまずいでしょ?」


「うん」


「それでね、このアプリの商品は良太りょうたの家の近くのコンビニで受け取れるように出来るの。だから学校帰りにコンビニで商品を受け取って帰れば親には見つからないと思うよ」


僕は考えた。確かにそれなら商品を家に持って帰れるし、漫画なんかは押し入れに入れとけば見つかる事はないし、もしもなら借りたと言えるしな。だけど現金がいる時はどうするか聞く事にした。


「じゃあ現金が欲しい時はどうすれば?」


「とりあえずこのアプリからは現金の引き出しが出来ないから、私にメールでもくれれば学校なり外で渡す事は出来るよ」


イブキに金銭を握られている様でイマイチだと思ったけど、それほど現金が必要かと言われればいらないのが現状だ。欲しい物はネットショッピングで買える訳だし、現金だと帰りに購入するおやつ程度となる。


「なるほどね。とりあえずそれでやってみようかな」


「うん、そうしなよ」


僕達の会話を見ていたたこ海海かいかいが口を開く。


「話は纏まった様で何よりだ。それから今から良太りょうた君には体の寸法測定をしてもらう。制服を作成するとでも思って貰えればいいので今から移動をお願い出来るかな?」


「はい、わかりました」


僕が返事をすると赤い浴衣にタコの文字が入った服を着た女性が僕を別の部屋に案内してくれた。

僕は女性の後について廊下を歩くと一つの扉の前で止まった。女性が扉を開けると中には中央に椅子が置いてあり、部屋の奥にはなぜか簡易ベッドが設置していて、壁際には布やら服などが飾ってある部屋で中には女性が二人いた。

二人の女性は赤い浴衣にタコの文字が入った服を着ているのだが胸元が大きく開いた服を着ているのだ。僕は少し動揺したが別に水着ほど胸元が開いている訳ではないので部屋に入ると扉が閉められた。

案内してくれた女性はどうも扉の外で待機の様子だ。


「ようこそ、さあ中央の椅子へお座りください」


僕は案内されるままに椅子に座った。


「今から採寸を始めさせて頂きます。最初は頭から計らせてもらいますね」


女性はメジャーを持って僕の頭を計り始めたのだが、開けた胸元が目の前に来るのだ。16歳の高校生にとってはとても強烈な体験だ。しかも大人の女性特有の匂いがする感じがする。僕はあくまでも採寸をしているので深呼吸をしてなんとか落ち着けた。


「頭の採寸終わりましたので、足のサイズの採寸に入りますので靴下を脱がさせて頂きます」


女性は僕の前に膝まづくと片足を自分の太股の上に置き靴と靴下を脱がして採寸し出した。上から女性を見ているが胸の谷間がより一層強調され僕は再度深呼吸を強いられた。そして両足が終わると声を掛けて来た。


「次は服の採寸に入りたいと思いますので服を脱いで下着になってもらっていいですか?」


僕の頭は一瞬フリーズした。女性の前で下着に?マジかよと思ったが嫌だと逃げる訳にもいかずに答えた。


「わかりました」と。


すると直ぐに女性が上半身の服を脱ぐのを手伝ってくれた。僕は薄手の肌シャツ一枚になった所で声を掛けて来た。


「立って頂けますかと」


僕は深呼吸して心を落ち着けてから立ち上がった。立ち上がると直ぐに女性は僕のズボンを脱がして来て、僕は下着のトランクス一枚になってしまった。それから直ぐに採寸が始まった。

最初は上半身からで一人の女性が計り一人の女性が記入すると言った流れである。肩、腕、体と行き次は下半身へと移動して行った。

だがこの採寸は何故だか異様に僕の体に触れるような気がする。

僕は健全な16歳の男の子だ。

大事な部分が反応しないように深呼吸をして耐えた。

お腹、腰回り、お尻回り、右足、左足…あっヤバイ少し反応したような…僕は目をつむり顔を上に向けて平常心と思いながら素数を数えたのだった。


-


僕は採寸を終えてイブキ達がいるリビングへと戻って来た。


「あっお帰り。採寸はどうだった?」


イブキが声を掛けて来た。


「ああ、普通だったよ」


イブキは何か僕の顔色で思う事があったのだが言葉には出さなかった。

イブキは感が鋭いので何かを感じ取ったようだったが、ここは我慢したようだった。

それから僕はイブキの指示通りにタコショッピングモールのアプリをスマホに入れた。そしてそのキーコードを教えると赤い浴衣にタコの文字が入った服を着た女性が端末を操作していた。


「登録が完了しました」


女性が告げると同時にイブキが口を開いた。


良太りょうた、アプリを再起動して見て」


僕は言われた通りにアプリを再起動すると、タコショッピングモールのアプリ内には5千ポイントが表示されていたのだった。

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