第8話 8
8
バイトの話をした金曜日に学校でイブキより話が合った。
「
「そのバイトって本当に大丈夫なやつ?」
「身バレとかそう言う事?」
「それもあるけど僕の力はその医療に関わってくるじゃない?それも含めて」
「
僕はイブキの話を聞いて話すだけなら問題ないだろうと思い口を開いた。
「わかった行くよ。それで何処で待ち合わせをする?」
そして僕は週末にイブキと出かける事になった。
*
それにイブキも参加して確認をしている時に学校で見た顔を見つけたのだ。
髪の毛は薄っすらと茶色に染めていて、目が出る様に前髪を可愛らしいタコのピン止めで止めている女、
「なんであんたがここにいるのよ!」
イブキが唐突に
彼女は学校の雰囲気とガラリと変わり挑戦的な目でイブキを見ると口を開いた。
「あれ?誰かと思えば
「ぜっ
「ふんっ!」
イブキは両手で自分の胸を押さえながら答える。
「こっこれから大きくなるのよ。ぜっ
イブキの言葉の後半は小さく言いよどむ。
「その歳でBとはお粗末様ね。そんな胸で
「むっ胸の大きさと愛は関係ないと…思う」
「確かに愛と胸の
「くっ!そっそんな事より何故私と言う彼女がいるのに
「
「ひっ人の彼氏で発情してるんじゃないわよ!」
「へぇ~イブキは
「こっこの…」
「やめんか!」
イブキが言い返そうとした時に横から声がして見て見れば、
「もっ申し訳ありません」
イブキと
「
「はい」
気まずくなったイブキと
*
週末の日曜日、僕は最寄の駅でイブキと待ち合わせをした。
今日のイブキの格好は以前家に着て来た水色ではなく赤いワンピースを着ていた。
僕はここでも父の言葉を思い出しイブキに声を掛ける。
「おはようイブキ。服とても似合っていて可愛いよ」
「あっありがとう」
イブキは少し頬を赤らめながら答え、僕達は地下鉄に乗って移動する事になった。
イブキの話では地下鉄を降りてから15分程歩いた所にその建物はあるらしい。詳細を聞いたけどイブキは行けば分かるとしか教えてくれなかったが、僕も何処へ行くか好奇心で胸が高鳴っていた。
そして地下鉄を降りて15分程あるくと林に入ろうとする所に門があった。
門の周りは塀で囲まれていて塀の上にはモリのように突き出した鉄柵があるのだ。僕はそれを見てイブキに声を掛けた。
「ねぇイブキここヤバイ所じゃないよね」
「全然ヤバくないわよ。見た目だけよ」
イブキは平然と答える。
「だけど門の所にも監視カメラあるし大丈夫なの?」
「お金持ちの家には監視カメラがあるって普通じゃないの?」
僕もイブキに言われて『確かに』と思った。僕の能力に対してお金を払うのだから貧乏には出来ない芸当なので僕は覚悟を決めた。
イブキが門のチャイムをならすと返答があり「イブキです」と答えると、門の鍵が解錠されるような音がして自動で扉が開いた。
「さあ、
「うっうん」
僕はイブキの後に付いて門を通り抜け通路を歩く。下は石畳みになっていてお洒落な感じだ。少し歩くと大きな屋敷が見えて来た。そして僕達が屋敷に近づくと屋敷の扉が開き赤い浴衣にタコの文字が入った服を着た綺麗な女性が出て来た。そして僕達にいきなり頭を下げ口を開いた。
「ようこそおいで下さいました」
僕は何が何だか分からなかったがイブキが返答をした。
「ありがとう」
イブキはぼくへ振り返り言葉を掛ける。
「さあ、
僕は黙って頷きイブキの後に続いた。
屋敷の中は通路になっていて左右に部屋がいくつもある感じで、奥に行きリビングらしき大きな部屋に行くとそこには頭頂部が剥げた初老の男性と、扉を開けてくれた人と同様に赤い浴衣にタコの文字が入った服を着た綺麗な女性が2名立っていた。
僕達は挨拶は後にとそのままテーブルの席へと座らされた。
そして最初に口を開いたのは初老の男性だ。
「初めまして宗教団体オクトパス教祖
初老の男性は名乗った後に頭を下げて顔を上げるとにこやかな笑顔を見せて来た。僕は何故僕に頭を下げるのか分からなかったが僕も挨拶をした。
「名前は鈴木
僕も習って頭を下げた。僕は頭を下げながらとんでもない所に来てしまったと思った。宗教団体と言えば多額の寄付をせまられたり、入信をさせられたりとすると習って来たからだ。僕は焦りながらイブキを見たがイブキは平然としていた。イブキが僕の様子を見て直ぐに声を掛けて来た。
「
イブキの言う通り僕はまだ16歳の高校一年生だ。僕に宗教の事を言われても困るのでイブキを信用する事にした。
「わかったよイブキ。少し宗教団体と言われてビックリしたけどイブキを信用するよ」
「ありがとう」
イブキは笑顔で答えた。それと同時に
「
「それじゃあいきなりで悪いんだが、アルバイトの元となる
「それは良いですけど怪我を負われた方はいるのですか?」
「ああ、丁度食事の準備をしていて包丁で指を切った女性がいるのでお願い出来るかな?」
「ええ、構いませんよ」
話が終わると同時に扉が開き二人の女性が入って来た。二人の女性共に赤い浴衣にタコの文字が入った服を着ているのだが、一人の女性は目に黒い目隠しをしていて左手の指にはバンドエイドが巻かれていた。僕がビックリしていると
「目を隠している女性は目に少し障害があってね、見せないようにしているだけなので心配はいらんよ」
僕は目が不自由なのに料理とは大変なんだなと思った。
女性が近くに来たので僕は席を立ち女性二人の前に立った。
「それでは
僕は女性の左指を見ると既にバンドエイドが剥がしてあった。指には包丁で切ったであろう深い切り傷があった。血は止まっている事から数日前に切った物だと思った。僕は声を掛けながら女性の左指を掴んだ。
「それでは今から直しますので動かないで下さい」
女性は頷くのみだった。僕はいつもの言葉を紡ぐ。
「ちちんぷいぷい、ちちんぷいぷい、痛いの痛いの飛んで行け~」
僕の体から何かが抜けるような感覚があり、僕は女性の左指から手を離すと見る見ると傷が塞がって行き、傷があった事さえもわからなくなった。
「さあ、治りましたよ」
女性は僕の言葉を聞き右手で左の指を触り傷がない事を確認した。
「あっありがとうございます。
女性はそう言うと僕の前に土下座をしたのだった。
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