第7話 7


昼休憩の校舎裏にて遠藤えんどうさんより本と言う名のラブレターを僕は受け取った。

遠藤えんどうさんは僕にラブレターを手渡すと足早に僕の元を去って行った。

僕は遠藤えんどうさんの後ろ姿を眺めて姿が見えなくなったので本を開いて見た。

そこには中学で出会った時からの事がびっしりと書いてあった。それはまるで呪いの言葉の様に延々と綴られているのだ。僕は本を少し読んで完璧にこれストーカーじゃね?と思ったが、遠藤えんどうさん事態は話していて変とは思えなかったので、好きすぎて僕への気持ちだけが変になり過ぎたのかもしれないと思った。

しかし僕はこの本と言うなのラブレターをどうしようかと思った。教室にそのまま持って帰ればイブキに見つかりトラブル発生となるからだ。そこで僕は名案を思い付いた。


高校生になり同じクラスで初めて出来た男子友達の|高木たかぎ《たかぎ》君に預かってもらおうと。

僕は休み時間だけ使用を許されている携帯電話をポケットから取り出し高木たかぎ君へとメッセージを送った。

高木たかぎ君から直ぐに返事が来て高木たかぎ君は鞄を持って校舎入り口まで来てくれた。


「ありがとう高木たかぎ君、変な事お願いしてごめんね」


「何言っているんだ僕達友達でしょ。こんな事ぐらいでお礼なんていいよ」


高木たかぎ君はそう言いながら笑顔を見せてくれた。

高木たかぎ君の見た目は僕と良く似たような感じで普通な感じだ。まあ、少し高木たかぎ君の方がカッコイイかもしれないけど。身長や体重も僕に似ている事は確かだ。さらに、趣味が共通しているのだ。

最初の何気ない会話でアニメや漫画を愛している事を知って僕達は直ぐに友達になった。


「それじゃ、この本を帰りまで預かって貰っていい?」


「OK。じゃあ預かるね」


高木たかぎ君は持って来た鞄にラブレターと言う名の本を入れた。そして一緒に教室へと帰った。

教室に帰ると直ぐにイブキが僕の元へやってきて口を開いた。


良太りょうた、やけに長いトイレだったわね。それになんで高木たかぎ君と一緒なのよ」


イブキの鋭い視線と言葉攻めが始まった。


「トイレを出たら偶然に高木たかぎ君に会っただけだよ」


イブキがジロリと高木たかぎ君を見て口を開く。


「なんで高木たかぎ君は鞄を持って歩いているの?」


ターゲットを高木たかぎ君に変えたみたいだ。


「僕はね鞄を持って歩くのが趣味なんだ。イブキさんこそ鈴木君への当たりが少し強すぎない?」


イブキは図星を言われたのか少しダメージが入ったみたいだ。


「まっまあいいわ。良太りょうた早くご飯食べましょ。待っていてお腹ペコペコよ」


「ああ、そうだね。早くご飯を食べよう」


僕は高木たかぎ君に両手を合わせてありがとうのポーズをサッとしてイブキの後に続いた。


-


そして学校の帰り際に僕はそっと高木たかぎ君より預かってもらっていた、本と言う名のラブレターを受け取った。

僕はなんとかイブキにバレずに自宅へと持ち帰る事が出来た。

しかしとある休みの日にイブキが僕の家に遊びに来て、遠藤えんどうさんから貰った本と言う名のラブレターを発見された事は些細な事だ。

その時にイブキは「あの女~」と怨嗟えんさの声をあげていたが、僕は聞かなかった事にした。


-


ある日僕は友達の高木たかぎ君と夏休みのアルバイトについて話していた。


「鈴木君は夏休みアルバイトとかするの?」


「やりたいけど校則で禁止されているから大ぴらには出来ないよね」


「でも鈴木君の家何か稼業やっているって言っていたから家なら問題ないじゃない?」


「うん、出来ない事はないけど正直に親とは一緒に働きたくはないかな」


「やっぱり親と一緒は恥ずかしい?」


「まあ、そんな感じかな」


僕達が会話をしている時に何気ない視線を感じたがすぐに何かある訳ではなかったので気のせいかと思っていたが、その後のイブキの言葉で視線は彼女だったかと思った。


「ねぇ良太りょうた、この前アルバイトについて話していなかった?」


「ああ、話していたけどそれがどうしたの?」


するとイブキが周りを警戒するようにしてから、僕の耳元へそっと顔を寄せて小声で話してきた。

僕はイブキのいきなりの行動でいつも苦手としているイブキだが、やはり女子なのか特有の甘い匂いがして少しだけドキリとしたが、イブキの話す内容で悩む事になった。


「実は良太りょうたのあのを使えるバイトがあるんだけどやらない?」と。


僕はあの能力は極力隠したいと思っている。自分でも思うがあの能力の力は凄いものだと、大人になり益々ますます思うよになって来た。現在あの能力を知っているのは僕とイブキだけなのも大きい。僕は考えたいのでイブキに伝えた。


「その話放課後まで待ってもらっていい?」


「うん、わかった」


僕はそれから思考した。

何がダメで何が良いのかを…能力を使う事態は正直問題ない。ダメな事は身分が明るみに出る事、それ以外にないと思った。僕はその事を放課後イブキに伝える事にし、学校の授業へと集中するのであった。


放課後僕はイブキへと思う事を伝えた。


「能力を使ってのバイトだけど条件があるんだ」


イブキが僕の条件の言葉で真剣な顔つきになり頷いた。


「まず第一に絶対に僕だとバレないようにしてほしい。次にバイト代は銀行振り込みとかではない様にしてほしい。これは親に知られたくお金になるから。大きく言えば二つかな、細かい事はあるけどそれは追々で」


イブキは少し考えた末に声を出した。


「わかったわ。一度話をしてみるから数日後に返事をするね。後、今週末の予定は空いてる?」


いきなりバイトの話から週末予定の話に変わり僕は又デートのお誘いかなと思った。


「空いてるよ、特に用事ないから」


「わかった、一応空けておいてね」


イブキはそれだけ言うと部活へと足を運んだ。イブキは高校に入ってからも中学同様に陸上部に入った。何が走るのが楽しいのか僕には分からないが、走っているイブキを見ると生き生きとしているのがわかる位の笑顔だ。僕もあんなに打ち込める物があれば少しは人生が変わるのかなと思いながら自宅へと自転車を漕ぎだしたのだった。


*


イブキが良太りょうたへとバイトの話をした日の夜、宗教団体オクトパスの居城では、教祖 たこ海海かいかいを始めとした複数の幹部での話し合いがもたれていた。

議題はどのように良太りょうたの要望を叶えて説得をするかである。

イブキは学業がある為にその場での出席はしていないが、自宅からリモートで携帯電話ごしに話を聞き質問があれば答える形式を取っていた。


幹部A「まず第一に身分が表沙汰にならないようにですが、シグナルスキャンが実行したように仮面等で顔を隠すのが一番確実かと思われます」


幹部B「どの様な仮面にするんだね?横から写真でも撮られたらわかるんじゃないかね?」


幹部C「それなら仮面じゃなくて覆面にしたらどうかね?」


幹部D「覆面はいい案だけど、どのような覆面が理想になる?教団を表に出すようなタコの仮面では世間的に駄目だろう」


しばしの沈黙の後に教祖 たこ海海かいかいが口を開いた。


「それならば数点案を出して良太りょうたに選ばせたらどうだろうか」


幹部ABCD「素晴らしい案です」


イブキ「私もその提案で賛成です」


イブキも電話越しに賛成の意を示す。


幹部A「案の選定は私共で進めますので次の議題へと移ります。次は報酬についてです。銀行振り込み以外の方法での報酬受取を希望との事です」


幹部B「それなら今運用してるアプリでのポイント還元はどうだろう」


幹部C「タコショッピングモールアプリか、それはいいね」


幹部D「私も賛成。現金で必要な場合はそれごとに渡せばいいのでは?」


イブキ「現金の要望とかは私が仲介するから問題なく行けます」


イブキも電話越しに話す。


たこ海海かいかい「私もその案に賛成だ。その方法なら良太りょうたが何を購入し何を欲しているのか分かるからな」


幹部A「案に異議のある者は」


沈黙が全員の肯定を示した。


話し合いが一区切りした所でたこ海海かいかいが口を開く。


「それでは今週末に神託の御子みこである良太りょうた様をこちらへ招く事とする。皆の者準備を万端に揃えよ」


幹部全員が頭を下げ一斉に声をあげる。


「はい、かしこまりました」と。


何も知らない良太りょうたはどんどんと策略にハマって行くのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る