第5話 5


俺の名前は鈴木健一。病気占いを生業としていてシグナルスキャンと呼ばれている。

日本一周の旅から帰ってきて、あっと言う間にゆうこと結婚して気づいたら一児の父親になっていた。

結婚生活は順調で特に問題はなかったが、問題があるとすれば病気占いのスピードに対する儲けが問題になっていた。


今までのやり方は俺が病気占いを行い用紙に記入と言うながれだったが、これでは人数がこなせず場所を借りた場合の利益率が大幅に下がる事が問題だった。俺とゆうこは何処が問題かを出し合って結論を出した。

簡単な事で俺は占うだけにして記入する人を横に置けば良い事に気づいた。言われて見れば簡単な事だがやっている本人からすれば灯台下暗しと言った感じだ。一度解決策が分かればどんどんと応用を聞かせて行き俺達は究極の占い兵器を完成させた。

名付けて『動くシグナルスキャン』だ。


名前が間抜けのような感じだが、効果は絶大だ。一人当たり15秒で一分で4人、一時間で240人だ。

台車に俺と助手二人が乗り全員インカムを装着する。俺は椅子に座って右手を置く台に右手を置けばセット完了だ。

後は、客を上手い事配置し台車を押してもらえばどんどんと占いをこなしていく感じだ。工場の流れ作業と思われるかもしれないが、大阪などの大きい都市に営業に行った場合日当たり千人くらいは占いを行わないと苦情がくるのだ。

最初は苦情を受け入れて謝罪していたが、このままでは駄目だと言う事での導入だ。

俺は今日も動くシグナルスキャンに乗り淡々と病気占いを行うのだった。


*


インターネット掲示板スレッド


『シグナルスキャンを応援するスレ★1219』


111 名もなきスキャン


今年もシグナルスキャンの健康診断終わった


112 名もなきスキャン


どこ住み?


113 名もなきスキャン


東京


114 名もなきスキャン


あの行列に並ぶとか忍耐凄いな


115 名もなきスキャン


そうでもない、整理券まで3時間、占い開始まで3時間待ち程度だ


116 名もなきスキャン


どのくらいのペースで占いしているんだ?


117 名もなきスキャン


一人15秒で一分4人時間240人


118 名もなきスキャン


速すぎワロタ


119 名もなきスキャン


>>117

どうやって占っているんだ?


120 名もなきスキャン


シグナルスキャンと占いを記入する女性二人が台車に乗って動きながら占ってる


121 名もなきスキャン


流れ作業かよ


122 名もなきスキャン


そうやらないと人数さばけない


123 名もなきスキャン


一人3千円で時間72万か…やっぱり歌手の方が儲かるのか


124 名もなきスキャン


>>123

当たり前だろ、歌手と占い同じにするな


125 名もなきスキャン


東京は日当たり1500人までだから早い者勝ちだった


126 名もなきスキャン


何処でやったんだ?


127 名もなきスキャン


体育館が会場だった、バレーボールとかやるところ


128 名もなきスキャン


体育館借りると高いから儲けなさそう


129 名もなきスキャン


今競技大会やってないから安いのでは?


130 名もなきスキャン


>>128

時間2.5万だったから一日で30万位


131 名もなきスキャン


シグナルスキャンは日当たり400万か…うらやま


*


春になり僕は中学三年生になった。

今年は高校への受験があり気を緩めないで行こうと思い指定されたクラスへと足を踏み入れた。

2年の時と同じ顔触れはチラホラと見えるが、他は初めての人ばかりで少し心が躍った。そして僕が席に着くと同時に声を掛けられた。

背中付近まである黒髪で顔は中三とは思えないように大人びていて、言いにくいのだが女性としてのスタイルが良いのが服の上から分かってしまう女子だ。


「初めましてだよね?鈴木君」


「あっそうだね。君は誰?」


「私は橋爪はしづめ ヨウコ。今の生徒会長をしているけど見た事なかった?」


僕は全校集会とかを思い出していたが、ほとんど目を閉じていたので記憶がない。


「ごめん、覚えてない」


「まあいいわ、どうせ6月に私は生徒会が終わるのだから。これからよろしくね」


「ああ、よろしく。でも、なんで僕に声を掛けたの?」


僕は気になり聞いて見た。


「私同じクラスになって初めての人には全員声を掛ける主義でね、一期一会って言葉が好きで大事にしているの」


「そっそうなんだ」


僕は後で一期一会の言葉の意味を調べようと思った。

僕の言葉が終わると橋爪はしづめさんは次の人へと声を掛けて回っていた。

僕は彼女を見て凄い行動力だなと関心しつつ、男の性なのか彼女の体を思わず見つめてしまった。その時に耳に痛みが走った。


「どこ見てるのよ」


そこには目をつり上げて僕の耳を引っ張るイブキの姿があった。


「痛い、耳が痛いから止めてよ」


イブキは耳から手を離して僕の前に立った。


「目を離すと直ぐに他の女へ目線を向けるんだから」


「向けてないよ(嘘だけど)。それよりなんでイブキがこのクラスに居るの?」


確かイブキは二クラス隣のはず。


「様子を見に来ただけよ。そしたらこう言う状態だったの」


目を細くして僕を見つめるイブキ。

僕はサッと目線を反らして窓の外を見ながら口を開く。


「今年も桜が綺麗だね。イブキとお花見でも行きたいな」


「ほっほんとに?」


「もちろん。嘘はないよ(しょうがないからね)」


僕もイブキの扱いには慣れたものだ。


「じゃあ、今度の日曜日に行こうね」


「了解、空けとくね。そろそろ先生来るからイブキもクラスに帰った方がいいよ」


「わかった」


イブキは足早に教室を出て行った。

僕はその後ろ姿を見てはぁ~とため息をついたのだった。

ちなみに日曜日は天が味方したのか生憎あいにくの雨となり、お花見は中止になってイブキの機嫌が悪くなったのはその後のお話。


*


私の名前はイブキ。

今日は教祖 たこ海海かいかい様に中学三年に上がった報告に宗教団体オクトパスに来た。

海海かいかい先生の部屋の前に来て扉をノックしようとしたけど、中から話声が聞こえたのでしばらく待つことにした。

私が廊下で待っていると一人の女性が扉から出て来た。

私はその女性を見た瞬間に教室での事を思い出し声に出した。


橋爪はしづめ ヨウコ。なんであなたがここにいるのよ」


ヨウコは不敵な笑みを浮かべながら答える。


「私もオクトパスの一員であると同時に良太りょうた様を支える一人よ」


「支えるですって!?寝言は寝てから言ったらどう?」


「寝言ではないわ。あなたこそ、その貧弱な体で良太りょうた様を誘惑するなんて身の程知らずも良いところね」


ヨウコは目踏みするようにイブキの体を見る。

イブキは胸の当たりを両手で隠しながら反論する。


「私は今から成長するのよ!大きなお世話よ!」


「今からってもう15歳よ?手遅れにならないと良いわね」


ヨウコはそれだけ言うと笑いながら歩いて行った。

イブキはハラワタが煮えくりかえりそうになったが、心を落ち着けて扉をノックして部屋に入った。

部屋に入るなり海海かいかいに声を掛けられた。


「外で話声が聞こえたけどイブキだったか。もしかしてヨウコともめていたのか?」


「いいえ…あっこんにちは海海かいかい先生」


「まあ良い、座れイブキ」


「はい、失礼します」


海海かいかいとイブキは対面して座り話を始めた。


「最初に聞きたいのですが、橋爪はしづめ ヨウコも良太りょうたの監視役だったんですね」


「ああ、そうだとも。後、遠藤えんどう ミチコも監視役だぞ」


イブキはメガネ女子の事を思い出す。確か2年の時に良太りょうたの隣に座っていた女かと。


海海かいかい先生、どうして早く教えてくれなかったんですか?」


「教える必要が無いと思ったからだよ。別にイブキが知らなくてもいずれこのような形で分かれば十分なのではないのかね?」


まさしく海海かいかいの言う事は正論だ。


「確かにそうかもしれませんが、知っていれば対立とかしなくてもいいと思って…」


海海かいかいは一呼吸おいてから話し出す。


「イブキよ、お前達で良太りょうたの取り合い合戦をしている訳ではないぞ。彼が危害を加えられないように、さらに彼に気に入られるようにしているだけだぞ。勘違いしては駄目だぞ」


「はい、気を付けます」


「うむ、分かれば良い。それで今日は報告で良かったかな?」


「はい」


その後イブキは海海かいかいへ出来事を報告するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る