第12話 「闇の痕跡」
「優しく見える人でも、心を許しちゃダメだよ。だって、もしかしたら悪人かもしれないんだから」と少女は男にニコニコと言った。
男は驚きながらも、彼女の言葉を深く考え込んだ。
確かに外見だけで人の本性を見抜くことはできないということは幾度となく思い知らされてきた。
しかし、こんなに幼い子が、なぜ今?
驚き目が泳いでいたがふと、目に入った。
「君の腕のあざと、私の腕のあざは同じ形をしているね。珍しい」
男は少女と自分の体の同じ位置にあざがあることに気付いた。
しかも目を凝らせば少女の腕と自分の腕のあざが同じ形をしているではないか。
「そうね、偶然ってあるのね。先生」
少女は微笑みながら男性に近づき、彼の手を取りました。「私たちはつながっているのかもしれない。私たちが探している真実に向かって、一緒に進んでいきましょう」
男はどきりとして、少女に掴まれた腕をパッと払った。
「先生?」
「あ…」
「どうしたの?」
―――こわい。
男は少女蛇のような目に恐怖を感じた。
8歳の幼い少女が、大人の女性のように感じたのだ。
女というものは怖いものだ。幼い頃から女なのかーーー。
誰かの台詞だったのか、小説の一節だったのか、男の脳裏に響いた。
「大丈夫?」
少女が男の目を見つめる。
男は少女の言葉に心が揺れ動くのを感じた。
彼女との出会いや夢の中での共感を考えると、彼女が赭坂の謎に関わる重要な存在なのかもしれないと感じたのだ。
「君…」
「先生、私みたいアニメがあるから家に帰ってもいい?」
「あ、ごめんごめん」
男はハッとした。
これが悍ましい男のサガなのではないかと悟ったのである。
目の前にいる年端もいかない少女が大人の女性に見える。
そんなはずはない。少女は無垢なのさ。
悍ましい血が自分の中に流れているのを男が感じた瞬間であった。
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