第3話 「謎の少女」

男は新しい生活にも慣れ、赭坂の謎について調査を進めていた。



ある日、男のもとに一人の少女が訪れた。


“診療所”とは名ばかりの自宅の空き部屋とお勝手扉。


扉をノックする音に気づいた男がドアを開けると、そこには小さな少女が立っていた。



彼女は見た目が八歳程度で、黒目がちの大きな瞳と長いまつ毛を持つ、愛らしい姿をしていた。


「こんにちは、先生。私、見てもらいたいことがあるんです」と少女が言った。


男は驚きながらも、少女を中に招き入れた。男は少女に席を勧めながら、興味津々で少女の話を聞いた。


最初、少女は「もう少し成長したい」だとか「いつになったら大人になるの?」とか、子どもらしく愛らしい質問を繰り広げた。

そうして、たわいない会話を交えながら男と少女が話していると、少女が緊張しながら、言葉を選び自分の体験を語り始めた。


「先生、私、坂が燃えて見えるんです。真っ赤に…燃えて見えるんです。毎晩、窓から見えるんですけど、なんだか不思議なんです」


男は驚きを隠せなかった。彼は火の坂についての情報を探し求めていたが、その謎を解く手がかりをこの幼い少女が持っているとは思ってもみなかった。


少女は続けた。

「でも、私、村の人たちには話せない。みんな、燃える坂…坂で火が燃えているような、火の坂については避けて話すの。だから、先生に助けてもらいたいんです」


男は少女の言葉に深く考え込んだ。

男は火の坂の謎を解くために村の人々と交流していたが、村の人々にどうどうとその秘密を明かすことはできなかった。


「わかりました。私が助けられる範囲で、あなたの力になります。でも、あなたも私に協力してほしいことがあるなら、遠慮せずに言ってください」と男は答えた。


少女はほっとしたように微笑みながら頷き、男に火の坂の観察記録や不思議な現象についての情報を提供した。彼女は毎晩、窓から見える火の坂についての観察記録をつけていたのだ。


男は感謝の気持ちでいっぱいになりながら、少女からの情報を受け取った。男はさらに火の坂の謎を解く手がかりを見つけたいと考えた。


翌日男は少女が自分の診察室に訪問してくる夕方頃、一緒に丘の上に立ち、火の坂の方向を見つめた。


「毎晩、この方向から奇妙な光が見えるんです。ちょうど夕日が沈む時間帯に現れるよ」と少女は教えた。


男と少女は日没の時間帯になるのを待ち、火の坂の方向へと目を凝らした。

そして、夕日が山々に沈み、光が坂の上に差し込むと、坂が燃えるように赤く染まった。


男性は息をのむほど美しい光景に感動した。しかし、彼は何か特別なものを見逃している気がしてならなかった。


「―――この赤い光には何か意味があるのかもしれない。もしかしたら、その光が火の坂の謎の鍵かもしれない」と男が言った。


少女は考え込んだ後、小さく頷いた。

「そう。でも、その先に何が待っているのか、まだわからない」


男は大人のような眼差しを燃える坂に向ける少女の言葉に同意の意で頷いた。

「私は火の坂の謎を解くため、その光が出現する時間帯や周辺の現象を観察し、引き続き可能な限りの情報を収集することにします。あなたも、何かわかったらでいいです。私に教えてください」



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