第30話 新たな旅立ち

ーー 新たな仲間


私は再び世界を巡る旅に出ることにした。

先ずは王国の国王に許可を貰いに向かう、すると国王陛下より先にスイフト王妃が現れ

「セシル様の新たな旅立ちの無事とその威光を十分に振るわれる事を願って、私よりこれを差し上げますわ。」

と言いながら何やら大きな荷物を運ばせてきた。

なんだろうと思い

「見ても良い?」

と声をかけ頷くスイフト王妃を確認して荷物を開けると、そこには

・純白の戦乙女の装備

・純白の剣・槍・弓

・純白の鞍

が納められていた。

「これは全く凄いですね、如何にも神々しくも美しい品々です。誠にありがとうございます。」

と頭を下げると

「頭をお上げください、セシル様に頭を下げさせるものはこの世界には存在しません。これはそんなセシル様の存在を遠くからでも分からせる衣装であります。ご存分にお使いください。」

と言いながら陛下の元へ案内してくれた。


「陛下、私はこれより今一度この世界を巡ってきたいと思っています。王国の貴族として領地を不在にする事をお許しください。」

と頭を下げると

「セシル殿、貴方は我が王国の1貴族ではなく、この世界の1人であります。故にいついかなる時でも貴方のしたいように行動してください。私達はその手助けをするだけです。」

と答えてくれた。

「ありがとうございます。留守中のことはあの兄妹に任せておりますので、何かありましたら彼らに。」

と答えて王の前を辞した。


ー 同行者選び


王城を後にして私は今回の旅の同行者選びに取り掛かった。

私の他はタロウよクロは確定、元女神の五指のスメルとカレンは問題ない。

大商会となりつつあるジャインの商会に立ち寄り必要な物を注文する。

すると警護をしていた騎士のレイが

「女神の五指の後輩に「女神の片腕」と言うパーティーがおります、この者達をお供に加えてください。」

と推薦してきた、私は

「良いね、私の屋敷に来るように連絡しておいてくださる。」

と答えて後の人選を考えながら王都の屋敷に戻った。


王都にも屋敷を構えたのだが、あまり此処に立ち寄ることは少なかった。

それでもそれなりの人を雇っていなければならないのが貴族の辛いところ。

「おかえりなさいませ、ご主人様」

屋敷に着くなり出迎えを受けながら私は広間にて寛ぐ。


そこに珍しい人が訪れる。

「お久しぶりです、使徒様。」

おっとりとした口調であるがなかなかの曲者、シスターメイだ。

「珍しい来客ですわ。お元気でしたか?」

と問えば

「はい息災にしておりました。この度再度の旅路と天啓を受けて、供のものを連れてきました。」

と言いながらシスターメイの後ろに控えていた、人族のシスターが前に出て

「使徒セシル様、初めまして女神教のシスター アンと申します。この度の旅路の供の1人にお加え下さい。」

と頭を下げた。

「良いわよ、で何が出来るの?」

「はい、少々癒しと守りが出来ますので、足手纏いにはならないかと。」

と答えるシスター アンの横で静かに頷くシスターメイ。

「分かったわ。宜しくね。」

と答えておよその出発の日時を教えて分かれた。


ー 出発の朝


私の作り上げた特別仕様の馬車2台に魔導馬がそれぞれに2頭(?)それと単独の魔導馬4頭が出発の時を待っていた。


当然馬車は空間魔法がこれでもかと使われていたので、一台でも十分だったのだが何か大勢を乗せる可能性も考えての準備だ。

それぞれに寝室や調理場それにおトイレ・風呂を完備しているので屋敷が移動するようなものだ。

同行者には当然御者的な操縦者と調理人や侍女メイドまでいる。


冒険者の女神の片腕は、女性ばかり5人のパーティーでAランクの実力者と聞いた。

これにタロウにクロとスルメとカレンそれにシスターアンが加わり総勢20名。


皆に見送られて王都を出発した私達は、南に進路をとった。


ーー 未開の地のその向こうに


スーザン王国の南側は、穀倉地帯が存在するがその先には別の魔の森があり、その森の向こうは未開の地と呼ばれていた。


今回はその森の先に向かうのが目的だ、私の想像が当たればそこには此処と同じような人(?)の国があると思ってるの。


馬車は魔の森に入ってもその速度を落とすことはない、大型の魔物が跋扈する森だ馬車が通りほどの獣道はそこらじゅうにあるのだ。


野営時には強固な結界を馬車の周りの付与して安全な野営を行う。

そんな野営の状況を見た今回初参加の者たちは

「信じられない、こんな安全にこの森で野営できるなんて。」

と言っていたが気にしないわ。


森を抜けるのに20日ほどかかった、これでもかなり早い方だと思う。

体力を落とすことなく疲れを知らない魔導馬での移動は通常の3倍は優にあるだろう、と言うことはこの森は普通なら移動だけでも二月はかかると言うこと・・・ほぼ無理なことだろう。


森の魔物は他の魔の森に劣らず強い魔物が多くいたが皆私達のお腹に収まることになる。

お陰で肉だけは王国でも半年以上賄える程の量が収納できた。


森を抜けてそのまま南に進むと砂漠に出た、此処まで人には会っていない。



ーー 初めての異国人



砂漠を進むこと10日、砂地が草原にかわり林や森が見えるようになった。

「セシル様、此処は人が住めそうな場所ですね。きっと此処に異国人がいると思います。」

とカレンが話しかけてきた。

確かにカレンの言う通りだ、私の索敵で此処から10kmほど先に集落があるのは確認済みだ。

「クロ!此処から10km先に集落があるようなの、確認してきてもらって良いかしら。」

「おお、やっと俺の出番か。すぐに確認してこよう。しばし待たれ。」

と言い残すとクロは空に舞い上がった、今では人の姿のままで空を飛べるようになったようだ。


休憩がてら食事の準備をして黒の帰りを待つ。


1時間ほどでクロが戻ってきたがその脇には1人の少女が抱えられていた。

「その子どうしたの?」

「ああこの子は魔物に襲われていたのを助けたのだ、多分あの集落の子だと思う。」

と軽い怪我と恐怖で気を失っているようだ、シスターアンが怪我を癒しながら面倒を見ているようだ。

少女は暫くして意識を取り戻して驚いていた。

「此処は天国ですか?」

「確かにそれに近いですが少し違います、此処は女神の使徒様セシル様の馬車の中です。」

「女神?使徒?セシル様?馬車の中?」

理解できない顔をしながら自分の身体を見て

「!怪我がない。・・もしかして治して切れたんですか?」

「はい、セシル様の命で私が癒しました。私はシスターアンと言います、貴方の名は?」

「ありがとうございます。私は・・カリーナです。タキロン町の職人ベスとメリーの娘です。」

と答えた。

中々賢そうな子です、シスターアンは感心しながら

「今から貴方をセシル様の元に連れて行きますので、お礼を言ってくださいね多分このあとあなたの住む町に送っていくのですから。

「ありがとうございます。」



そして私の前に異国人カリーナが姿を見せてお礼を言ってくれた。

「お礼はもう結構ですよ、さあお腹が空いたでしょう、ご飯を食べましょう。」

と言いながらテーブルに座らせ皆と食事を始めると

「美味しい!こんな美味しいご飯初めて食べます。・・家族にも食べさせたい。」

後の声は本当に小さなものでしたが私の耳にはきちんと届いていた。

「ええいわよ、貴方の家族にもご馳走しましょうね。」

「え!・・本当ですか?ありがとうございます。」

頭を何度も下げてお礼を言うカリーナに

「はい、お礼はもう結構よ。早めに食べてねあなたの住む町に向かいますから。」

と言いながらクロに町のことを聞いた。

「町は塀で囲まれた簡易な城塞都市のような作りです。住民は1000人ほどで、あまり裕福には見えませんでした。近くに森があり魔物が出てくるのでしょう、田畑は荒らされている場所が多く食料事情はあまり良くないかもしれません。」

と具体的な情報を教えてくれた、その後カリーナにも聞きながら町の様子を確認して私は

「此処はもう少し手を貸してやればそこそこ生活のできる町になりそうです、手を差し伸べるのも悪くはありませんね。」

と言う私の言葉に一番驚き嬉しそうにしたのはカリーナだった。



ーー 異国の町タキロン


町に着いたのは夕方近くのことだった、それは森から出てきた多くの魔物を狩りながら移動していたからだ。

小さめのスタンピードが発生したようなのだ。

その様子を見ていた町の人々は、感謝と共に畏れも感じていた。


「お前達は何者だ!」

門番のような男が槍を持ち私たちの前に立ち塞がる、そこにカリーナが飛び出し

「ケントさん、この人たちは悪い人ではないわ。魔物に襲われていた私を助けてくれて治療してくれたの、それに女神様の使徒様だと聞いたの。」


「女神の使徒だと、そんな御伽話のような者がいるはずがない、怪しい。」

と逆に警戒を高めたがそこに老人が現れて

「ケントや槍をおろしなさい。」

と言いながら門番の前に出ると

「失礼しました、我が町を魔物の群れから助けていただきありがとうございました。しかもカリーナを助けていただいたようで、重ねてお礼を申し上げます。私はこの町の町長ゴッホと言います。どうぞ我が家までおいでください。」

と言いながら私たち一行を町長の家に案内してくれた。


その途中でカリーナの母親が現れて感動の親子の対面があったがそれ以外は興味深く私たちを見る町の人々の目。町の人の中には獣人と思われる者も見受けられたので、人種差別的なものは少ないと思われた。

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