第8話 街を大きくしよう。領地持ちになった、困ったわ。

ーー メンデルの街を大きくしよう



かなりの人が来るようになり、それに合わせて移住者も多くなったため今この街では住むところが不足し始めている。

私は伯爵に話に向かう。

「このメンデルの街を大きくしたい。そう言うのかねセシル殿は。」

伯爵が驚きながら聞き返す、

「はい。今から先この街では手狭ですので2〜3倍にしたいと考えています。お許しいただければ2週間ほどで。」

「この街を2、3倍にするのが2週間だと?本当にできるのならお願いしても良いか。」

というと伯爵の言葉に

「確かにお受けいたしました。直ちにかかります。」

と答えると私は準備していた地図を広げて、

「街創造!」

と唱え魔力を込める。

「ガタガタ」

と地面が揺れ動く音が響きそれが治ると、私は

「外側の城壁と大きな通りは完成しました。後は2週間かけて細い道や上下水道を完備していきます。」

と言うと伯爵に屋敷を後にした。

残された伯爵は

「2週間と言うのは細々とした整地なのか?まさか大元の工事があの短時間で済むなど・・・神の身技にしか見えぬ。」

とグッタリとソファーに、その日は座って日が暮れたと言う。


半径3kmの街があっと間に半径10kmの大都市に変貌した。

街の領民は広がった街の空き地を茫然と眺めながら、誰かが

「女神様は狭い街がお嫌だったようだ。この街はもっと大きくなるみたいだ。」

と言えば

「女神様ばんざーい」

と言う声があちらこちらから聞こえていたと言う。

商人はと言うと

「これは我が商会を大きくするチャンスだ。直ぐに伯爵家に新たな土地の買取を申請せねば。」

と言いながら新たに広がった土地を見て頭を捻った。

「何だこの番号は?」

新たな土地には既におおまかな区画がされており、隅に番号が付与されていたのだ。

伯爵家に残された地図にはその番号が記載されており、政に必要な場所には不買と書かれ、商人に売る土地は商業地、職人に売る地は職人街などと記載されていた、なお半分ほどは農地となっており、自給自足を保っものだった。


ー 新しき街は快適で美しい



1月もすると広がった街の買い手もほぼ決まり、建築ラッシュが始まる。

経済がまた大きく動き出す、好景気続きのメンデルの街とスーザン王国。

国力も増大してセシル様様の様子。

小競り合いをしていた隣国もしばしなりを顰め、スーザン王国の富国の種を探し始めた。


メンデルの街は計画された街並みが美しく、上下水道の普及で街が衛生的でニオイがないのが素晴らしかった。

今までスラム化していた住宅地もセシルが

「共同住宅を建てます。格安なので家のない人は登録をしてから入居して下さいね、仕事は余るほどあります、怪我や病気は直ぐに良くなります、早い者勝ちですよ。」

と呼び掛ければ、たくさんの人々が押し寄せてきたがそれを余裕で収納できるほどの住宅であった。

こちらで言う団地です。


病院という名の施設が完成し、病や怪我の人々が格安で治療を受けられる。

住むところや身体の心配がなくなった領民達は、皆積極的に働き始める、すると生活に余裕ができる。

余裕ができれば街が潤う、良いことが循環している。



ーー ポーションを作ろう


メンデルの街には病院んという施設ができたが、他の街や領地にはそのようなものはない。

そこで私は、ポーションを製造することにした。

今までもポーションはあったが、いかんせん性能が悪く不味かった。

そこで広がった畑に中に薬草畑を作ることにした。

森の奥から魔力の篭った腐葉土を持ち帰り、畑にすき込むと今まで栽培できなかった薬草だスクスクと育ち出したのだ。

ただその腐葉土を採取するのには、かなりの実力の冒険者が必要でさらに大容量の収納袋がいる。

ただしそれは他の人がする場合だ、私の場合日帰りでチョチョイのちょいである。


薬師を育てながらポーションを製造するのだがその為には、錬金魔法の使える魔法師が必要だ。

孤児から選りすぐった10人を錬金魔法師に変えるために、

「その実を食べろ!そして夢を掴め!」

と言いながら1月後には10人の立派な錬金魔法師を育て上げた。


他にも病院んでは治療魔法師5人、浄化のできる神聖魔法師5人も揃っている。

メンデルの街の孤児院は、魔法師養成学校に変身していたのだ。


そして完成したポーションは、その効き目と飲みやすさからたちまち売れ高を毎月更新するほどの大ヒット商品となった。

身体が基本の冒険者や騎士や兵士たちもこのポーションを常備するようになり、怪我で任務を失敗する話が激減した。



ーー 伯爵が侯爵になったよ。


メンデルの街と言うかビブラン伯爵領の隆盛とは反対に隣接する貴族らの領地は没落して行った。

領地経営に積極的でなかったり、放蕩な生活を続けていた貴族が没落するのは当然である。

王国はそのような貴族の貴族位を取り上げて、再配分を行うことにした。

丁度ビブラン伯爵領の両隣が潰れたことを利用して、片方をビブラン伯爵に褒美として与えて侯爵位を与えた。

そして残りの領地をセシル子爵に与へ領主にとしたのだ。


隣といえど領地持ちになった私は今の家を引っ越すことを良しとしなかった。

国王とビブラン侯爵に話を持ちかけ、今までのような生活を願った。

その為私の領地に代官を置くこととなった。



ーー 代官誰かやる?



孤児院で私はこう叫んだ。

「誰か私に新しい領地に行って代官してくれない?」

と。

だってこの子供らは幼い頃から私が手塩にかけて育てた優秀な子供達なのです。

代官ぐらいなら問題ないと思うの。すると

「私と兄にその大役を命じてください。」

と言う声が聞こえた、それは2年前に亡国の孤児としてここに引き取られた兄妹だった。

「ええいいわ、あなたは確かメーテル・・」

「メーテル=デカントです。セシル子爵様の領地この街のように栄えさせて見せます。」

と言うので

「分かったあなた達に任せます。必要なことは相談して力になるしそれが私の為でもあるから。」

と言うと視察がてらに新たな領地に向かった。



ーー 子爵領



没落した領地というのがそれだけの理由があるものだ。

農地は痩せ領民は四散し、荒れ果てたような領地だった。

ただ救いは自然が美しい、湖があり清流があり豊かな森があった。

「これなら何とかできそうですね。」

と呟いた私にの言葉に、デカンと兄妹が反応した。

「セシル子爵様にはこの荒地がどのように見えるのですか?」

妹が聞いてきた。

「うんー。何もないからこそ新たなことをするのに向いていると思わないかい?古びた建物は一掃しここに機能的で憩いのあるリゾート施設を作りたいと考えたよ。」

「憩い、リゾート?ですか。」

「皆んながここに来て日頃の疲れを癒し、活力をつけて家に戻るのよ。」


私は早速地下の水脈を探しその成分と温度を探った。

「見つけたわ、水量、泉質共に問題ない。温泉の水脈をね。」

とニコニコしながら馬車に戻ると

「俯瞰視」

「コピー」

「製図」

と私固有の魔法を使い新しい街を設計していく。


「ここに共同浴場とスパ、ここは飲食店街でいいわね。そしてここには・・・」

暫く声をかけずに出来上がる街の設計図を見ていたメーテルが

「子爵様、小模様な街は見たことがありませんわ。素晴らしいですがどのくらいの月日がかかりましょうか?」

と途中から心配顔、

「問題ないわ、基本は私の魔法で今日にでも完成するから、そうね・・3ヶ月ぐらいかしら。」

「たった3ヶ月でこの街ができるのですか?信じられません。」

「あっ、そういえば貴方たちに果実を渡すのを忘れていたわ。これがメーテルのでこれがトールの物よ。」

「さあ、その身を食べるのよ、そして願いを叶えよ!」

と言いながら2人にスキルの果実を食べさせた、当然の如く2人は気を失った。


ー 3日後


目を覚ました兄妹が見たのは、どんどんと建ち並ぶ街並みだ。

広き平な道路に綺麗に整地区割りされた街並み。

一番異彩を放つ建物からは蒸気が噴き出しているようだ。

「おお、目を覚ましたね。あれが見えるかい、あれが温泉施設スパだ。貴方達の新たな領地よ。

自分の力を信じて街を発展させてね。」

と言うと私は今後の方針や進め方を記載したノートを手渡して

「後は頼むわね。」

というと2人を残して自宅に帰った。



ーー デカント兄妹 side



残された2人は、直ぐにノートをみだした。

「まず貴方達の能力について話しておきましょう。メーテルは嘘を見抜くスキルと危険を察知するスキルを与えたわ、トールには街づくりに必要な土魔法と統率力のスキルをそれぞれその力を使って街を作りなさい。」

と書かれていた、残りは街の完成図と2人のスキルの訓練方法。


2人は決められていた簡易の宿泊所に戻ると、スキルの訓練を始めた。

既に孤児院では果実を食べれば直ぐに魔法が使えるように、訓練方法を教えていた為5日ほどで十全に魔法やスキルが使えるようになっていた。

「お兄様、滅んだ故郷では叶わなかった領主の夢をここで存分に叶えて下さい。」

といえば

「ありがとう。メーテルの期待に応えてみせるよ。そしてこの領地を王国内で一番の豊かな領地に。」

口数の少なかったトールが堂々とそう言い切ったのを見てメーテルは、明るい未来が見えた気がした。



ーー スーザン王国 デスタート国王  side



我がスーザン王国は近年隣国に脅かされていた。

王位を継いで25年、我がスーザン王国は危機に立たされていた。

そんな時悪魔のような情報「スタンピード発生」が耳に届いた。その時ワシはもうダメかもしれないと思った。

しかし続いてもたらされた情報「スタンピードが殲滅された。たった2人の冒険者がやり遂げたらしい。」という信じられないような話。

部下に冒険者のことを調べさせると、「まだ年若い少女と獣人の青年である。」「特殊な能力があるようでそれが魔法ではないか。」「ビブラン伯爵と良好な関係を築いている。」

と言うことで王都に呼び寄せ褒美として貴族位を与えるつもりであった。

当然準男爵か男爵あたりを。


すると王都に来た少女は、古の教会を建て直し病や怪我で苦しむ王都民を無料で3日間休まず救って見せた。

その治療魔法の技量はまさに古の聖女の如き。

ワシは褒美の貴族位を直ぐに子爵に上げるよう指示した。

ヘタをすると国が傾く街が滅ぶスタンピードをたった2人で殲滅する武威に、重症患者を快癒するほどの治療魔法。

きっと彼女らは女神に繋がる者に違いないと思い。


ワシの判断は間違いなかった、あの後隣国は武力侵攻をやめ情報収集に移行した。

彼女らの力の片鱗に気付いたからだ、2人だけで国家並みの軍事力を持つ上に治癒能力、自国の高位貴族や王家に何かあれば救いの手を差し伸べて欲しいはず。

そこまで彼女らの力は魅力的なのだ。


この度ワシは、領地を褒美として差し出した。しかし彼女らはそこまで喜ぶことはなかった。金や名誉などは彼女らにとって何ら褒美ではなかったのだ、ワシは過ちを冒したかとも思ったがそれでも無駄ではなかったようだ。

彼女らは人を育てていたのだ、既に数十人単位で魔法師を高い教育を与えた人材を。

彼女らの育てた子供らを我が王国の要とすれば・・・安泰だ。

わしは毎朝夕と神に祈りを欠かすことがない、女神の化身とも言われる彼女の恩に報いる為だ。



ーー メンデルの街の商会長達



メンデルの街にセシル達がやって来て変わった者達に商人らがいる。

・衣類や雑貨を扱う、ミラン商会。

・生活魔道具を扱う、ガスト商会。

・料理や飲食関係の、ビストロ商会。

・建築や道具の、ガッテン商会。

の4大商会がその中心だ。


セシルが作る商品はどれも飛ぶように売れるもので且つメンテナンスが必要なものやリピータの回転の速さが、この世界に一画を記する品物だった。

一度使うとやめられない品物も多く、健康になるものや美しくなるものまである。

これらの商品を世界中に広めることこそ商人冥利ではないかと、4大商会長は新たな商業ギルドを作り商品を売り捌いているのだ。


今では「セシル印」である聖女が祈る姿の商品は、模造すると極刑になると言う徹底さが高品質と信頼を得ているのだ。

これよりこの世界にブランドと言う概念が生まれた瞬間だった。


そしてそれぞれの商会長は、半年に一回の新商品発表会には必ず出席している。


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