第14話 会議
ここはリグニル学院大会議室。
議長として学園長であるリーグ・キーエンが座りいずれも世界トップレベルの実力を持つリグニル学院の誇る教師たちが今年の入学試験の結果について話し合っている。
例年、この会議において教師間の議論で最も熱を帯びるのは『誰を合格させるか』というものであるが、今年の会議では『誰を何位として合格させるか』というものであった。
というのも、この学園の特性上、入学試験では毎回、順位をつけて合格者を発表するのである。
そして今この場では教師たちの考えの違いによって、衝突が起きていた。
「だからなぁ、今年の一位はこのゼノス・ブレイドってやつに決まってんだろうが!!力こそパワー、パワーこそ力だ!現に一番敵を倒しているのもこいつだ。 あぁ、やはり大剣こそが至高であるッッ!」
筋骨隆々のいかにも物理でゴリ押しが大好きであろう男教師が叫ぶ。
「はぁ、あなたは何もわかっちゃいない。このゼン・ディアスこそが一番に決まっているでしょう。過去数十年を遡ってみても事例のない珍しき空間魔法使い。あの100年に1人の才女とまで謳われていたニーナ・ブローニを相手に傷一つも負わない圧勝。古代の書物にしか記録のない魔法の数々をみた時は流石の私も興奮してしまいましたよ。ハァハァハァ………」
目の下にあるクマの量が尋常ではない白衣を羽織った細身の男が息を荒らげながらも言う。
「ケッ、テメェは見る目がないんだから黙ってろ、このマッド魔法使い!!」
「ふふふ…あなたこそその可哀想な頭をお母様のお腹の中に返却してきなさい、この筋肉だるま」
「アァン!?」
2人の教師の間に火花が散っていると錯覚してしまうほどの緊張が走る。
周囲の教師も同じことを思っているらしく、議論はさらにヒートアップしていく。
しばらくすると、
「少しいいかな」
と、今まで黙秘を貫いていた歴史上初の5属性持ちであり、世界一の大英雄であり、このリグニル学院の学院長であるリーグ・キーエンが発言を始めるとたちまち会議室は静まり返った。
「わしとしては、この、ラウル・ローレンがいいと思うのじゃが…」
「「「「え?」」」」
その名前を発した途端、室内の全員が頭上に『?』を浮かべた。
「あの、学園長…、彼は実力はあるし、確かに合格にすると言うのは決まっていましたが、剣術もまだアサヒ・シノノメの方が腕は一流で、最後の最後に使った魔法も効果は局所的でした。正直、ここにいるものたちはあまり注目していなかったかと……」
「ほぉ…、確かにあの男は派手な活躍はしていなかったし、全力は見せていなかった。だが、よぉく注視してみると───とんでもないぞよ」
「確かになぁ」
今までは黙っていた1人の若い男教師が口をひらく。
「貴様はさっきまで黙っていただろう!?なぁにを今更偉そうに!」
1人の教師が怒鳴る
「はぁ、あのなぁ、あんなもん魔法にある程度精通している人間が見れば全員がわかるヤバさだろう?完全に精密な魔力コントロールに、そこの読めない魔力量。威力もあれが全力じゃあないだろう。逆に聞くが……わからなかったのか?」
「なんだとッッ!?」
2人の間にも険悪な空気が走る。
「ホイホイ、ここではやめぃ」
「はいはい、わかったよ、おじいちゃん♪」
「おい貴様、また無礼をッッ」
「まあ良いさ、ホイホイ、続きをするぞい」
会議は、踊る。
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「ねぇ、おじいちゃん、あんなに権力ゴリ押しで決めちゃって…大丈夫そ?」
「まあ良いさ。あやつが入学したら、いやでも全員が認めるだろうさ」
「そーう?それにしても。今年は強いのが多いねぇ、例年だったら主席クラスだよ」
「そうじゃなぁ…今年は荒れそうじゃ」
「それにしても…このムジナ君?ってのは少ししかみてないけど、なぁんだか不気味な感じがするよねぇ」
「ふぅむ…。まあ。お主がなんとかするじゃろ」
「まーねー」
所々に不安要素を
入試結果
1位 ラウル・ローレン
2位 ゼン・ディアス
3位 ゼノス・ブレイド
4位 リゼ・ミラー(学者部門)
5位 アサヒ・シノノメ
6位 ニーナ・ブローニ
7位 セイン・メイン
8位 アデン
9位 ムジナ
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