第7話 4年後

 リグニル暦208年


 ニーナと婚約してから4年がたった。

 初めの方は嫌悪しか感じていなかったが、今はニーナは使えるやつだと割り切り、なんだかんだで平和な日々を過ごしている。


 …まあ、ニーナの被虐されることに喜びを覚えるという厄介な性質を矯正するのに苦労したのだが。


 最初の方はお互い教養を身につけたり他の貴族子女たちとの関係を構築するなどで忙しく、文通でのやり取りが主なものだったが、今はお互いに落ち着き、一週間に1回くらいの頻度で直接会って会話をしている。これも、婚約者としての一種の義務のようなものである。


 自分で言うのもなんだが、ニーナは俺に心底惚れている。

 俺は何回も愛していない、と伝えているのだが、ニーナは、「それでもいい」などと言って笑う。俺にはよくわからない考え方だが、俺のそばにいられるだけで幸せらしい。



 さて、この4年間で何があったのかを簡単に説明しよう。

 まず、俺とニーナは今も変わらず「王国内トップの天才」として認知されている。

 貴族などとしての大きな変化は特にはないが、俺の魔法の面ではこの4年間でとても多くの変化があった。

 


 まず、詳しく記録に残されている重力魔法は全てマスターし、王国内でも屈指の強さとなった。少し詳しく言うならば、重力を俺ではない他を起点として重力を発生させることもできるし、とても精密な操作によっていろんな物体を空中に浮かすこともできる。これはとても大きな進歩だ。戦闘の選択肢が大きく広がり、常に有利に戦えるようになった。

 これは俺と、あとはニーナも5年後に行くリグニル学院でも役に立つだろう。

 

 才能のある子供は、15歳になったものは学院の最高峰、リグニル学院の入学者試験を受験する。

 この学院は大陸の中心にある中立都市、キースにあり、各国の才能のある貴族たちが受けに来る。

 この学園は完全な実力主義の世界であり、魔法使い、剣士、学者など、能力があるものは一切の差別をすることなく入学を許可する、と謳っている。 

 ──しかし、それはとてつもなき狭き門であり、毎年数百人が受験をする中、合格できるものはほんの10名である。

 その分、施設は紛れもない最高峰であり、優秀な教師、各国の優秀なライバルたちと競い合うことができ、非常に有意義な学園生活を送ることが可能だ。

 実際、歴史に名を残している魔法使い、剣士たちはほとんどがこの学院出身であり、このことからもこの学園のレベルがわかる。


 当面の俺とニーナの目標はこの学院に入学することであるが、──まあ余裕だろう。

 この間、暇つぶしにニーナの魔法を見てみたが、思っていたよりもレベルが高い。これなら、合格も余裕だろう。




 そんなこんなで俺たちはなんだかんだ平和で、落ち着いた日々を過ごしていた。



  ───アレが現れるまでは。───


 

 


 

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