正義030・ひとまずの解決
黒き
その光景にしばらくフリーズしていたユゼリアだったが、はっと正気に戻って口を開く。
「今のは……一体……」
「チョップだよ」
「いや、そんなのは見れば分かるけど……チョップ1発であんなになる?」
ユゼリアの視線の先には、左右に分かれた
「エスの攻撃はどれもおかしいけど、これは特に意味不明よ。岩人形は尋常じゃなく硬いのに……」
「そう? 岩はパカンと割れるものでしょ?」
いくら硬かろうが関係ない。
岩というのは割れるもの――それがエスにとっての〝お約束〟だ。
ユゼリアは理解できないようだが、なんだかんだで諦めることにしたらしい。
岩人形の亡骸に近付くと、断面から覗く巨大な魔核を触りはじめた。
「やっぱりこの魔核もボロボロね。時間が経ってないからか、昨日の
「そうだね。回収しとこうか」
エスは魔核を両腕で掴むと、ボゴォッ! と強引に抜き取る。
ユゼリアが一瞬ジト目になるが、何も見なかったように首を振った。
「そしたら、他の素材と魔核も回収して帰りましょっか」
「オーケー!」
エス達は岩人形の魔核と一部素材――エスが拳で砕いた欠片の他、一帯に転がった大量の邪獣の魔核と素材をアイテム袋に詰める。
あまりにも量が多いため、素材については状態の良いものだけを厳選した。
また、そこら中に残った死体は後々の腐敗がひどそうだということで、ある程度ユゼリアの魔法で燃やしておいた。
念のため、魔法陣があった場所も魔法で燃やした後、エス達はロズベリーの町に帰還する。
「――大事な報告があるんだけど」
帰還後、受付のカリンにユゼリアがそう言うと、すぐに応接室へと通される。
ソファーに座り、出されたお茶を飲んでいたエス達の下に、支部長のデルバートがやってきた。
「2人共、大事な報告があると聞いたが……まさかまた仮面集団が現れたのか?」
「いえ、もっと大変なことが起きたわ」
対面に腰掛けたデルバートに、ユゼリアが
「――なにっ!? 巣から大量の黒い邪獣が……?」
飲みかけていた紅茶のカップをテーブルに置き、驚きの表情を浮かべるデルバート。
「ええ。魔核を回収する時に数えたけど、300体以上いたわ」
「300体だと……!?」
「ええ、これがその魔核と素材の一部。後で確認しておいて」
ユゼリアはそう言うと、アイテム袋をデルバートに渡す。
「……分かった。袋は後で返却する」
「お願い。それと――」
ユゼリアはその後黒い魔力を纏った岩人形も現れたこと、黒い邪獣が生まれる前に謎の魔法陣が発光したこと等を伝える。
「――まじかよ……300体超えの強化された邪獣に、極めつけは黒い岩人形か。2人がいなかければ大変なことになっていたかもな」
「ええ、危ないところだったわ。あの謎の魔法陣……私達が刺激したことで起動が早まった可能性は高いけど、いずれ発動してたんじゃないかしら」
「恐ろしいな……大量の黒い邪獣が森に放たれていた可能性もあるわけか」
「そうね。今回は私達という標的がいたけど、それがいなければそうなっていたかもしれないわ。黒い魔力は行動範囲も狂わせるみたいだし、最悪は……」
「町のほうまで来ていたかもな」
デルバートが冷や汗を流しながら言う。
300体を超える凶暴な邪獣と、強化された岩人形。
黒い魔力を纏った邪獣が短命であるとはいえ、大きな被害が出てもおかしくない。
少なくとも、ロズベリーを大混乱に陥れていたことは確実だった。
「被害を未然に防いでくれたことに感謝する。しかし、それだけ大量の強化された邪獣と主邪獣をよく倒せたな……」
「ああ、それは――」
ユゼリアは巣で起きた件について、詳しい内容を報告する。
「――な!? 食べられる木みたいな剣!!? ――岩人形が真っ二つに!!?」
「ええ、それから――」
他にもジャスティス1号の話をしたり、送還していたジャスティス1号をエスが紹介のために召喚する一幕があったりして、巣の件の報告が終わる。
デルバートは終始驚いていたが、「まあエスだから」というユゼリアの言葉に苦笑しながら頷いていた。
それから3人――主にユゼリアとデルバートは、今回の件に関しての考察をしばらく行う。
「――まあひとまずは、一件落着という感じか」
「そうね。黒い邪獣の打ち漏らしが少しいるかもだけど、大した問題にはならないと思うわ」
いくつかの問題――魔法陣を描いた人物や昨日の仮面集団等については追加調査が必要だが、状況的に同一グループである可能性が高い。
また、エス達が魔法陣を起動させ黒い邪獣達を一掃したことで、敵の目論見は台無しになっただろう。
そのような結論と共に、話し合いは終了した。
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