正義029・黒き主邪獣
「ヴォオォォォォォォォォッ!!!!」
「まだ終わってなかったの!?」
「みたいだね!」
エス達はそう言いながら、一旦邪獣から距離をとる。
他の邪獣が出現する気配はなく、巨大邪獣が現れたことで
正真正銘、目の前の敵が最後の敵なのだろう。
「この大きさ……もしかしたら、
ユゼリアが臨戦態勢に入って言う。
黒い魔力に覆われて中身は見えないが、邪獣の体高は約10メートル。
「この
「土人形……この前の『邪獣図鑑』で見たような」
「ええ。無機物で構成された人型邪獣よ。ただ、ここまで大きいのは見たことが――」
「ヴォオオオオォォッ!!!」
怒り狂ったように叫ぶ巨大邪獣は、エス達が立つ場所に向けて太い2本の腕を振り下ろす。
エス達はすかさず飛び退いて躱したが、その1撃は非常に重い。
叩かれた地面はクレーターのように陥没し、一帯に地響きが起こった。
「食らったらお終いね……」
ユゼリアはこめかみに汗を流す。
集中すれば避けられるが、黒い魔力の影響なのか巨体にしては俊敏だ。
「土人形系は防御力も高いし、かなり厄介な相手よ……特に
「オーケー!」
エスは落ちていた小石を拾うと、巨大邪獣に投擲する。
ドゴオォォッ!!!
胴体のど真ん中に命中した小石は、粉々に砕けながらも黒い魔力を吹き飛ばす。
「ヴォオォォ……!!」
「……っ! かなり頑丈だね!」
並みの邪獣相手であれば、今の1撃で胴体が削れていたはずだ。
しかし、露出した肌には大した傷がついておらず、瞬く間に黒い魔力の防御壁が回復した。
「今の1発で種類は断定できたわ! こいつは岩人形よ! よりにもよって……!」
ユゼリアは唇を噛んで言う。
岩人形はただでさえ防御力が高く、攻撃が通りにくい。
「強化された状態の防御力は相当でしょうね……土人形系は魔法攻撃が効きにくいし、相性が悪すぎるわ……!」
「なら俺に任せて! 岩人形ってことは、岩で出来てるんでしょ?」
「ええ……でも、相当硬いわよ? いくらエスでも――」
「問題ないよ! むしろ好都合!」
「え?」
疑問符を浮かべるユゼリアを横目に、エスは颯爽と駆けだす。
もう1度
(だって岩は……)
エスは再び小石を拾いつつ、反撃のタイミングを窺う。
「ヴォオオオオオ!!」
ドゴオォォッ!!!
(――今だっ!!)
振り下ろされた両腕が地面にめり込んだ瞬間、その腕を足場にして岩人形の体を駆け上がった。
頭の部分まで移動したエスは、握っていた小石を全力で投擲する。
狙うは岩人形の頭頂部。
ドガアァァッ!!!!
「ヴォオォ……ッ!!」
さきほどよりも多くの正義力を籠めた小石が、黒い魔力を吹き飛ばす。
多少表面が削れただけで致命傷にはなっていないが、頭頂部が露わになればそれでいい。
「いくぞっ!」
岩人形の二の腕を蹴って高く飛び上がったエスは、まだ黒い魔力が薄い状態の頭頂部に全力のチョップをお見舞いした。
ズドッ!!!!!!!
(よし!!)
チョップに手応えを感じたエスは、くるくると宙返りしてユゼリアの隣に着地する。
「ふぅ……」
「まだ終わってないわよ……!」
パンパンと手を払うエスに、ユゼリアが注意を促す。
綺麗な1撃が入ったとはいえ、強化された岩人形の強度は計り知れない。
「私が魔法で牽制するから、エスは今の感じで――」
「ヴォオオ……」
ユゼリアが杖を構えた時、岩人形が低い呻き声を漏らす。
「ヴォ……オオ……」
「え? 黒い魔力が消えて……」
ユゼリアが目を見開く中、岩人形の黒い魔力がどんどん薄れ、岩肌が露わになっていく。
やがて黒い魔力は完全になくなり、岩人形がプルプルと震え出した。
「ヴォ……ヴォオオ……ォォ……」
「何が起きて……」
「勝負ありだね」
エスが言った直後、ピキッと甲高い音が鳴り、岩人形の頭頂部にヒビが入る。
「……え?」
ピキッ……ピキピキピキッ……!!
ヒビはそのまま真っすぐに下り、岩人形の股間部分まで達すると――
「……ええええぇっ!!?」
パカン! と軽快な音を響かせ、巨体を真っ二つにするのだった。
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