正義005・連合

「――着きましたよ。ここが連合ユニオンです」

「へえ、立派だね!」

 

 エスはそう言って目の前の建物を見上げる。


 周囲の建物に比べても一際古い、歴史を感じる建物だ。


 扉の上にはシンボルだという〝剣と馬車のマーク〟が刻まれていた。


「さあ、中に入りましょう」

「うん!」


 ロレア達に付いて扉を抜けると、中は思った以上に広い。


 また、人々による賑わいもかなりのもので、外の通り以上にガヤガヤとした空気だった。


「連合は何をする場所なの?」


 正面に見える横長の受付を見ながらロレア達に尋ねる。

 

 受付には茶と白の職員服を着た女性達が立っていて、各職員の前に人々が並んでいた。


「何をする……と言うといろいろありますね。常時様々な種類のクエストが出ているので、私冒険者は毎日のように通っています」

「クランの結成とか昇格とかもここでするんだよー」

「ふーん、なるほどね」


 ロレア達の説明を聞きながら、受付の様子を観察する。


 やはりエスの知らない世界だけあって、よく分からないことが多い。


(あの人達が冒険者ってやつかな?)


 受付に並ぶ者の多くは戦士風の格好をしている。


 列によっては何かを運んできたのか、巨大な袋を担ぐ者もいた。


 通りを歩いていた人達より個性的な人間が多く、強烈な異文化を感じる光景だ。


 エス達は端のほうで空いていた受付に向かう。


「こんにちは。ご用件は……そちらの方の引き渡しですか」

「連合指定のC級犯罪者です」

「潜伏していたところを捕縛しましたー」


 担がれた男を見る受付嬢に、ロレア達が事情を説明する。


 エスに詳しいことは分からないので、やり取りは2人に丸投げだ。


 2人もエスが世情に疎いことは察しており、率先して行動してくれる。


(ロレアもラナも、素晴らしい正義の持ち主だね)


 受付嬢とやり取りする2人を見ながらエスは頷く。


 正義眼ジャスティスアイを通して見ても、ロレア達には悪のオーラが一切ない。


 むしろ良質な正義のオーラを纏っている。


 この世界に来て早々2人に出会えたことは、エスにとって僥倖だった。


「エス、終わりましたよ」


 間もなくすると引き渡しの手続きが済んだらしい。


 黒い服を着た屈強な職員達が気絶した男を運んでいく。


「しかし、私達のカードで手続きしてもよかったのですか?」

「うん。俺はよく分からないし、カードも持ってないからね」

「登録自体はすぐに……いえ、エスの考えを尊重しましょう。せっかくの縁ですし、この後どこかで話でもしませんか?」

「賛成―♪ 私もエス君には興味あるし、食事しながら話そうよー」

「食事? いいね!!」


 通りで食べた串焼きの味を思い出し、じゅるりと涎を垂らすエス。


 その様子に笑うロレア達と共に、連合をあとにするのだった。


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