正義004・英霊の光

「――よし。成敗完了!」


 満足気な表情で言いながら、エスは倒れた男の下へと行く。


「倒したはいいけど、どうしよう?」


 男の扱いに困っていると、元々男を追っていた二人組が後ろから駆けてきた。


「こちらを使ってください」

「魔力の操作を封じる手錠だよ」

「ありがとう!!」


 手錠を受け取り、気絶した男の両腕を拘束する。


「さきほどは助かりました。感謝します」

「君がいなきゃまんまと逃げられてたよ」

「気にしないで! 俺の中の正義に従っただけだから!」

「……正義? ところで、自己紹介がまだでしたね。私の名前はロレア。クラン【英霊の光】でリーダーを務めています」

「同じく【英霊の光】のメンバー、ラナだよ。よろしくねー♪」

「俺はエス! 2人ともよろしく!」


 エスは2人と握手を交わす。


 ロレアは滑らかな藍色の長髪を伸ばした生真面目な雰囲気の女性。


 年は10代後半から20歳前後といったところだろうか。


 軽装の騎士風の格好をしており、腰に長剣を差している。


 もう1人のラナは亜麻色のショートヘアで、のんびりとした雰囲気の女性。


 見たところロレアと同年代のようだ。


 カーキ色のコートを羽織っており、背中には大きな弓が掛けられている。


「ところで、英霊の光? っていうのは何のこと?」

「私達のクランの名前です。普段はロズベリーではなく、ライトナムを拠点にしていますが」

「ふーん、なるほどね」


 エスは適当に相槌を打つ。


(クランっていうのはチームか何かかな?)


 再び知らない単語が出てきたが、今は目の前の男のほうが重要だ。


 分からないことは後で尋ねることにして、気絶した男に視線を移す。


「それで、こいつは何者なの? 2人で追ってたみたいだけど」

連合ユニオンから指名手配された凶悪犯です。C級上位の実力がある厄介な奴でして……」

「ロズベリーに潜伏中って情報を貰ったから捕縛に行ったんだけど……恥ずかしながら逃げられちゃってねー」


 ロレアとラナは気まずそうに説明する。


 濃密な悪のオーラから凶悪な男だとは思っていたが、やはり極悪人だったらしい。


 さきほど使っていた紫電の能力は特別な固有ユニークスキルとやらで、捕縛する側も手を焼かされていたようだ。


「捕縛してくれたこと、改めて感謝します。連合に身柄を引き渡すので、エスも付いてきてくれますか? エスには報奨金を受け取る権利がありますから」

「報奨金ってお金のこと? 俺が貰っちゃっていいの?」

「当然です。この男を倒したのはエスですからね……よっと」


 しゃがみ込んだロレアは、男を肩に担ぎ上げる。


 そうしてエスは、ロレア達と共に〝連合〟とやらに行くことになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る