第27話
「アハハ、威勢だけは良かったのにそんなんで終わりなのね!?」
「クウウッ……」
不味い、覚悟を決め込んだことはいいのだけど、攻勢に出ることが全くできない。私の【
一瞬だけ、気を引かせることができたなら……。
私はそのことを考えて、一つの案に思い至った。
「ずいぶんと手加減しているのね」
「本来なら貴女を殺すべきなのだけど、私も貴方に恨みがあるの」
「恨みって」
「知る必要はないわ、だってこれからジリジリと殺していくもの」
「貴女まさか、元貴族……」
そう言った瞬間、彼女の笑みの質が一変した。今までは嬲るような、粘着質の笑みだった。それが、完全にイカれきった、復讐鬼の目に変わる。
「今更気づいても遅いのよ、ゴミめ」
「なにか言ったかしら?」
「いえ、何も。先程も言ったでしょう?ジリジリと殺していく相手に喋る必要なんて微塵もないわ」
私が思いついた案は、いつもミクリがやっていたとルキちゃんから聞いている、名付けて「他人巻き込み作戦」だ。
私は貴族として
なので彼女を口で煽っている隙に、少しずつ後退していく。
光の弾幕が発射される音の遠くに、爆発音が聞こえてくる。皆は真面目に
「気持ち悪い笑みね、まるで希望を持っているみたい。そんな無様なやられ方をしているのに、まだ諦めないなんてさすがいいところのご令嬢ね」
「皮肉のつもりかしら?うまくないわよ」
「……うるさい、とにかく苦しんで死ね」
化けの皮が剥がれてきた。多分彼女は煽りに耐性がないのかもしれない。ミクリが言うところのくそざこ?めんたる?ってやつでしょうね。
そうこう口撃をしていると、彼女もついにしびれを切らしたらしい。今までとは段違いの魔法子が放たれた。一気に魔法子が励起したため、私の目にはあたかも閃光が撒き散らされたように見えたほどだ。
「もういいわ、そんなに死に急ぎたいなら組織の命令をとっととこなしてあげる」
「組織……」
「光の弾幕に貫かれて死になさい!」
刹那、私の脳内にアウラムの笑顔が浮かぶ。そしてすぐにミクリの顔……そして彼らと編んだ思い出が蘇る。いわゆる走馬灯というやつかしら。
いや、この胸の疼きが走馬灯ではないと叫んでいる。
じゃあ……。
その時、ミクリとある日会話していたことが思い出された。
〜〜〜〜
「ミクリ、ずいぶんと魔法の応用の部分の点数が高いわね?」
「アハハ、まあだいぶ勉強したからね」
どこか遠い目をして回想しているミクリに、私は質問を続ける。
「どうやって魔法に応用性を持たせているの?」
「私の場合は、魔法がどのような仕組みで成り立っているのかっていうところから学んだから」
「基礎的な部分から振り返ることで魔法の応用性を高めてるってこと?」
「んー、まあ近いかな。後は自分の元から持ってる知識に当てはめてるって感じ」
「持ってる知識?」
「まあ天啓的な?」
そういうミクリの顔はなにかいいづらそうな感じがして、そこには触れないようにしようと思った。
「魔法子ってさ、粒子じゃん」
「そうね」
「で、空気も粒子なことって知ってる?」
「そうなの?」
「正確には単一の粒子じゃなくて小さな粒子がいっぱい固まって粒子になっているらしいけど。本で読んだの」
「そうなっているのね。面白いわ」
「魔法子は粒子だから、魔法子を大量に出せば空気の粒子を動かせるんじゃないかなってことを書いたら、高い点数をもらえたんだよね」
「なるほど、そういうわけね」
「ちなみに、光は空気を圧縮したところに入ると曲がるらしいよ」
〜〜〜〜
「ハッ!それよ!【
光が迫りくる寸前。ちょうどよいタイミングで私の魔法子が爆発的に放たれる。
「何を!?」
「空気の動きを操作する!!」
瞬間、私の周りで暴風が吹き荒れる。そして形成されるは圧縮される空気。加速の応用で、風の指向性を作成し、一点に集めたのだ。
本来なら分の悪い賭けはしないのだが、
ミクリが言った通り、光は圧搾空気に入った瞬間、あらぬ方向へと飛んでいった。
「ありがとう。やっぱり私の救世主かもね」
そうボソリと呟いて、彼女に向き直る。
一度相手が手の内を出し尽くせば、今度は私のターン。
「光の速さを超えてあげるわ、雑魚」
ニヤリと嗤って、反撃開始だ。
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