第23話
『それではこれより、ハーブストス祭を始めたいと思います!!』
メガホン、というよりかはマイクに近い形状の魔導拡声器を使い、運営のお姉さんがステージの中央で開会の宣言をする。
やっぱりこういうのって美人を使うよね、眼福眼福。
ついでに横にいる人の良い笑みを浮かべた
ローマのコロッセオとよく似た建物の中だ。すり鉢状になった観客席から、俺達グンピーテ魔法学院の代表生徒を品定めするような視線が降ってくる。
「いやー、始まったわね」
「そうですね、緊張すると言うかなんというか」
「これからコイツらと戦えると思うと、だいぶ楽しみだなぁ……」
うん、一人サ◯ヤ人みたいな戦闘狂が混じってる気がするが無視しよう。
まさかこんな闘い大好きバトルジャンキーがラノベの主人公を飾ってるってことは、ないよなあ……(淡い希望)
『まず、こちらにおわすリリアルス王国皇太子さまの開会の挨拶を拝聴してもらいます!!それでは皇太子さま、どうぞ!』
『リリアルス王国第2皇太子、クロム・メルトナ・リリアルスだ。諸卿ら、この度は集まってくれたことに感謝を表する。ハーブストス祭はこのリリアルスの家系が代々紡いできた───』
まあ、どこの世界でもこういう開会の言葉とかは長ったらしい前置きがあることは察してたけど、いざ長ったらしくベラベラと喋られると苦痛やなあ……。
虚無ること10分弱、ようやく話の終りが見えてきた。
『ダンジョン内でのトラブルやアクシデントが増えている、皆も注意を払うのだ。それではそろそろ開会の言葉を締めようと思う。皆のもの、励むが良い!!』
うおおおおおおおおっっ!!と会場を震わせる大歓声。
知らないアイドルのライブに友達に無理矢理連れてこられたみたいな気分だ。つまりは疎外感。
俺が何もわからないような顔をしていたのか、隣のクリーナがこそっと教えてくれる。
「この国の皇太子のうち弟の方なんですけど、御顔が非常に整っていて尚且つ前線で一騎当千の活躍ができるほどの実力をお持ちなので、女性に大人気なんですよ」
「なるほどねぇ」
イケメンなのはムカつくが、やんごとなき立場なのでそれを大っぴらにするわけにはいかない。
『皇太子さま、ありがとうございます!!それでは此度のハーブストス祭の予定を発表していきたいと思います!』
またうおおおおおおおっという声。今度は男連中の野太い声だ。多分競技の方を見に来たのだろう。
お姉さんはその観客たちの反応を見て、
『1日目の本日は
「私とミクリが今日明日出て、アウラムたちは4日目以降に出る感じね」
「ずいぶんと長丁場だな」
「アウラムさん、このハーブストス祭は王都での大規模な祭りも兼ねているんですよ。なので街にも露店などが出ていて、それを巡る時間も含めての日程ではないでしょうか」
「露店……店?」
「ええ。簡易的な店で、路上に出店するものですよ」
なるほど、だからこんな沢山の人が来ているのか。
それに今クリーナの言葉に聞き捨てならない言葉が聞こえた。
露店だって……?それはまさに日本のお祭りじゃないか!!嗚呼ジャパニーズ射的!!嗚呼ジャパニーズくじ引き!!
っと、興奮してしまったな。俺は祭りの非日常感が大好きで、毎年欠かさず金を費やしているのさ。アイラブフェスティバルフォーエバー。こっちに来てもう祭りはないかと思っていたが、まさかこんなところで再会できるとは……。
「…クリ?ミクリ?」
「ああ、ごめん」
「早く控室行くわよ?」
気づけば周りはもう移動を始めている。
そう言いながら先を行くキズカを追って、俺は小走りするのだった。
@
「こちらワンダー、キズカ・サティアースが控室に行った。どうやら今日の競技のどちらかに出るようだ」
周りは祭りという熱に浮かされ、皆が陽気になっている観客席。
『こちらツール、会場の警備騎士団は巡回していない』
『こちらスリープ、了解。
『こちらフォーカス、了解。
「こちらワンダー、その女も付いておけ。なにか脅しに使える可能性はある」
『こちらフォーカス、そうさせてもらう』
悪意は具体的な形をもって顕現する────……。
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