第15話
「君たちの話はこいつ……アウラムから聞いているよ」
受付嬢に通された部屋には、男が長机に肘を置き、待っていた。
そう言いながら、髭面の壮年の男が、こちらに握手をするように手を出してくる。
俺たちはその握手に応じながら、男──ギルドマスターから、事情を聞く。
「それで、一体どんなご要件なんですか」
「ああ、そうだな。直に用件を言ったほうがいいだろう。君たちには、ダンジョンに突如発生した武装集団の調査をしてほしいのだ」
ギルドマスターは単刀直入にそう言ったが、俺は引っかかるものがあった。
突如発生した武装集団……?その言い方はまるで……
「まるでダンジョンから人が生まれた、みたいな言い方だな」
アウラムが俺の二の句を継いだようにそう言った。
それに苦笑しながら彼は答える。
「そうだな。そいつらは人の形をしていて、言語を話す様子も見られるのだ。そして何より、強い。武器や魔法を駆使するだけでなく、技のような動きも使ってくる。人みたいだろ?」
確かに、そこまで知能があり、人形をしているのは人と言っても大げさではないだろう。
俺はうなずきながら、思った疑問を口にする。
「ギルドの冒険者達には頼らないんですか?私達よりはるかに経験と実績がありますけど」
「それについてなんだが……我らのギルドに所属しているα級冒険者3人を派遣したが、音信不通となってしまったんだ」
α級というのは、いわゆる1級やA級といった冒険者の最高のランクだ。
正確に言えばΖ級が一番上なのだが、この世界で4人しかいないので、ほぼ換算しなくていい。
そんな実力者3人が音信不通行方不明になるというのはまずい、というか危機的な事態だろう。
そんなことを公にすれば、混乱や暴動が巻き起こるのは想像に難くない。
秘密裏に呼び出したのはそういう理由だろう。
「だから知り合いの中でかなり実力のあるお前さんと君たちにこうして依頼をしているんだ」
「なるほどね、分かったわ。別に受けても大丈夫よね、ミクリ」
「もちろんだよ」
そこで俺に聞いてくるということは、【合成】使って戦ってね、ということなのだろうか。
「じゃあ、一旦ダンジョンに潜ってみるか。見てみないと始まらないしな」
ということで、俺たちはダンジョンで起こった異変を調査することになったのだった。
原典のラノベではこのあと……。
*
「フッ!」
薄暗く、ひんやりとした空気が満ちているダンジョン。
その岩でできた地面が急激に盛り上がり、目の前の蜘蛛型の魔獣の腹を貫いた。
ダンジョン上層、俺は始めての探索に気分を高揚させていた。
しかし依頼ではあるので、逸る気持ちを抑えて2人──主にアウラムだが──のサポートに回っていた。
「少し魔獣の量が多いか……?」
「アンタ、結構慣れてるわね、ダンジョンに。」
「ああ。何回か潜ったことあるしな」
「それにしても、ギルドマスターが言ってた集団、全然いないね」
「そうだな、もう少し深いところかもしれない」
「それなら私も一応、魔法の準備をしておかなきゃね」
3人の精鋭という人数の少なさもメリットに入り、行進速度はかなり早い。
すぐに下の階層に到達した、その瞬間である。
ドォン、とダンジョンの遠くから、爆砕音のような音が聞こえてきた。その音に合わせるように、パラパラと天井から石粉が落ちてくる。それほどまでに起こった爆発が大きかったのだろう。
俺たちは全員で顔を見合わせ、言葉を交わす暇もなく走り始めた。
現場につくと、大惨事という言葉が自然と脳内に浮かんでくる有様であった。
「ッ……!?」
何故か黙りこくっているアウラムを横目に、更に詳しく現場を解析する。
大きなクレーターからは煙が漂っており、その中心には魔獣のものと思しき肉塊と血しぶきが飛び散らかっている。
そばに立っているのは、この事態を引き起こした張本人だろう。見た目はちょうどギルドマスターくらいの年齢の、いわゆるロマンスグレーといった男だ。男は憮然とした態度で、こちらを見ている。
その奥には仲間なのだろう、数人かの武装状態の人(?)が臨戦態勢で立っている。あれが言われている集団だろう。
そこで不意に、アウラムが叫んだ。
「どうしてここにいるッ!!!父さん!!!」
男はつまらなさそうに、フンと鼻を鳴らしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます