第13話
「よし、今日の練習はここまでにするか!」
「イエス、サー!!」
1週間ほど経過した。
それほど時間が経てば、あの地獄に近い修行……アウラムいわく練習だが…にも慣れてくるというもの。
余裕が生まれた俺は、こうしてたまに悪ふざけをするようになってきた。
ちげーし。尊敬してるからじゃねーし。
剣を片付ける彼に声をかける。
「じゃあアウラム、それ片付けたら勉強の方見ようか?」
「了解!」
そうこうして、図書室である。
「それじゃあ、開始!」
アウラムは訓練の教官役をやっていたにも関わらず、その疲れなど見せないようにカリカリとペンを動かし始めた。
もちろん俺自作のテストである。
この一週間、とにかく苦手教科の理解と暗記をさせたのだが、苦労で苦労で……。
まず地下育ちなので一般常識を知らないのだ。
まあ、ラノベ主人公ってそういうもんがテンプレなんだけどね。
だいたいテンプレなら地下の理論が現代の洗練された理論になっている、みたいな感じじゃないの?
それに計算力がない。
こんなんでどうやって魔法を制御しているのかマジで疑問になるレベルでだ。
天才肌は羨ましいぜ……。
「できたぞ!」
「お、じゃあ見せて?」
アウラムは完全に埋めきった解答用紙を自慢気に俺の眼前に突きつける。
その紙を受け取り、精査していく。
正解率は……5割から6割くらいか。
1週間前の惨状を考えたらかなりの及第点を上げられるレベルだろう。
俺は頷きつつ、答案をアウラムに返す。
「うん、これなら今回のテストくらいなら乗り越えられると思うよ」
「ありがとな、ミクリ」
「ううん、お互い様だよ」
なんかやけに爽やかな笑顔だな……。
そんなに俺の太鼓判が嬉しかったのかな?
@
「ふぃー……終わったわね」
「そうだね……!」
長時間座っているテストで凝り固まった体をほぐすように、大きくキズカが伸びをする。
5日間にも及ぶ、期末テストが終わったのだ。
そして心配なアウラムの様子は……。
「ぼへぁー……戦うのよりも断然こっちのほうが疲れるぜ……」
変な声を漏らしながら、机に突っ伏すアウラム。
どうやらなんとか突破できたようだ、一安心。
力が抜けきっている彼に、キズカが近づき話しかける。
「お疲れね、アウラム」
「まあな……ミクリのおかげでなんとか行けたぜ」
「それなら良かったわ。そういえば、ミクリの実技試験はどうなったの?」
「まあ、なんとかアウラムが教えてくれた剣術を使って……」
そういえば、あの修行をさせるようにアウラムにけしかけたの、キズカだったよな……。
今更ながらそのことを思い出し、復讐としてこっそりと【合成】を使う。
キズカの腕の部分の脂肪を分離、腹にくっつける……。
これで良し、と。
気づかれないように、話題を逸らすか。
「そういうキズカちゃんはどう?筆記の方は出来た?」
「まあ、私も私で勉強してたしね」
「キズカは要領がいいし、俺に引けを取らない戦闘力あるからな。余裕綽々ってやつだろ」
いや、多分ガチで勉強してたと思うけどな。
キズカの裏設定(?)で根は陰キャで努力家っていうことが最近わかったので、そうだろうと推測できる。
「それより、この後どこか行かない?装飾品店とか」
「いいね!私も何もすることなかったし、大賛成だよ」
「じゃあ、放課後に集合でいいわね」
「俺は帰って素振りでもするか。あ、そうだ。あのおっちゃんに呼ばれてたんだった」
「ん?あのおっちゃんって、誰のことかしら?」
「いや、何でもない。ただ帰る途中に寄るところがあるってだけだ」
キズカ、そのおっちゃんは多分ギルドマスターのことだ。
元のラノベでは、学園に来る途中で、ギルドに起きていた騒乱をアウラムが解決することでギルドから報酬をもらうっていう話がある。
その時に知り合ったのがギルドマスター、だったはず。
ってそうだ、夏休みに入るのか!
忘れていた、あのイベントがあることを。
俺は来たる夏休みに向けて、期待感と闘志を膨らませていくのだった。
まあ、その前にテスト返しあるんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます