第12話
「こいつ……酷すぎるわね」
見事に0点である。
こういうラノベの主人公って、頭がいいのがテンプレじゃないの?
新魔祭から数週間、もうすぐ学院の期末テストが近づいてきた。
ここのグンピーテ戦術学院は、学院と冠している以上、テストをするのは避けられないということなんだろう。
俺、キズカ、アウラムの3人で、勉強会という訳だ。
この中で1番成績がいい俺が、キズカとアウラムのためにテストを作ったのだ。
「にしても、意外だったね」
「そうね。強さと賢さは比例しないのかしら?」
「感覚でやってるからな」
「うわ……天才肌ってやつかしら?」
いや、キズカも人のこと言えないと思うが。
生まれつき大量の魔法子とその操作力を持ってるからな。
「そういうキズカちゃんは成績いいよね」
「ミクリほどじゃないわよ。ミクリ、相当勉強してきたんでしょ?」
「まぁね」
マジで大変だった。
転生した後に神様みたいな人が、ラノベの物語の通りにしないと元の世界に帰れないと言っていた。
なので、ここに入るためにあまり良くない頭を魔改造するレベルで勉強したのだ。
そのおかげで【合成】の上手い使い方が思いついたのはいい。
だがルキにめちゃくちゃ話しかけられたり、ルキに遊びに誘われたり、ルキが突進してきたり……。
いや、やめよう。
「でも、もしかしたら実技試験とかもあるかもね」
「お、本当か?」
「ここは戦術学院だから、あり得るかもってだけだけど」
「ふーん……なら、戦うことも視野に入れておかないとね」
なぜこっちを見るんだ、キズカ。
もしかして【合成】をアウラムの前で使えということか?
そんなことをしたらめんどくさいことになるのが目に見えている、というか何ならラノベではそういう展開なかったからそういう事できないし。
俺は否定の意味を込めた半眼光線をキズカに浴びせた。
「ん?どうかしたか?」
「いや、アンタと私はいいわよね。ミクリは実技試験をどうやって突破するのかしらと思っただけよ」
おいキズカ、俺を売るんじゃねえ。
「確かにな。どうするんだ、ミクリ?」
「んーとね、剣術の練習しようかなって」
「じゃあ付き合うぞ。剣術なら教えられるからな。教えられっぱなしは悪いし」
「良かったわね、ミクリ」
ハメられたな……。
@
聞いてくれ前世の俺。運動した後の汗で服が張り付くのエロいとか言ってたの、追い打ちでしかないわ。
「ハッ……ハアッ……ハフウッ……」
俺の口からは吐息(全くエロみを感じない)が絶え間なく吐かれていく。
運動ってこんなにきつかったっけ……。
「ミクリはもう少し体力をつけたほうがいいかもな」
いや、お前地底育ちだから。しかも魔族に育てられてるからな!
人間の規格じゃねえのよ!
しかもキズカはサラッと帰りやがったし!
あいつあとで脂肪を【合成】してやるからな!
「ちょ、ちょっと、休憩しようよ…」
俺がそうアウラムに提案すると、これ以上続けるのは無理そうだとわかったのか、同意してくれた。
アウラム優しい……。
「どうしてアウラムはそんなに強いの?感覚って言ってたけど、その感覚が鍛えられたわけがあるでしょ?」
「俺は……実は地底の生まれなんだ」
「……え?」
「なんてな、嘘だよ、嘘」
このエピソードを通じて、ミクリはアウラムに好意を寄せ始めるんだったかな?
「…そうだよね!地底には魔族がいるっていうおとぎ話、ホントなわけないもんね」
「俺が強い理由は、山奥で修行したからだ!」
いやお前は忍者かい!
「それじゃさっきと言ってることほぼ同じだよ!」
「はは、そうだな。要は教えたくないんだ、分かってくれよ」
「それならまあいいんだけど……」
「さ、修行の、あいや、練習の続きするか!」
「今修行って言ったよね!?アウラムもそう思ってるレベルなの!?」
こいつが修行っていうレベルを女の体の俺にやらせるなよ!!
「いや……れ、練習見てたら、足りなそうに見えたから……」
やっぱ私、こいつ好きになりません。
そう心に決めたのだった。
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