第8話
気まずい……。
俺元々陰キャボッチのオタクだぞ!?
今は女だけどさ!
何で女の子二人に見つめられてるのさ。
「で、姉さん?この女は誰ですか?二人目の妹分ですか?」
「誰が妹分よ!私はミクリの友達、キズカ・サティアースよ!」
「ん、サティアース……?って、あのサティアース家!?」
キズカが突っ込むと、ルキは目を見開いてあからさまに驚いた。
まあ久しぶりに会った姉貴分(一方的)がかなりの有名人と友達になってて、何ならお茶を一緒にしているんだから、そりゃビックリしない方がおかしいと言うかね。
「知らずに生意気な口聞いてすみません、キズカさん」
「え、ええ。別にいいわよ」
「私はルキシャ・ロウドラスと言います。昔、ミクリ姉さんに助けていただいたことがあるんですよ」
「そうなのね。こんな可愛い子がミクリに懐いてるの、おかしいと思ってたわ」
「ちょっと、どういうこと?おかしくないでしょ!」
そんなふうに思われてるとは、心外だよ!
俺が大きい声を出したせいで、少し間が悪くなった。
それを見かねてか、話題の元であったルキが話題を転換する。
「ね、姉さんはどうなんですか、学園では」
「まだ入ってからそんなに日が立ってないけど、楽しいわよ。あとアウラムくんが面白い」
「アウラムくん……くん?姉さん、もしかしてその人、男ですか?」
そこに食いつくの!?
この子俺のこと好きなの!?
いや好きじゃなかったら姉さんとは呼ばないけど。
「いやー、男ではあるんだけど……」
「そいつ、戦闘狂のバカ野郎だから心配しなくていいわよ」
さっきのやり取りはないことにしたようだ。
キズカは言葉に詰まった俺の二の句を継いでアウラムの説明をしてくれた。
「そうなんですね、なら安心です」
そうして三人になった女子会は、他愛もない会話を表情とともに咲かせていったのだった。
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「嘘でしょ、あれが【合成】だっていうの……?」
ミクリとその妹分…ルキちゃんと別れた帰り道、私は衝撃のままにそう独り言ちていた。
脳内に浮かべるはあの精緻な分解魔法。
ありふれた【合成】で、あんなものどうやって……。
いや、ミクリが嘘をついているっていう可能性も捨てきれないけど、そういうことはあまり疑いたくない。
曲がりなりにも学友だからね。
「とにかく、あの魔法は要観察、だわ」
普段の【合成】を使ってるときだけでも、なにかヒントを得られるかもしれないし。
「あとミクリ、どう捉えても私の魔法を知りたがってるわね」
上手く濁したが、それも何回使えるかわからない上に実践の授業とかあったらバレるし。
私の魔法は、見せたら絶対に食いつかれる。
教えろって言われるのはもううんざりだ。
どんな魔法なのかというと、加速・減速を司る魔法だ。
私の常人離れした魔法子の量と操作力によって、対象物を上手く受け止めたり押し出したりする、という仕組みだ。
私の魔法子の量でやっと実戦レベルなのだ。
言ってしまうと悪いが普通の人には受け止めようとした瞬間ドカン、だろう。
「というか、ミクリがあんな魔法使えるってことは……」
……ミクリも私と同じレベルの高度な操作力を持っているかもしれない。
「ミクリならわかってくれる……なんてね」
一縷の望み、ってやつよ。
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