第7話
アウラムが謎に教官と共感していた(俺渾身のギャグ)、あの森林訓練から一週間ほどが経過した。
訓練から今日までは、なにか大きな事件やアウラムのトラブルもなく、つつがなく授業が進んでいた。
いや、毎朝俺を挟んで険悪になるアウラムとキズカに胃痛を覚えさせられることは別だけどな。マジ勘弁してくれ。
そして俺は今、都の中心部のとあるカフェで、胃痛の原因その1であるキズカと向かい合っていた。
午前の昼前の時間、カフェは開店したばかりの静謐さで満ちている。
そんな中、紅色と黄金色の髪を揺らす美少女は青色と紫、白色の髪の女の子を見つめる。
青の髪を持つ女の子は、所在なさげに視線を彷徨わせたあと、軽い笑みを浮かべながら紅茶をすする。俺なんだけど。
気まずい……。
ある程度世間話はする仲だが、明確に話しかけて、遊びに誘われたのはこれが初めてだ。
彼女の瞳を見るとありありと興味、好奇心がこちらに向けられていて、どことなく恥ずかしい。
何かしたかな俺。不安になってくるなあ……。
「そ、それで、今日はどうしたの?」
俺が雰囲気に耐えきれずにたどたどしく口を開くと、なんてことのないように彼女は答えた。
「あら、普段喋る友達をカフェに誘うのは事情が必要かしら」
「う、確かにその通りね」
めっちゃ痛いところ突いてきたな。ぼっちオタクには特別なんだよ、こういうイベントは!
しょうがないでしょ!
話題転換して空気を直そう、そうしよう。
「そういえばアウラムくんとはどうなの、決闘とかしないの?」
「ああ、あいつ?あいつと決闘するならまた今度にしようと思ってたわ。あいつのことだし、いつでも喜々として受けるでしょ」
「あはは、戦うの大好きだしね、アウラムくん」
アウラムのこと好きになってくれないと俺の転生人生終わらんからとっとと惚れてほしいが、仕方がない。
ゆったり見守りつつ、後押ししてやろう。
「毎朝見てて思うけど、あいつ、人間の常識を学園で学んでる感じしない?」
「そうねぇ……あの魔法技術、どこでどう鍛えればああなるのかしら」
「……あなたも大概だけどね」
ボソリと何かつぶやかれた気がするけど、気のせいかな。
「フン、あいつがいくら凄かろうと私の足元にも及ばないからね!決闘のときは見ててよね」
「うん、楽しみにしてるよ」
「私から言ったけど意外ね、ミクリは決闘とか楽しむタイプかしら?」
「人並みには興奮するね。お祭りとかで盛り上がる、的な?」
「なるほど、私も少しわかるわ、その気持ち」
さっきから質問が鋭いな、中身男であることを追及されてるみたいだ。
もう一回話題転換でバレないようにしよう。
「ふと気になったけど、キズカちゃんの魔法って何なの?軽くでもいいから教えてくれないかな…?」
「そうね……、私の魔法はかなり特殊だから、言ってもあまり参考にならないわよ?魔法子の動きもかなり細かいものを要求されるしね。そういうミクリはどうなの?使える魔法って何?」
おおう。急に食いつきが良くなったな。
魔法オタクっていう設定、あったっけ?
ここで隠す意味もないし、あの必殺、炭酸水チェンジもわかるわけがないだろうし言うか。
あ、そうだ。そういうことにすればさっきの追及にも納得感が出るぞ。
「笑わないで聞いてくれると嬉しいんだけど、【合成】だよ」
「えっ……」
俺がそう自身の魔法を明かすと、キズカは目を見開いた状態で固まった。
いやはや、そんなガチのトーンで驚かれるとは。
確かに俺たちが通っているグンピーテ魔法学院は、勉学よりも戦闘の方に重きをおいた学院だ。そんな学校にどう使っても非戦闘系でしかない魔法のみを持つ俺が入学しているのは他人からしたら奇跡が起きたとしか言いようがないだろう。
でもこんな驚くかな?
「本当にあの【合成】なの?あの鍛冶師とか薬屋が持ってるの?」
「うん、というかそれ以外に【合成】っていう魔法、無くない?」
「あ……え、ええ、そうね。確かにその通りだわ」
「やっぱり驚くよね、非戦闘系魔法の筆頭だもん。そんな魔法しか使えないのにどうやって学院に入ったんだ、ってアウラムくんにも聞かれたよ」
「アウラムも知っているのね、そのこと。ちなみに、どうやって戦闘試験をクリアしたの?」
「それは……秘密にしてもいい?」
だってあの必殺見せたら食いつきそうだもん、今までの反応からしてさ!
「ええ、もちろんよ。私も秘密にしたのだし、当然の権利だもの」
「ありがとう、キズ───
俺の言葉は言い切る前にぶった切られた。
向こうからヤツ、いや失礼か、彼女が大手を振りながら、土埃を立たせる勢いで走ってくるのがわかったからだ。
というかなんか、怒ってない?遠くにいるのにわかる怒りって……何さ?
「姉さあああああああああああああああああああああああああん!!!!!!誰よその女あああああああああ!!!!!????」
バッタリ野生の妹分に出会ったのだった。
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