第38話『打倒魔王-3』


「レン様。わたくしに一つ策があります。魔王軍への潜入作戦の成功率を高めつつ、上手くいけば王国軍が連れて来た王都の住民達と村の人たちを守り切れる。そんな作戦です」


 そんな事をサラは言ってのけた。


 なんだその全て万事解決みたいなご都合作戦は。

 とりあえず俺は「どんな作戦なんだ?」とサラに尋ねる。


「魔王軍への潜入するため、四天王であるラザロとレイヴンにわたくし達が成りすます。これはレン様のお力をもってすれば簡単でしょう。しかし、レン様から聞いたラザロとレイヴンの性格上、彼らが人類と言う敵を前にしながら戦いもせずに魔王の元に帰参するというのは少し不自然かと思われます」


 確かに……言われてみればその通りか。

 ラザロとレイヴン。

 あの二人は戦闘を楽しんでる感じだったからな。


 その二人が王国軍という敵がすぐ傍に居るのに魔王の元に帰参するというのは……確かに不自然に映るか。


「ですが、そこに手土産があれば話は別です」


「手土産?」


「はい、わたくしの作戦はこうです。まず、わたくし達二人が魔王軍四天王であるラザロとレイヴンになりすまし、その上で森の中、罠にかかった王国軍を攻め立てます」


「ほぉ?」『はぁ!?』


 いきなり突拍子もない事を言い出すサラ。

 ノクティス様も作戦概要説明が始まったばかりだと言うのにいきなり驚いている。


 とりあえず、続きを聞いてみよう。


「攻め立てる時刻は夕刻。まだ日の光が出ている時間ですが、相手は罠によって負傷兵を多く抱える王国軍。日の光がある程度さえぎられている森の中での戦闘ならさほど問題ないでしょう」


「そうだな」『いや、それはそうだろうけど……』


「ただ、攻め立てる前にレン様のお力で森にある罠を全て一時的に働かないようにしてもらいます。その上で、わたくし達は王国軍を罠が密集していて、なおかつ大軍が駐屯できそうな場所へと追い込みます」

 

「ふむふむ」『んんんんんん?』


 そんな場所に俺は心当たりはない。

 ないが……もしなくても作ればいいだけだしな。問題ないだろう。


「その攻防の際、王女をわたくし達が誘拐します」


「誘拐」『誘拐!?』


「ええ、誘拐です。なにせ王女はレン様のお力の一端を知る人物。そのままにはしておけません。王女が魔王軍側にその情報を流すのはレン様にとって不都合なはずですしね。なのでこれを捕らえ、わたくしの魅了魔術で王女の頭の中にある勇者に関する記憶を消去。その上で、レン様のお力に関して誰かに話したか聞き出します」


「ほうほう」『いや、あの……』


「そうして王国軍を追いやった後、レン様には一時的に働かないようにした罠を全て作動可能な状態に戻してもらいます。時間があれば罠の数を増やしてもいいですね。その後、王国軍の隊列を崩したわたくし達は王女という手土産を持って魔王の元へと帰参。その間、仮に魔王軍が王国軍を攻めたとしてもわたくし達が仕掛けた罠に阻まれるので時間を要するはず。その間にレン様が魔王を倒してくれさえすれば――」


 そうすれば魔王を失った事により魔物達も弱体化し、事態は解決するだろうと。

 そう言う事か。


 ふむ――――――


「いいねっ!!」『おかしいでしょ!?』


 俺は親指をぐっと立て、サラの立てた作戦を絶賛。

 しかし、なぜかノクティス様はお気に召さなかったらしい。


「どうしたんですノクティス様。この作戦なら魔王軍に違和感なく潜入出来て、王国軍も無事助かる。みんなハッピーで最高な作戦じゃないですか」


『結果的にはそうだけれどっ! でも王女を誘拐だとか王国軍を攻め立てるとか……そんなの勇者としてどうなの!? アンタには勇者としての自覚はないのか!?』


「………………そんなの俺にあると思います?」


『ホントだ!? 勇者としての自覚なんて持ってるわけがなかったっ!!』


 その後、ノクティス様はあーだこーだと葛藤した後、俺とサラが立てた作戦を認めてくれた。


 かくして。


「これなら……魔王をれるか」


「さすがレン様っ。この方法なら魔王だって簡単にれると思います♪」


 いや、あの……サラさんや。

 さすがと言ってくれるのは嬉しいけど……この作戦、考えたのはほとんどあなたですよ?

 土台を考えたのは俺かもしれないけど『王女誘拐して魔王への手土産として魔王の元へと帰参する』とか俺は考えてすら居なかったからな。


 王女を誘拐し、俺にとって不利益な情報を彼女から消し去る。

 これは確かにやらなければならない事だった。

 それをこうして作戦に組み込んでくれた事、サラには感謝しないといけない。


『いや、えっと……確かにアンタの作戦通りにいけば魔王を倒せるでしょうけど……まぁ倒せるんだから文句は言わないけどね。勇者らしくはないけど……』


 その後、俺はノクティス様から魔王を倒した後は俺の邪魔はしないようにと確約させ。



「よしっ――――――準備を始めるかっ!!」


「はいっ!!」

『ええっ!!』



 こうして。

 俺とサラは最終決戦に向け、準備を始めたのだった――


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