第30話『一条の光』
「なるほど、これが魔術か……。ありがとうなサラ。これで俺の奇襲プランはより完璧なものになったよ」
「お役に立てて何よりです。ですが……良かったのですか? わたくしがレン様に付与したのは夜を見通せる暗視の魔術と遠くを見れるようにする遠見の魔術のみ。後8つは追加で付与できますけど……」
「え? マジ? そんなに付与できんの? それって付与術師としてチートなんじゃないか?」
「さぁ? 他の付与術師の事をわたくしはよく知らないので……」
他の付与術死の事を知らないって……それもなんだかサラが無自覚チート系の主人公っぽい伏線だなぁおい。
普通の付与術師は最大三つくらいしか付与できませんとか……ありそうな話だ。
さすがサラ。
補助の魔術が得意と言っていたけど、ここまでとは思わなかった。
しかし――
「いや、でもいいよ。これだけあれば十分だ」
そう言って俺は遠くに見える泉の辺りを見る。
そこには少し大きなテントが張ってあった。
想像の能力によって中に熱源反応が二人分ある事を確認。
今頃あそこで四天王二人はぐーすかぴーと眠っているのだろう。
――現在、俺とサラは例の泉を見渡すことが出来る高台に居る。
向こうには匂いを感知する獣人ラザロさんが居るので、もちろん匂いを消した上でだ。
匂いを消すのには俺の能力を使った。
サラの付与術では匂いを消したり誤魔化したりは出来ないらしいからだ。
匂い消しの薬品もこの世に存在はするらしいのだが、こんな田舎の村ではすぐに手に入らないとの事で、イメージしにくいながらも頑張って俺とサラの匂いが消えるようにとイメージしてみたのだが、うまくいっているようだ。
日は完全に落ち、今は夜。
ノクティス様からもらった俺の『想像を創造する』力が最も発揮できる時だ。
加えて、向こうはこちらに気付いた様子はない。
今のところ、全てが順調だ。
「敵の位置は割れましたね。しかしレン様……本当にやるのですか? 四天王二人も相手だなんて危険すぎると思うのですけど……」
「それは俺も思ってる事だけどな。でも、ここで退いたら俺達の住むアヴリイル村が焼き尽くされるんだぞ? それはさすがに……なぁ」
「さすがレン様。他のどうでもいい人の為に命を張れるなんて……とても格好いいですっ!」
「どうでもいい人って……。サラの方があの村じゃ色んな人と仲良くしてなかったか?」
「そうですね。ケイルさんとかカラチナさんとか。何人もの人と仲良くさせて貰っていますよ?」
「それ、どうでもいい人?」
「ですね。どうでもいい人たちです。というか、レン様と比べれば他は皆どうでもいいです」
「そ……そうか……」
相変わらず重いなおい。
というかサラさんよ。
気づいてるだろうけどあの村じゃあなた人気者なんですよ?
それなのに村人達をどうでもいいって……あの人たちも報われないなぁ。
「ともかく、俺はあの村に愛着が湧いてきてるし、今の生活を捨てるのも嫌だからな。少しくらいの危険は承知の上で……でもやっぱり危ないのは嫌なので遠距離からさっくり決着をつけようと思います」
「さすがレン様。その素晴らしいリスク管理術……わたくし、感服いたしました」
もはや俺が何を言っても称賛してくれるサラ。
いつもの事なのでスルーしておく。
とはいえ……やっぱりこう褒められると良い気分になっちゃうよなぁ。
そこら辺、俺も単純というかなんというか……まぁいいか。お互いこれで幸せなんだし。
というわけで。
「さぁ――――――やろうか」
俺は手を空へと掲げ。
「天に召します我らが神よ。愚かな者達にその
詠唱を始める。
もちろん、別にこの詠唱自体に意味はない。
意味はないが……こっちの方がよりよく高威力の技をイメージできるのだ!!
決してただ格好つけたい訳ではない。
今が夜で。闇討ちみたいな形で四天王を
「それは肉食の獣、それは反逆の騎士。神に抗う愚か者たちをその一条の光にて燃やし尽くせ」
そうして俺は。
想像を創造する力によって、存在しない超兵器をイメージした。
「喰らえ神の怒り。『ロッズ・フロム・ゴォォォォォォォォォォッド』」
それは宇宙空間からの一撃。
重量100キロの金属棒を発射し、地表へと落とす超兵器だ。
現実には存在せず、ネットなどで
だが、噂になるだけあって様々な作品でその兵器は超兵器として登場している。
だからこそ――俺ならばそれを想像し、創造できる!!
――ゴォォォォォォォォォォォォォォンッ
目にも見えない速さで天空から何かが泉の方へと落ちていった。
その速さ――マッハ9.5だ。
どれだけあの四天王二人が強かろうが、この一撃を防ぐ術はないはず。
「さぁ――続けてどんどん行こうかぁっ!!」
引き続き天空から超兵器をバンバン泉にあるテントへと投下していく俺。
この超兵器は核みたいな兵器とは違い、効果範囲が非常に狭い。
せいぜい着弾地点の周辺にある家が数軒、崩壊する程度だ。
だからこそ……こうして距離を取っていれば、気軽に何度でも放てるっ!!
――ゴォォォォォォォォォォォォォォンッ
――ゴォォォォォォォォォォォォォォンッ
――ゴォォォォォォォォォォォォォォンッ
――ゴォォォォォォォォォォォォォォンッ
――ゴォォォォォォォォォォォォォォンッ
それはさながら神の怒りのように。
泉の辺りが神の槍(金属棒)によって荒らされていく。
「さすがレン様ですっ。最初の一発で終わってそうなのにそこまで念入りにするだなんて……。こんなに派手に暴れたら王都の方から調査の手が伸びるのはほぼ間違いないですねっ!」
「………………あ」
しまった。
そこまで考えてなかった。
「へ? もしやレン様……何も考えずにやってしまったんじゃ……」
「い、いや。いいんだよこれでっ!!」
俺は言い訳がましくサラにこれで良かったんだよと主張する。
そうだよ。これで良かったんだ。
王都から調査の手が伸びるとかそんなのよりも、まずは敵対しているあの四天王二人を倒さなきゃならないんだから。
もっと目立たずにあの二人を倒す方法もあった気はするけど……それについては安全策を取った結果だと。
そう思っておこう。
「あぁ……必死に自分で『これで良かったんだ』と言い聞かせながら内心『ヤッベ……』と冷や汗をかいているレン様も魅力的ですねっ! そういう所、可愛くてとても素敵だと思いますっ!」
「可愛いとか言われても嬉しくねぇよっ!?」
なんなんですかサラさん。
あなた、もしかしてノクティス様と同じで俺の心が読めたりするんですか?
思いっきり図星だよチクショウッ!!
そうしてその後。
俺とサラは直接泉の方に向かい、魔王軍四天王がどこかに潜んでいるか警戒しながら探索したが問題なし。
一応四天王二人の死体も探そうと思ったのだが……あまりにも破壊の爪痕が深く、とても二人分の死体なんて探せるような状況ではなかった。
俺は二人が居たあたりで『お化け掃除機』を使って周囲の霊を吸いこみ。
かくして、俺達は魔王軍四天王の二人と対面することなく、倒したのだった。
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