第16話『――見つけました』
(もしもーし。ノクティス様ーー? この四天王その2さんの名前ってなんて感じでしたっけ?)
そう頭の中でノクティス様に呼びかけるも……やはり反応はなし。
やはり夜の女神であるノクティス様は夜の間、他の事で忙しいらしい。
仕方ない。
俺は見えない敵である魔王軍四天王その2さんを滅ぼすべく頭の中でイメージを練り………………すぐに完成させる。
やはり夜の女神さまの恩恵を最も強く受けることが出来る夜だからなのか。
それとも俺のテンションが上がっているせいなのか。
ともかく、俺は簡単にイメージを浮かべることが出来た。
そして――
「おのれ……この我をどこまでも馬鹿にして……。いや、待て。先ほどから女神女神と言っていたな? それに我の事を四天王その2と……。貴様……いや、確かにアブカルダルムからの連絡が途絶えていると聞いていたが……まさか貴様はゆ――」
「あ、ごめん」
四天王その2さんが何かを言っている最中。
だというのに、俺は四天王その2さんを倒すイメージを固めてしまった。
つまり――
「む? 何について謝っているのかは知らんが……もう遅いっ! そもそも、貴様が勇者だろうとなんだろうと関係なかったのだ。この我をここまでコケにしてくれたのだからな。貴様が何者だろうと、我のやる事に変わりはない。貴様は我のモルモットとなる運命なのだ。そうして永遠の痛苦を味わいながら絶望と共に刻め。このリッチモン――ンンンンぎゃぁっ!?」
なにやら雰囲気たっぷりに格好つけていたリッチモンこと四天王その2さん。
彼がその名を名乗ると同時に、その後頭部に天空から落ちて来たとても小さな流星がぶつかった。
「ぐえっ!? な、なんだこれは!? 一体なにが………………は?」
そう言って元凶を探すべく頭上を見上げる四天王その2さん。
そうして見上げる先――――――天空からは俺のイメージで描いた通り、星々が四天王その2さんめがけて降り注ごうとしていた。
――もっとも、気勢をくじかれたせいで俺の脳裏で固まっていたイメージは少し崩され、四天王その2さんめがけ降り注ぐ星々は想定よりも小さなものになってしまったが。
うーん……頭に出来上がったイメージを今更崩すなんて無理だし……もうこれでいいか。
なんかグダグダだし不意打ちみたいな形になってしまったが、俺は開き直って格好つけることにした。
「――――――喰らえ。シュテルゲイザー。フルエクスティンクションレイッ!!」
そう宣言するのと同時。
天空から俺の描いた通りの神聖そうな星々が四天王その2さんへと豪速で着弾する。
「んなぎゃぁぁぁぁぁっ!? 馬鹿な!? これほどの術を何の前触れもなく行使する……だとぉ!?」
物理的なダメージを無効化できるらしいレイスの四天王その2さん。
だが、俺がイメージした『レイスとか幽霊みたいなアンデッドにも効きそうなすげー神聖そうなハンマー』が有効なのは実証済み。
だから俺はその神聖特性を天空から落ちる星にも付与した。
見る限り、それは有効だったらしく四天王その2さんはメチャクチャ苦しんでいる。
「その不浄な魂を今世に残す訳にはいかない。さぁ……星々の光に浄化され消え去れ、リッチモンッ!!!」
俺は先ほど聞いたばかりの四天王その2ことリッチモンの名前をここで初めて呼ぶ。
やはり締めは敵の名前をきちんと呼んで綺麗に締めたいからな。
しかし……リッチモンか。
なんかデ〇モンにでも居そうな名前だな。
「リッチモン……だとぉ!? この……どこまでもこの我をおちょくりおってぇ!!! 許さん。絶対に許さんぞっ!! 勇者ァァァァァァァァァァァァァッ――」
成功を間近に控えた作戦を俺に潰されて苛立っていたのだろう。
幽霊魔術師リッチモンは呪詛の言葉を吐きまくりながら流星をその身に受け続けた。
だが、それも一瞬の事で。
数多の星々によって、リッチモンはあっという間に消滅したのだった――
★ ★ ★
――サラ・ヴィヴァレンティ視点
それは壮絶な光景でした。
アレほど凶悪で、常人では太刀打ちできないと思わされるほどの魔力を有していたレイス。
それをこの
「――――――見つけました」
わたくしを助けてくれる
ずっと探していた人。
わたくしが冒険者になった理由そのもの。
わたくしだけの理想の王子様を探すべくわたくしは今日まで生きてきた。
そうして遂に今日……わたくしは理想の王子様を見つけました。
「レン様――」
その
格好つけようとして目元をキリっとさせる
あれほど凶悪な四天王であるリッチモンド・クラベルの名前を
もう――――――何もかもがわたくしの胸をときめかせるくらい凛々しく、そして可愛らしく
わたくしはそんなレン様の凛々しくも愛らしい姿を彼の後ろからただ見守るのみで。
その姿を見ているだけで胸がいっぱいになって……いつまでも眺めていたくて。
結局、レン様がリッチモンド・クラベルを倒しきるまでの間、わたくしは彼に加勢するどころか声もかけられずにいたのでした――
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