第13話『四天王その2発見』



「――――――まずい。木の実だけじゃ全然腹がふくれない」 



 ノクティス様がなんやかんやと騒ぐ中、森で木の実を採取しまくった俺。

 それを森の中、イメージで作り上げた家の中でポリポリと食べているのだが……当たり前のように腹は膨れない。


 一応、木の実を取る間に狩った猪なんかを家の前に置いているが……あれを食うのは最終手段だ。

 だって血抜きとか処理の仕方、俺知らないからな。


 異世界召喚モノの主人公が狩った野生生物を焼いて食べたりするのは王道だが、あいつら良くそんなに手際よく調理出来たねとこうなって初めて思った。



「幸い空腹感はイメージで作った物を食べれば誤魔化せるが……栄養にならないと知ったからかいかんせん味気ないよなぁ。いや、美味しいけど。イメージで出した物だし、イメージ通りに美味しい味なんだけども」



 今までに食べた中で特に美味しかった物をイメージして食べているので間違いなく美味い。

 美味いのだが……栄養にもならずイメージした通りにしかならないので味気無さを感じてきてしまっている。



「とりあえず今日はこのまま寝て……起きたら動こう。とりあえずそうだな……。冒険者ギルドすらない田舎っぽい方に歩いていくしかないか。ノクティス様ナビは当てにならないし。今度は王都とかに連れていかれそうだし」


 未だにこの世界について知らない事が多い俺。

 どこに行けば田舎なのか。王都はどこなのか。そもそもこの国の名前はどういうので隣国との関係とかはどうなってるのか。


 そんな事を何も知らないままなので、当然どこに行けば冒険者ギルドすらない村へと辿り着けるのかも分からない。


 誰かに道を聞けばいいじゃんという話かもしれないが、残念ながら俺が知っている街は始まりの街であるグリーンハートと冒険者ギルドの総本山たるラクレイシナのみ。


 そんなイベントフラグがビンビンに立ちそうな街にわざわざ行きたくない。

 よって、道を聞くにしてももっと別の街に入ってからの方が良い。


 一番いいのは昼に会った冒険者達パーティーに道だけ聞くという方法だったのだが……あの時は向こうとあまり関わり合いになりたくないという想いが強すぎて道を聞くという考えすら思い浮かばなかったんだよなぁ。いや、失敗した。




 そうして。

 空腹で腹がぐーぐー鳴る中、俺は意地でも寝ようと家の電気を消して寝ようと――



「「「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん――」」」



 意地でも寝ようと……。



「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」

「「うおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」

 


 寝よ……うと……。



「まっ――置――ていか――――で」


「すま――。でも、こ――パーティーにおけ――だからっ!!」

「す――ねぇサラ。だが、俺は――」

「ごめんなさ――」



 ――ざっざっざっざっざっざ(何人かが立ち去っていく足音)



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――」

「「「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん――」」」




「――――――寝れるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」



 俺は自分のイメージで作り出した家を文字通り消して声のする方向へと走る。

 するとそこには――



「「「うぉぉぉぉぉん?」」」

「あ、あなたは――」



 暗闇の中、ドロドロに溶けている人型の化け物が数体と。

 どこかで見た事があるような気がする綺麗な女の人。

 そして――

 


「――なんだ貴様は?」


 なんだか薄く透けてる黒ローブを纏った魔術師風の男がそこに居た。

 男は豪華な杖を俺に向け、警戒しているようだった。


 ドロドロに溶けている人型の化け物と、それに今にも襲われそうになってる女の人もこちらに注目している。

 えっと……?


「いや、なんだ貴様はと言われましても……俺は通りすがりの一般人です。そう言うあなた方は?」


「私は魔王軍四天王死霊軍団団長。リッチモンド・クラベルだ」



 あー、魔王軍四天王さんですか……。

 なんか薄く透けてるしそこの化け物とか従えてるみたいに見えたしもしかしたらそうなのかもなぁって思ってたけど……予感的中しちゃったかーー。


 そんな風に俺が項垂れていると。


「魔力値測定……ふむ、雑魚か。どうやら一般人というのは嘘ではないようだな。なんと運の悪い奴よ」


 俺なんて警戒する必要すらないと判断したのだろう。

 目の前の顔色も悪く、体が透けてる感じの魔術師四天王は杖を下ろした。



「貴様なんぞのカス魔力しか持ち合わせていない者をかてにしたところで得られるものなど何もないのだが……まぁいい。――――――やれ」


 それが号令だったのだろう。


「「「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん」」」



 魔術師四天王の後ろに控えていた数体の化け物が俺めがけて襲い掛かってきた。



「今なら……ひっ……」


「おっと、動くなよ生贄。貴様は我らにとってのメインディッシュだ。万が一にも逃げ出されては困る」


 どこかで見た気がする水色の髪のおっぱいが大きい女性。

 その女性は怯えたような金色の眼を魔術師四天王と俺に襲い掛かって来た化け物に向けながら、身動きが取れずにいる。


 輝く金眼。

 涙を浮かべたその瞳がとても綺麗に見えて。

 綺麗な女の人だなぁと。

 そして胸がでかい。大きくてついつい目を奪われてしまうなぁと思ったところで――


「あ、思い出した」


 怯えている女性の事を俺が思い出すのと同時に。

 俺は襲いかかってきた化け物達をゾンビみたいなものだろうと踏まえ、イメージした炎で焼き尽くした。


「昼に会った冒険者さんですよね? 確か……サラさん? こんな所でどうしたんですか?」


「「なっ!?」」



 同じように驚いているサラさん&魔術師四天王。

 俺が化け物達を焼き尽くした事がそれほどまでに意外だったらしい。


 こちらの質問に答えて欲しいのだが……まぁいいか。これはこれで好都合だ。


何妙法蓮華経なんみょうほうれんげきょうーー!!」


 そう叫んで俺は。

 神聖な力がこもってそうな、どでかいハンマーをイメージして創り出し、うろたえている魔術師四天王に叩きつけた。



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