第6話『想像こそが我が力』
その右手を掲げ、ぶつぶつと何か詠唱みたいな何かを唱えているお爺ちゃん四天王。
その無防備な姿を見て、俺は飛び出した。
「――――――隙あり」
「「なっ!?」」
『はあっ!?』
この場に居る人たち&ノクティス様が一様に驚愕の声を上げる。
特にお姫様とお爺ちゃん四天王はさぞ驚いたことだろう。
まさかこのタイミングで誰か飛び出してくるなんて思いもしなかっただろうからな。
「魔界の
俺の能力についてはノクティス様から既に教えてもらっている。
想像を創造する力。
即ち、イメージこそが俺の力となる。
日の光に晒されている間は使用できない力という事だったが、幸いにもこの辺りは木の陰になっていて太陽の光があまり届いていない。
その少量の太陽の光を浴びたら俺の力は霧散してしまうのだろうが、逆にそれにさえ気を付けていれば俺はどんな物でも想像するだけで生み出せる。
「我が
想像がそのまま力になるというのなら思い描くものをしっかり頭の中にイメージしなければならない。
ゆえに、適当な詠唱でもなんでもいいから雰囲気づくりは大切だ。
俺は自身の周りに魔法陣が浮かぶ絵をイメージ。
すると思った通りの魔法陣が俺の周りに浮かんだ。
なら――いける!!
「ぐっ。貴様は……まさかゆ――」
「邪王〇殺〇龍波ァーーーーーー!!」
俺は某有名漫画の技名を思いっきり叫んだ。
すると――
(ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン――)
なんか黒い炎の龍みたいのが出た。
これは……我ながらカッコイイのでは!?
そのまま黒い龍は態勢も整っていないお爺ちゃん四天王に迫り。
「ゆ、勇者ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ」
――直撃。
さすがのお爺ちゃん四天王も不意の一撃は避けられなかったのだろう。
俺が思い描いた通りの炎の黒龍にその身を思いっきり焼かれていた。
『いや、あの……アンタ、戦わずに大人しくしてるつもりだったんじゃ……』
どこか引いている様子のノクティス様の声。
あぁ、確かに。
元々は大人しくしといてお爺ちゃん四天王とお姫様が去るまで待つプランだったのだが、体が勝手に動いてしまったからな。
でも、あの状況で大人しくしていられる訳がないだろう。
「いやいや、何を言ってるんですかノクティス様。さすがに目の前で女の子やら街が焼かれそうになってたら見過ごせませんって。これ、日本人の常識的な対応ですよ。ここで見捨てたら俺、今日の事を一生背負って生きていくことになってましたもん。それはそれで俺の平穏が壊れるんでダメです」
『えぇぇぇぇ……』
どこか納得のいっていないような声をあげるノクティス様。
やはり女神様だから俺のような凡人とは感性が違うのだろうな。
「おのれ……おの……れ……おの――――――」
息絶えたのだろう。
お爺ちゃん四天王の叫び声が止んだ。
そして――――――数分の時が過ぎた。
(ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン――)
まだまだ燃えている黒龍さん。
もっとも、俺がまだまだ燃え続けるようにとイメージしているからだろうけど。
「あの……もしかして勇者様……ですか?」
「………………」
「あのぅ……」
『いや呼んでるでしょ!? っていうかいつまで燃やしてんのよ!?』
外野が何か言っているが関係ない。
相手は魔王軍の四天王だ。
一瞬たりとも油断できない。
俺は目の前の炎を睨みつけながら。
「分かってる……分かってるんだぞ俺は。ここで倒したと思って気を緩めたら『ククク、愚かな。我がこの程度で終わる訳がなかろう』とか言って第二第三形態に進化して次のバトルが始まるんだろう? だが、今回は相手が悪かったな。俺は多くのテンプレを理解している男。そんなお約束展開には絶対にさせないっ!!」
「テンプ……あの、何の話をしているのですか?」
『いや本当に何言ってるのアンタ!? そいつならもう死んでるわよ。女神の私の目から見ても完全に消滅してるわよ!!』
そうして俺は火力よもっと強まれとイメージしながら魔王軍の四天王である……えぇっと……魔術師組の隊長の……あれ、えっと、うん…………そんな感じのお爺ちゃん四天王を完全に葬るべく燃やし続け。
『魔術師団長のアブカルダルムよっ!! そこまで念入りに滅ぼすならせめて役職だけはきちんと覚えてあげて!?』
そうして……さらに数分の時が過ぎた。
「――――――――――――よし」
俺は猛り狂う黒龍をイメージするのを止める。
すると、俺のイメージ通りに猛威を振るってくれていた黒龍が消え失せた。
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