しっぺ返し

⦅なんちゅー理由だよ…。せめてもう少しましな好きななり方しろよ…⦆


ボソッと、碧琉は呟いた。


「ん?何か言った?」


「あ?あぁ、別に。何にも?」


「ふーん…あ、じゃあ、ここでね!バイバイ!碧琉」




碧琉は、もうウリを嫌いになれたら…と思った。嫌いになるには、十分な女だ。なのに、碧琉は、どうしても、ウリが好きだった。もう、ひよこの刷り込みの様に、何故か、ウリを嫌いになれないでいた。




―3日後―


「あー…」


「ん?どうした?ウリ」


「うん…今日、生理で…」


「大丈夫か?お前、貧血気味になりがちだろう?」


「う…ん…だい…じょう…ぶ…」


パタッ!


「うお!」


急に、ウリが倒れた。慌てて碧琉がバスケで鍛えられたたくましい両腕で、抱きかかえると、まだ、学校までには距離があったが、意識の無いウリを、早く保健室へ!と思い、必死で走った。




「……ん…」


「あ、目、覚めた?ウリちゃん」


そこに居たのは、学級委員長の氷川ひかわだった。その瞬間、ウリは、(皆さんのご心配通り)自分を保健室に運んでくれたのは、氷川君だと思い込んだ。


「(部活で付き添えないと言う碧琉に)頼まれて、付き添ってたんだ」


「(先生にか…)あ、ありがとう…。氷川君…」


その瞳は―――…、もはや、言うまでもなく、恋する乙女なのであった。


じゃあ、何故、他の生徒が碧琉が運んだことや、今まであった事をウリに言わないのかと言うと、みんな、2人は両想いだと思っていたからだ。碧琉が自分で言っているだろう。と、勝手に思い込んでいるのだ。しかしながら、碧琉は、そんな事、一度もウリに伝えていないし、態度に出す事も無かった。


だからこそ、他の友達が、男女ともに、2人がわざわざそんな報告をしなくても良いと判断し、その結果、ウリに向けられた、碧琉の雄姿をウリは知らないでいた。




そんなある日、とうとう、大事件が、勃発する。


ウリが、初めて、と言う、大事件が―――…。



熱しやすく、火照りやすい、ウリを、止める事は、出来るはずもなく、返事は、もう数秒待たずして、『はい』だった。しかし、ウリは、ハンカチを拾ってくれた田川も、絆創膏をくれた竹下も、『お願い』と言ってくれた久永も、3ポイントシュートの高橋も、漫画の趣味が一緒だと意気投合したと言う日向も、そして、夢に出て来た遠藤も、付き添っててくれた氷川も、どの男子も、おんなじくらい、好きなまま、その延長線を出ないまま、告白してきた、桜井と付き合ってしまうのだ。


最初は、そんな、ウリの恋愛事情を全く知らない桜井は、しばらく、仲良く過ごしていた。しかし、ウリが、ありとあらゆる男子とすれ違う度、振り返ったり、ソワソワしたりするのを見ていて、だんだん、それを不審に思うようになった。


そして、勇気…いや、うっぷんを晴らすように、思い切って、ウリ自身に、その理由を尋ねた。そして、ウリが答えた答えは…、


「私ね、いっぱい好きな人がいるの!みんな、私に優しくしてくれて、格好良くて、趣味が合って、夢に出て来る人もいるの!だから、桜井君の事は勿論好きだし、他の男の子の事も、大好きなんだよ!」


と、悪びれる様子は一切見せず、満面の笑みで桜井に言ってしまった。それが今まで普通だったウリに、この後、どんな修羅場が待っているか、ウリは何も知らないでいた――――…。



そのウリの話に、余りにも頭にきた桜井は、ウリの頬を、思いっきり、ひっぱたいた。


「―――…?」


一体、何が起きたのか、全く、理解できないウリ。そして、次に襲ってきたのは、とんでもない罵倒だった―――…。

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