第15話 物事は目的があれば進む

 思いもよらぬ物見という助っ人に四人は手を挙げて喜んだ。いくら問題はないからといって遊子と楽に付きっきりで勉強を教えるほど嬉色と宴には余裕はない。むしろ教えてほしいと思う時さえあるのだ。放課後会だけとはいえ緩野と物見がついてくれるのは有難いことこの上なかった。

「まず、今回の新入生学力テストの範囲は知ってるよな?」

 放課後、いつもの教室で物見が四人に尋ねると、遊子と楽は首を傾げた。その光景に嬉色はマジかと言わんばかりの目で見つめ、宴は苦笑していた。

「既にプリントを配布しているはずだが。もう殆どの生徒が教師を捕まえて勉強を見てもらっているぞ」

 握りこぶしを作る物見に遊子と楽は乾いた笑みで返した。

「入学してから各科目で数回小テストをやっただろう?」

 頭に手を当てた物見に尋ねられ、遊子と楽は素直に頷いた。流石青春よりも勉強を掲げているだけあり、この高校は入学して間もないとしても中学の復習、授業の復習と称して小テストを定期的に行っていた。だから、まだ一年生でも学年全体の成績の順位がわかるのだ。順位を明確、つまり上位層、中間層、下位層をはっきりさせることで勉強への意欲を上げようという狙いがあるようだが、本当にそうなのか真意は物見にもわからない。

「今回の範囲はその小テストが主だ。それに加えて中学校の復習が含まれる。だから、まだ勝ち目はあるっちゃある。理由はわかるか?」

「中学の勉強は一度習っているものだから、復習がしやすいですよね。自分は何が苦手だったかがわかりますし」

 嬉色が答えると物見は正解だと黒板に《すべきこと》と書いた。

「今までの小テストは勿論のこと、ある分で良い。中学生の頃のテストとかを見返すことから始めるんだ。時間がないからな。そこで間違っていた問題を重点的に復習すること。そしてわかるまで問題を解き直すことだ。小テストの方は小テストの問題を復習するのがいいだろう」

 授業のように黒板を使って説明を始めた物見に対して四人はノートを取り出し、黒板に書かれた《すべきこと》を板書し始めた。

「五月末の新入生テストは比較的どの生徒も点をとるテストだ。この後の中間や期末から点が取れなくなるんだ。だからこそ、このテストをきちんとやることが大切だ。きっちりやること。まぁ、文化祭にでたいっていう目標があるならモチベーションにも困らないはずだ」

 遊子は深く頷いた。楽も頷きはしないものの、真剣な目で物見を見ていた。

「なら、頑張れるな。目的さえあれば物事は進むんだぞ」

 そんな二人を見て物見は笑顔を見せた。

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