第肆ノ章・破滅、ソシテ喜ビ
薄暗くなる
その中で千歳、暁、紅、鶚、伽が登場
場転をする
荘厳なBGMが流れる
全員、舞台の中心を向いて拱手礼をする
千歳は周りを見て、見よう見まねで礼をする(他とは微妙に違う)
閻魔登場
(閻魔にスポットライト)
暁、前に出る
閻魔、目を擦っている
暁「閻魔様、よくぞご無事で」
閻「んもーーーーー!!!おーーそーーいーー!!!」
千歳、閻魔をガン見する
暁「誠に申し訳ありません、閻魔様。その身をお守りすると誓ったにも関わらずお守りできなかった上にお助けまで遅れてしまい、心よりお詫び申し上げます」
閻「ワレが死なないからってさぁ〜…ちょっとくらいおくれてもいいと思ってなぁーい??」
暁「そのようなことは決して…!」
閻「すっごい苦しかったんだからね!!!!乗りこえたんだよ!えらいでしょ!!」
暁「はい、とても偉いです閻魔様!!良く乗り越えてくださいました」
閻「えへ、でしょ〜?ワレえらいでしょ〜!?んーでぇ、ギョウ。そこの女だぁれぇ?」
暁「はっ、その者は現し世から迷い込んだ者です。尋ね人を探すため、閻魔様のお知恵をお借りしたいと」
千「ち、千歳と申します!よろしくお願いいたします!」
(↓言いながら千歳に近寄る)
閻「ふーーん。ワレはぁエンマ!!王サマだよっ!ワレの言ったことは絶対ね!!逆らったらぁ、アハっ、こーしちゃうからね!!」
閻魔、持ってる怖い人形を見せつける
閻「そうだ!!ギョウ、ワレに毒盛ったのってさぁ/
/暁「申し訳ありませんが、未だ判明しておりません。事件の夜に閻魔様のお食事を運んだ者が怪しいと見て現在調査中にございます」
閻「ちーがーう!!嘘つかないでよぉ!」
暁「う、嘘、とは」
閻「ご飯運んできたのギョウじゃん!!!」
暁「いえっ!わたくしは/
/閻「なんでよぉ!!!なんでギョウがワレに毒なんてもるのぉ?ワレなんか悪いことしたぁ?ねぇワレきらわれちゃったぁ?なんでよぉ!!!」
暁「閻魔様!!落ち着いてください、違うのです!誤解なのですよ!」
閻「ごかいぃ…?」
暁「わたくしはあの夜、彼女と共におりました故お食事を運ぶのは不可能にございます」
千「そうです!暁さんはあの日の夜、私と一緒にいました!」
閻「でもさぁ〜ギョウだったよ?服もぉ、髪型も?……あ、それとも、ワレがうそ言ってるとか思ってる?思ってないよねぇ!?」
(↑言いながら暁へ近寄る)
閻「ねぇ!!なんか言ってよお!!!ギョウ!!!」
閻魔、両手で暁を鷲掴み、前後に揺さぶる
閻「暁!!なんで何も言わないの!?ねぇーえ!!」
千「やめてください!!」
千歳、閻魔の腕を掴んで引き離そうとする
閻「離してぇ!!」
千歳、強く振り解かれて後ろに倒れる
暁「千歳ちゃん…!」
伽「客人殿…!」
伽、千歳の元へ
閻「なんでみんな思いどーりになんないのぉ!!!なんでギョウが毒なんてもるのぉぉぉぉぉおお(号泣)」
暁「閻魔様、本当にわたくしではないのです!信じてくださいませ!」
閻「見たもん!!ワレほんとに見たもん!!!!この目で見たもん!!嘘じゃないもん!!」
暁「必ず!必ずや真犯人を突き止めて見せます!!ですのでどうか!!」
閻「やだやだやだぁあぁぁ!!!」
閻魔、両手で人形の足を片足ずつもち、暁に叩きつけようとする
鶚、詠は顔を背ける
夕「待って!!」
夕、前に出る
★紅「おい夕!」
★詠「夕!?」
夕「王様に、毒盛ったの、暁さんじゃない」
閻「は?何言ってんの、ギョウだよ!!ワレ見たもん!!」
夕「違う、別にいる。だから暁さん、離してください」
閻「ちがうのっ!?じゃあ誰!!!」
夕「夕が、やりました。全部、夕のせい」
紅「夕!?何言ってんだ!」
詠「そうですぜ!なんで!」
閻魔、夕の元へ
無言で夕の頬を平手打ちする
★千「夕さん…!」
★暁「夕ちゃん!」
夕、倒れる
紅、詠、夕の元へ走る
閻「夕がやったのか、なんで夕がやる」
夕「ごめん、なさい」
詠「夕…!」
閻「なぜ我に尽くすはずのお前が…。研究者の分際で…!」
紅「おい、あんたいい加減に/
夕「夢、見ちゃったから。夕が。あの人、好きになっちゃったから」
詠「夕、自分を責めないでくだせぇ!」
紅「そうさ、何も悪いことじゃない/
/閻「伽、こいつを連れてけ」
伽「え…」
閻「早く」
伽が夕を掴もうとした瞬間、紅が弾く
閻「紅、何をする。邪魔するな」
紅「わっちだよ」
夕「紅…」
紅「変装して、忍び込んで。あんたに毒を盛ったのは、わっちさ」
閻「は?」
詠「紅!?そんな、あっしだって/
/紅「なぁ王様、知ってるかい?この時期は朝鮮朝顔が美しく咲くのさ。けど、その美しさには毒があるんだよ」
閻「毒だと?まさか、我に盛った毒とは」
紅「あんたは自分の愛する花ってもんから毒を飲んだんだ。本望だろう?」
閻「そんなこと、花からだろうがなんだろうが、毒なのは変わらん。そもそも、なぜ紅がそのようなことをする」
紅「なぜって…自由のため以外なにもない」
閻「自由?」
紅「王様。あんたのせいで、わっちらは今までずっと外の世界を知らなかった。そうだろう?」
閻「それは、紅の先祖が女を抱えて逃げたからだ。ここの人間は我のために生きる。それが決まりだ。だから外出も禁じたんだろう」
紅「先祖様が犯した罪で、どうしてわっちらまで縛られなきゃいけないんだ。あんたは自己中心すぎる」
閻「ワレはこの町の王だ!!何が悪い!!」
紅「あんたみてぇなやつが王なんて、誰も望んじゃいねぇんだよ!!なぁあんたも同じ気持ちだろ?暁」
暁「え…?」
紅「自分の意見を抑え込むのは疲れるだろうなぁ?王様のいうことなんでも聞いて、王様のためにいい子を演じて」
暁「べ、紅」
紅「わっちはなぁ、あんたみてぇなやつを見てるとイライラすんだよ。誓いたくもない忠誠、演じてるだけの優等生…。本当の自分を出してみろよ、暁」
暁「は…はぁ…?王様相手に本当の自分を出す?そんなの無理よ!働いていくには、自分の思うがままでいちゃいけないの!!相手に都合のいい自分でいなきゃ、ここでは働けないのよ!!」
★閻「ギョウ…?」
★紅「それで自分を潰してんのかい?馬鹿みてぇだな。……やっぱり、わっちはあんたが嫌いだ。あんたに変装したのは間違ってなかったな」
暁「どういう、こと」
紅「月の狂う夜、あんたは迷い込む客人の元へ行く。それを知ったから、わっちはあんたの格好をして、あんたのいない城に入った。…失脚させてやろうと思ったのさ。あんたが嫌いだから」
暁「ふざけないでよ、そんな理由だけで…!!私は…ここにしか居場所がないの!!この町に私の帰る場所なんてない!!城仕えとしての居場所を失ったら、私には何も残らないのよ!!だから、何をしてでもこの地位を守ってないと…私は/
/閻「裏切り者」
全員黙る
沈黙が流れる
閻「ギョウがワレと一緒にいたのは、ワレが好きだったからなんだろう…?」
暁「え、閻魔様…」
閻「ギョウ、ワレのこと好きって言ったよな」
暁、黙る
閻「もういい。もういいよ。ギョウは…解雇ね」
暁「え…」
閻「おいお前、ベニを連れてけ」
閻魔、伽に指示
伽「ですが…!」
閻「早くしろ」
伽、渋々と紅を連れていく
詠「おい紅!!なんで一人で罪被ってんだよ!!あっしだって共犯なんだ、連れてくならあっしも!!」
夕「詠…!」
紅「ったく…うるせぇぞ、詠。てめぇまでついてきたら、夕はどうなんだよ。一番年上なんだから、しっかりしろよ、お兄ちゃん」
閻「何をしている、早く地下牢にぶち込め」
伽、紅を連れてはける
閻「ギョウ、そのような想いでワレに仕えてるとは思わなかったよ。……面も制服も返してもらうからな」
閻魔もそれに続いてはける
詠「おい!!……くそっ!!!!」
夕「詠…。ごめん、なさい」
鶚「夕ちゃん…」
詠「夕…いや、あっしの方こそ…すまねぇ」
夕「え」
詠「夕には結局、辛い思いをさせただけになっちまった。恋を諦める上に、紅まで…。……紅だって、自分だけが処刑されるんでぃ。あっしを恨むでしょうねぇ…」
鶚「恨むなんてことないと思うわ」
詠「…どうして」
鶚「紅さんは自分から貴方を庇ったじゃないの。むしろ、刑から逃れて欲しいと思ってるんじゃない」
詠「なんであっしを庇ったんすかね。あっしのこと散々嫌ってやしたのに」
鶚「誰よりも信頼していたからでしょうね。実際、紅さんは詠さんの前だと人が変わるじゃない。どんな一面も向けることができる相手だったんでしょ」
詠「(間)。(息を吐き出す)あっし、諦めねぇです。紅のこと」
夕「夕も、諦めたくない。紅、帰ってこない、もう、会えない…。そんなの、やだ」
詠、頷く
鶚「まだ交渉の余地はあるはずよ。行きましょ」
★詠「えぇ!」
★夕「うん」
鶚、詠、夕、はける
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