第参ノ章・愛ハ覚悟ニ

暁、千歳登場

別の目覚め方を探して舞台上を歩き周る

断られたり、乱暴に追い返されたりする


千歳、暁、力尽きて立ち止まる


その一部始終を見ている夕


千「何も、手がかりが、ない…」


暁「そうだね…」


千「みなさん乱暴すぎませんか!?断るにしてももっと優しくていいと思うんですけど…」


暁「しょうがないよ。こうなるのは想定内だし」


千「あの、付き合ってくれてありがとうございます」


暁「なんだか、ほっとけないんだよ。体が勝手に動いちゃうというか」


千「あたしも、なんだか/


/夕「ねぇ」


千「夕さん?」


暁「貴方、外に出ちゃっていいの?」


夕、頷く


夕「これ」

(結晶を三つ渡す)


千「これは…」


暁「それは、結晶…!」


千「え、夕さん、なんで」


夕「夕、わかる。大切な人、思う気持ち。だから、結晶持ってって」


千「ありがとうございます!」


夕「夕、自由、欲しかった。でも、あってもなくても、変わらなかった。結局」


千「どういうこと、ですか?」


夕「夕、好きな人いた。だから会いたくて、自由欲しかった。でも、その人、家族いた。女の人と、小さな子供」


千「好きな人と一緒にいられないのって、辛いですよね」


夕「千歳…」


千「その気持ち、わかります」


千歳、夕の手を握る


千「あたしの場合は、好きでもない人との結婚だったけど…」


夕「千歳、結婚してるの?」


千「いえ!破断になってなんとか大丈夫だったんです」


夕「破談?」


千「はい、姉様が失踪して家の名が落ちて、結局向こうから断られて…ってあれ…えっと…」


暁「千歳ちゃん?どうしたの」(異変を感じてちょっと焦る)


千「あれ…え…破談になったのは、姉様がいなくなったからで、でも、え…いや、違う、何か、何かもっと…」


暁「記憶が消え始めてる。急ごう」


夕「二人、このこと知らない。紅も詠も、結晶、渡す気ない。だから、内緒」


暁「分かった、ありがとう。それじゃあ早く本丸へ奉納に…」


紅「夕!!!」


紅、詠登場


夕「行って!」


千歳、暁、頷いて走ってはける


詠「夕、何してんですかい」


紅「なんでお前が…!!」


夕「ごめんなさいっ、でも、夕、もういい、もう大丈夫!」


紅「何言ってんだ、わっちらは/


/夕「夕のっ!夕の恋、応援しようとしてくれたんだよね」


紅、詠、動きを止める


夕「でも、もういい、もう大丈夫」


詠「なんで…そんなこと言うんでぃ」


夕「あの人、隣、女の人いた。子供も、いた。あの笑顔、壊せない」


紅「だからいいって?だから諦めるってのかい」


夕「だって、紅たちは、夕のせいで…。でも、大切な人には笑ってほしい。それは、夕も一緒」


紅「もっと!もっと何かあるかもしれないじゃないか、自由さえあれば/


/詠「紅」


詠、首を横に振る


詠「夕を思う気持ちはわかりまっせ。それでも、本人がこう言ってるんすから」


紅「は…?何言ってんだてめぇ」


紅、詠に掴みかかる


紅「ふざけんなよ!詠だって俺と同じ意見だったじゃねぇか!」


詠「同じだったっすよ!だから紅と一緒にいろいろ考えたんでぃ!それでも、本当に夕のことを考えるなら、今は意見を尊重すべきじゃねぇんですかい」


紅「…んだよ、今更年上ぶりやがって…!」


詠「…で、夕。もう一度聞きまっせ。…本当にいいんでぇ?」


夕「うん」


詠「後悔、しないですかい」


夕「うん」


紅「なんでだよ…。王様さえいなければ、みんな幸せだろ…」


夕「二人とも…。ごめんなさい」


二人、夕を見る


夕「紅たち、頑張ってくれた。夕なんかのために」


紅「夕なんかってなんだい。わっちらの可愛い末っ子をそんな風に言うんじゃないよ」


詠「そうでっせ。そんなこと言わないでくだせぇ」


夕「……」


紅、夕に歩み寄り、抱き寄せる


紅「大丈夫さ。わっちらの味方はいくらでもいるんだから」


詠「紅の言う通りでっせ」


詠、横に周り、二人を抱き寄せる


詠「なんせ、あっしがついてるんすからね!!」


紅、詠の手を払い、そっぽを向く


紅「詠よりわっちのが頼れる」


詠「え!?そんなことないっすよ!!」


夕、笑う


伽(声のみ)「閻魔様の〜おめ〜ざめ〜!!!至急本丸御殿へ集まられたし〜〜!!」


詠「目覚めちまいましたねぃ」


夕「うん…」


紅「行こうか。罰を受ける覚悟はできてるからね」


夕「罰…?」


紅「王様、きっと一番に犯人探しを始めるだろうからねぇ」


詠「特定されるのも時間の問題でしょうねぃ」


夕「そしたら、ベニたちは/


/詠「いいですかい?夕は普段通りにしてるんでっせ」


夕「でも」


紅「大丈夫。…大丈夫だよ」


夕「……。…うん、わかった」



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