第壱ノ章・明カリノ灯ル町
リンリン(鈴の音)と共に、暁登場
暁「ねぇ」
千歳、顔を上げる
千「え…」
千歳、立ち上がる
千「どなた、ですか」
暁「貴方の願い事は?」
千「え?」
暁「外の世界から来た子だよね?貴方も願いがあってここに来たんでしょ?」
千「そ、それよりも答えてください。どなたですか」
暁「…私はぎょう。暁と書いてぎょうと読む。貴方は?」
千「あたしは
暁「私はこの町で王の側近として働いてる者」
千「王様?日本国には天皇様しかいらっしゃらないわ」
暁「周りを見てみて。ここは貴方のいた町ではないはず」
千「え…」
千歳、周りを見渡す
千「え、ここ、どこ…」
暁「ここは現し世とはかけ離れた街、
千「ど、どん…?現し世とかけ離れてるって何ですか?ここは日本国じゃないの?」
暁「ここは冥界…。貴方のいた世界と、黄泉の国とを繋ぐ町。…貴方、千歳ちゃんだっけ?」
千歳、警戒しながら頷く
暁「千歳ちゃん、貴方の願いは何?」
千「願い?」
暁「今日の空、なんか変な感じでしょ?月が大きくて、雲の色が不気味で…。そんな夜は、神隠しに逢いやすくなるんだよ。強い願いを持つ子はね。貴方も願いがあるんでしょ?ずっと願ってることが」
千「願い…。……姉様」
暁「姉?」
千「五年前、突然いなくなっちゃったんです。探しても探しても見つからなくて」
暁「なるほど…人捜しってわけか」
千「はい」
暁「人探しは難しいね…他の願いだったら王様がなんとかしてくれるんだけど…」
千「難しいんですか?」
暁「そう。私や王様に探せるのは、死んで黄泉の国にいる人の中か、千歳ちゃんみたいに神隠しに逢った人の中からだけなんだ」
千「そうですか…」
暁「でも可能性がないわけじゃない。まずは王様に相談してみよう」
千「ありがとうございます」
暁「町に長居しすぎると記憶を失くしてしまうから、お城まで急いだほうがいい」
千「待って、記憶を失うって…じゃあもしここに姉様がいたらっ」
暁「まだ分からないでしょ。それに千歳ちゃんの記憶も危ないんだよ。さ、行こう」
千「……貴方は、この町の人なんですか?それとも…」
暁「分からない。私にはもうなんの記憶もないから。何かあれば思い出せたりするのかもしれないけど」
伽、走って登場
伽「暁!」
暁「伽!どうしたの?」
伽「王様が…閻魔様が、倒れた」
千「閻魔?」
暁「閻魔様が!?一体どう言うこと?」
伽「先ほど召し上がられた夕食に、毒が入っていたみたいで…」
暁「毒?毒味はしたんでしょう?」
伽「うん、確かにしたみたいだから閻魔様へ運んだ人が怪しいと思うんだけど…他の側近や召使いに聞いても、誰が運んだのか分からない」
暁「分からない?」
伽「そう、だから今、城中の人が捜査に乗り出してる。民衆方が好き勝手しなければ良いんだけど」
千「待ってください!あの、閻魔様って」
暁「…閻魔大王、この町を治めるお方だよ」
千「え、閻魔様が王様なんですか!?」
伽「暁、その方は」
暁「外からの客人だよ。閻魔様に用があったんだけど…」
千「ち、千歳と申します」
千歳、お辞儀
伽も返す
伽「自分は、伽といいます。暁の同僚で、探索・諜報活動が仕事です」
千「伽さんもお面つけてるんですね?」
伽「あぁ、これは着ける決まりなんです。主君に顔を晒すのは無礼だ、と閻魔様が」
千「そ、そんな決まりが…」
暁「城の者は全員着けてるよ」
伽「制服みたいなものですかね」
千「そうだったんですね…」
民衆たち(モブ)登場
騒いでる
「ばんざーい!!ばんざーい!!」
「俺らは自由だー!!」
「ざまぁみろ暴君め!!」
伽、見送ってから↓
伽「王様に用時とはこれまた状況の悪い時に来てしまいましたね」
千「一応聞くんですけど、王様にお話を聞くのって…」
伽「残念ながら、今は」
千「ですよね…。…あの、毒って簡単に目覚められるものなんですか?死んじゃったりとか…」
暁「大丈夫、眠っていらっしゃるだけだよ」
伽「今は意識不明なだけです。閻魔様は不老不死なので」
千「不老不死なんて…そんな人、実際にいるんですね…」
伽「まぁ、そうですね…」
千「でも、死なないってことは…確実に目覚めさせられるってことですよね?」
暁「そうだね」
千「じゃあ、早く王様のとこ行きましょうよ!」
暁、伽「え?」
千「目覚めれば、姉様の居場所教えてくれるかもしれないですし!」
千歳、はけはじめる
暁「ちょっと千歳ちゃん、どこ行くの!?」
千「王様のとこに行きます!!」
暁「王様のところって!?そっちじゃないよ!」
千歳、最初反対方向に行く
走ってはける
暁「ごめんね伽、引き止めちゃって」
伽「いや、大丈夫。暁は客人を追いかけてあげて。自分は任務に戻る」
暁「分かった。ありがとう」
暁、千歳がはけた方にはける
伽はその反対にはける
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