黎明パラドックスー彼方ノ鈴音ー

緋川ミカゲ

始マリノ章・ハイカラプロムナード


舞台は1919年(大正8年)帝都、大通りでの買い物中

みんなで声出してザワザワしてる感じにする


千歳と香与登場


千歳は雑誌を読みながら歩いている


香「雑誌、買えてよかったですわね。でも/


/千「ちょっと待って、ここだけ読ませて!」


香代、待つ


香「明日、花火大会ですわね」


千歳、雑誌を読み続ける


香「今年は、一緒に行ってみません?」


千「うーん…」


千歳、また雑誌を読み始める


香与、雑誌を覗く


香「あら、私このお洋服持っておりますわ」


千「え、このドレス持ってるの!?」


香「えぇ、舞踏会や社交会に参加するときに着ますわね」


千「じゃあ香与ちゃんお化粧とかもするの?」


香「もちろんですわ。見てちょうだい、先ほどお洋服に合いそうな物が売っていましたの!」


千「え、何何?」


香与、小さな缶を二つ取り出す


千「これって…多色白粉!?」


香「えぇ、前々から欲しいと思っていたのだけど、なかなか売っていなくて」


千「それ何色なの?種類たくさんあったよね」


香「薔薇色と紫色ですわ。お肌の血色が良く見えるらしいの」


千「すごいな〜!あたしも欲しい!」


香「それなら戻って買いません?お勧め教えて差し上げますわ」


千「無理無理!あたしには買えないよ、高いし!」


香「そうなんですの?」


千「うん、さすが上流華族の令嬢さんって感じ」


香「何を言ってらっしゃるの、千歳ちゃんだって華族じゃない」


千「いやいや、うちなんて華族でも下級だし。香与ちゃんのお父様はお医者様なんだよね。ほんとすごいよ」


香「千歳ちゃんのお父様だってご立派な軍人様じゃない。位だってお持ちなのでしょう?」


千「それでもやっぱりお医者様には敵わないよ」


香「…上流なんて言われましても、良いことなんてあまりありませんわ」


千「でも、欲しいものは買ってもらえるんでしょ?化粧品だってお着物だって本だってさ」


香「まぁ、そうですわね」


千「ねぇねえ、この前発売された蜜柑って持ってる?」


香「蜜柑?果物のですか?」


千「もう違うよっ!ほら、芥川さんの小説の!」


香「あぁ!確か家にあった気がしますわ!」


千「今度貸して欲しいんだけど、良いかな?」


香「もちろん良いですわよ。千歳ちゃん、本読みますのね」


千「うん!香与ちゃんはもう読んだの?」


香「いえ、私読書は別に…」


千「そうなの?読まないのに買ったんだね」


香「お母様が読みたいとおっしゃっていたので」


千「そうだったんだね。香与ちゃんも読んだら良いのに。面白いよ?」


香「うふふ、機会があれば読んでみようかしら」


千「学校の授業で小説が読めたら良いのにね」


香「授業で読書…考えたこともありませんでしたわ」


千「まぁそうだよね。女子は読書よりお裁縫とか家事とかだもん。あたし、結婚なんてするか分かんないのに…」


香「橘家は名家ですもの。婿入りしたい殿方はたくさんいらっしゃいますわよ」


千「でももうお見合い話とか全然来ないよ」


香「やっぱり、五年前のことがきっかけで?」


千「うん。姉様が失踪してから、うちについてのよくない噂が耐えないし…」


香「凛様……。もう五年、経つのですわね」


千「うん。姉様ね、出かけてくるって言って、それから帰って来なかったの。一緒に花火大会に行くって約束もしてたのに…」


香「千歳ちゃん、楽しみにしてましたものね」


千「毎年この時期になると思い出しちゃってさ。姉様の背中を探しちゃうの。いないって分かってるのに」


香「では、明日はまだやめておきましょうか」


↑このセリフ中に暁が登場

千歳は目で追うが、香代には暁が見えてない


香「千歳ちゃん?どうしましたの?」


千「あ、いやなんでもない、ごめん」


香「……私はね、きっとどこか他の場所で幸せになさっていると思うの」


千「え?」


香「凛様、駆け落ちなされたって噂があるじゃない?」


千「うん」


香「誰だって、自分の愛した方と一緒にいたかったんじゃないかしら」


舞台上が暗くなる


香「なんだか今日は空が変な感じですわね。雲行きも怪しいですし、早めに帰りましょう」


千「姉様…本当に想い人がいたのかな、本当に駆け落ちなのかな。攫われたとか、事件に巻き込まれちゃったとかじゃ」


香「大丈夫ですわよ。きっと、どこか別の場所で幸せに暮らされていますわ」


香与、↓このセリフの途中にはける

千「でも、姉様は本当に強くってかっこよくて、明るい人なの。そんな人が突然いなくなっちゃうなんて、絶対に何かあったんだと思って。だからあたし、姉様を見つけて、何がったのか知りたくて。ねぇ、香与ちゃん…って、あれ?」


千歳、辺りを見回す


千「あれ、え、香与ちゃん?香与ちゃん!?…え、嘘、さっきまで隣にいたのに…どう、しよう…」


千歳、その場にしゃがみこむ


千「姉様に香与ちゃんまで…もうやだ…」


セリフを言い終わったら徐々に照明が変わっていく





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