「三本ノック」

「さて、練習をしよう――三本ノックだ」

「いや、もっとやろうよ。千本とまでは言わないけど、三本は少な過ぎるでしょ」


「いいんだよ、限られた球数で最大のパフォーマンスをする……まさか毎試合、千本のチャンスがやってくるとでも思っているのか? チャンスはいつくるか分からない、急にやってくることもある。こっちが身構えていなくともお構いなしに、不調であっても関係なくだ。だから限られた三本を、確実に最高の結果に繋げる練習をするぞ――どうせ千本ノックをしたところで、九百球くらいは意味がないんだ……、後々のことを考えて手を抜くだろうからな。だから、三本でいい。この三本に、命をかける気概でこい!!」


 そして、当たり前だけどあっという間に三本が終わった。

 結果は……、良しとは言えなかった。

 というか悪い……だってウォーミングアップさえまだしていなかったのに……。


「――よし、今日は終わりだ!」


「もうちょっとやろう! これじゃあ練習にならないって!」


「三本で結果を残さなかったお前が悪い……明日の三本で結果を残せるように、今から練習をしておくんだな」


 メンタルを鍛えるための練習、なのかもしれないけど……。

 この三本で結果を残すため、自主的な千本ノックをしていたら意味がない気もするが……。


 本番か、三本ノックか。

 両方で結果を出せるようになれば、選手としては強いのだろうけど。



 ―― 完 ――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る