第2話 ゲームじゃない

一気に飲み込んだ

体が震えている

汗がすごい

足もガタガタしているのが分かった


しばらく待っても何もない

「はずれ」だった

アイツは青酸カリのことを「当たり」という

死にたいんだろうか

馬鹿だから分かんねえや

…風呂に入ろう



しばらくしてアイツは退院した

早速アイツは電話してきた

「退院できたよ」

「おう…」

「おめでとうは?」

「…おめでとう」

「うん」

「死にたいんじゃなかったのか」

「…病院にいても死ねないでしょ」

「…ゲームもうしないよな」

「…」

電話が切れた

瓶はメーターボックスに返してある

付箋に

「もう、やめろよ!」

と書いて

置いておいた

意味があるのか分からない

一応、書いてみた



今日の数学の授業、難かったなとか思いながら帰ってきた

瓶の様子を見てみた

薬の数をかぞえる

三つ減っていた

それから

部活で怒られた日も

怪我した日も

また次の日も

一日過ぎるごとに三つずつ減っていた

カスミのお母さんに薬の場所を教えてと言われたが

なんとなく…言わなかった

なんだか言ってしまうとカスミを裏切った様な気がするから




瓶に

「いいかげんにしろ!」

と書いた紙を入れておいた

入れたその日も減っていた


次の日

瓶の様子を見ると紙がない

てことは目にしたはず、俺のメッセージ

その日も減っていた

着々と薬が減っていっている

あと数日でなくなる



瓶に

「明日の夜8時、九階の非常階段の踊り場で花火見よーぜ!」

と書いた紙を入れておいた

まず来るか不安だが



来た

「よお」

「ここだと花火見にくいんじゃない?」

「もうちょっとでメインの花火上がるからそれがよく見える」

「そうなんだ」


「薬、なんで続けてんだよ」

「なんとなく」

「なんとなくで服むな!」

「ねぇ見て、あと三つだけ、明日で終わり」

「死なねーよそんなの服んだって」

「だろうね」クスッと笑う

「…全部取り替えたから」

「ビタミンC?最近ニキビが減って…」

当たり

「知ってたのか」

「いや、いま初めて」

じゃあなんで…

と言いかけた俺を遮り

「ヒロのこと信じてみようと思って」

「別の薬に変えてるよね、って」

なんなんだよそれ

…なんか悔しい

「まだゲームやってんのかよ…!」

カスミは首を横に振った

目が潤んでいる

「なんだろう、これはゲームじゃない、上手くいえないけど誰かを信じるのってゲームじゃないと思う」

変なヤツだ

でも少し言ってることがわかる気がする

ひゅるひゅると花火が上がった

カスミはありがとうと言った

カスミの言葉をわざと無視した

カスミは薬を飲んだ

カスミが

カスミの素敵な笑顔が

大きな花火に照らされた

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ゲーム @tensuke0628

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